20091031

それは薔薇の名前に似て


香は淑やかに、心に届くは声なき詩のように。唇を近づけると、鼻腔をフワリとくすぐられる匂いに微笑みながら、僕はそっとキスをした。

その形は金のインゴットですが、風味と食感は、お金には換えられない美味しさなのです。
リモールのフィナンシェは、しっとりと広がっていくカルピスバターの香りが素晴らしく、紅茶、珈琲、抹茶に良く合います。冬ならば、ショコラ・ショーも素敵ですね。
町家でゆっくりとした時を過ごせるリモール。その雰囲気も、そのお菓子も、柔らかな薔薇をイメージしてしまいます。

優しさは、十重に二十重に包み込む、可憐な花のように美しく。


京都
Limour リモール
http://www.limour.com/

20091030


香りの中で瞳を閉じると、夜の香気を満たした厚い雲が、 ゆっくりと、 ゆっくりと、 闇の上を滑らかに流れてくる。 ふれるだけで溶けてしまいそうな淡雪のような雲は、 夜の帳とともに地上へと舞い降りる。
どうか健やかなる夢の中で眠れと、 子羊達が闇を恐れることが無いようにと、 黒衣の女神は、 静かな歌声で僕らをそっと抱きしめる。
月の雫は、ほのかに甘く。

銀のフォークにトキメキを。
銀のナイフに恋文を。
銀のスプーンにくちづけを。
今夜も夢を、見させておくれ。


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/

20091029

甘い巡礼者


く、甘く、夢見るように甘く。幸せを探すなら、甘いものを求めると良いよ。ねぇ、君が考える幸せって、どんな味?
…ほら、幸せを想像すると、心が甘くなったでしょう?

A cup of cake.
Sweet on sweets !

ぼくらは幸せが好きなんだ。そして甘いものも。
だから歩いて探すんだ。
甘く甘く、もっと甘く。甘い心を探すんだ。


京都
cup & cake Sugary カップ&ケーキ シュガリー
http://www.sugary.jp/

Rosetta stone


石を愛でる。庭に佇む石との対話を通し、自己の内なる世界を観る。ある人は石庭に須弥山を感じ、西方の極楽を夢見る。またある者は蓬萊山を、ある者は星々を、ある者は四神をと、それぞれの想いで幽界に遊ぶ。
ただ1つの石。そこから見る世界。
あなたは此処に、何を見て、何を想うのだろうか?
答えは無い。
でも、声は聞こえる。
道は無い。
でも、歩いて行ける。
刻まれた文字を読むのは、あなたの心なのです。


京都
柳苑 りゅうえん
http://www.kyogashi-ryuen.jp/

20091028

徒然と日々を


掌の摩尼宝珠。または、暮れ行く秋の、月より滴り落ちた雫に似て、艶やかに熟れた季節の宝石。無花果のタルト。
無花果らしく、晩夏を感じるように、染まりゆく秋を感じるように、そっと掌で包み込むようなタルトレットです。
出来るだけシンプルにと心掛ける、一善や。その素直な想いを、ゆっくりと味わいながら、季節の変化を楽しみましょう。


京都
一善や いちぜんや
http://www.ichizenya.jp/

20091027

寄り添う花のように


む季節の中で、僕は何を見つけるのだろうか。巡る季節の中で、君は何を想うのだろうか。すぎゆきし時と風の中で、私達には何が出来るのだろうか。
幾つもの小さな詩や物語を秘めて、徒然と、ただ日々は流れ。

凛として。心の奥に秘めたる想いは皆、花のように美しく。

OKUパフェ


京都
OKU おく
http://www.oku-style.com/

20091026

あなたのそばに


っこりと、ゆっくりと。蕎麦を味わうのに早さはいらず、むしろのんびりと楽しみましょうよ。
蕎麦の前にお酒を飲んだり、季節の一品を味わってみたり。そして食後には、こんな甘味はいかがでしょうか?
そば切りとは異なる、そばがきの食感と風味。そこに京都らしい小豆と、蕎麦の実を散らして。
こころ穏やかにして、時の風情を味わう。そんな食事を楽しみたいと思います。


京都
おがわ

20091025

拈華微笑のウテナ


手のひらから伝わるやさしさと、指先に込められた想い。ころんとした可愛いおはぎをいただきながら、壁にかけられた書画を眺めたり、生けられた季節の花を愛でながら、ほっと一息つける場所。
ほっこりと。少し立ち止まってみませんか?

 白露に香る萩の花
  仰ぎて見れば名月の
   清けし月影ゆれる薄野
    宵い待つほどに暮れる秋
  双子の山に遠く香具山を想えば
       こい深まるほどに花ともえ


京都
おはぎ巴屋 ともえや

20091024

春待草


に祈る。感謝する。
掌を合わせると、自然に感謝の二文字が浮かぶ、仙太郎の大ぼた餅。紫蘇を混ぜ込んだ大納言小豆と餅米に、薄い氷餅を散りばめて、丁寧に、丁寧に。職人の掌で丸められたぼた餅は、心に春が訪れたような、優しい気持ちになる味です。
美味しいは、いただきますごちそうさまの間にあると思うのです。
良き人で、在る為に。

 茜さす 紫の山に笑う花
  春待ちどおしやと ゆれる薄氷


京都
仙太郎 せんたろう
http://www.sentaro.co.jp/

20091023

窓辺に咲く花

菊に降る淡雪は、華やぐ羽の音の。幻想の空に天使の気配を感じ、小さな祈りを捧げる。
福音を。この小さき花に、頬笑みを。

その、うつろう夢の香を纏いし佇まいから、初霜に輝く白菊の様でもあり、月影にゆれる星の様でもある。
私が、舞い降りた天使の羽を感じたのは、やわらかな羽二重の口どけに。
儚く消えるも、忘れられぬ余韻のまどろみに、見えぬ天使と君の幻を重ねた。


京都
聚洸 じゅこう

20091022

1杯のワルツ

窓辺から、過ぎゆく季節を眺め、舞う風を追いかける。移り変わる時を、ただぼんやりと想う。浮かぶ言葉をノートに書き留めもせず、穏やかに、窓の外を眺めて過す。
見知らぬ鳥の声を聞き、空の青さに驚いて、甘い香りに人恋しくなった時、神仙に遊んでいた魂は、また此処へと帰り着く。

UENOYAMAのセンスの面白さを、言葉で表すのは難しい。ただ、捕らえ所の無い空気感と、くるくると回るリズムを見つけて、ワルツの様だと感じた。
苦いけど甘く、鮮やかなれど儚く。溶けていく風景は、ただただ優しく穏やかであった。

抹茶のパフェ


京都
UENOYAMA ウエノヤマ
http://www.cafe-restaurant-uenoyama.com/

春風のスフィア

園の思い出。天使の頬笑みと息吹は、おだやかな春の陽光とそよ風。笑うように輝きながら、爽やかなるトキメキが、僕の心で花咲いた。
…未来の追憶。
恋の果実の煌めきに、背中の翼を取り戻す。

御所西のカフェ、UENOYAMAの春のヴェリーヌ。
ミルキーで爽やかな杏仁豆腐の上に、フレッシュな苺(春が過ぎ、葡萄がプラスされました)と、白ワインのジュレ、そして甘いコアントロー。杏仁豆腐の定義に迷いつつも、その美味しさの虜になりました。


京都
UENOYAMA ウエノヤマ
http://www.cafe-restaurant-uenoyama.com/

20091021

今夜も甘い夢を


に聞こえるデカダンス。太陽をあざ笑うかのように繰り広げられる、不死者の饗宴。
漆黒の夜に捧げられるのは、ワインとショコラ。血と永遠。魂を染めていく誘惑は、甘く囁いて。
Sweet Revenge
何もいらない。ただ、愛だけが欲しい。


京都
MELANGE De SHUHARI メランジュ・ドゥ・シュハリ
http://www.shuhari-de-eat.com/

20091020

祈りの歌


茜さす窓辺にて、すぐに訪れる黄昏を想い、レースのカーテンを揺らす風と落日に、静かなる歌声を聴く。
今日に祈りを。明日に願いを。

ヴォーリズ建築事務所による、蔦が絡まる白亜の洋館。瀟洒な佇まいなれど、温かく迎え入れてくれる雰囲気。おだやかな時間を過ごすのに最適な空間には、静かに流れる音楽と、笑顔こぼれる美味しい食事。素敵な会話と想い出を、こちらで紡いでください。
フロールは水曜と木曜のみの限定販売ですが、小麦の香りが素晴らしいスコーン等、その他のオリジナルメニューも是非どうぞ。


京都
GOSPEL ゴスペル

20091019

星に願いを


星の王子さまを憶えていますか? 大切なものは目に見えないという、彼の言葉をご存知ですか?

フランボワーズのコンフィチュールを秘めた、フロマージュブランの星。シンプルであるが故に、人それぞれの、様々な感想を持たれる事でしょう。
この星に何を見るか、この星に何を想うか。それはアナタの自由なのです。でもきっと、この白い星には美しい花が咲くでしょう。
微笑むように、王子が愛した紅い薔薇が。


京都
pâtisserie fraicheur フレシュール

20091018

薔薇を浮かべて


優しさが恋しいときは、ここを訪ねてください。ゆれる水面に浮かぶ、薔薇の花弁。穏やかに壁を照らす、華やぐ照明。
グラスに注がれたカクテルに、そっと微笑み、
あなたの瞳が、煌めきを取り戻しますように。
あなたの吐息に、ときめきが宿りますように。


京都
Bar Rosebank ローズバンク
http://www.bar-rosebank.jp/

20091017

心の匂い

麗しく甘美なお菓子をいただき、ときめき、夢に溺れ、とけていく夢幻から醒めたあと。そこに感じるのは“あはれ”であったり“をかし”であったりするのですが、最近見たものが、心の匂い。
パティスリー・タンドレスパティスリー・エスにて考え始め、ふと気付いたこと。友人に連れられて訪れた、谷崎潤一郎の墓。其処に刻まれた寂の一文字。秋風に吹かれたその夜、偶然にも辿り着いた言葉が、心の匂い。ささめごとにて書かれている、心の艶。美(味)に耽りながらも、私も其処へ辿り着ければと、切に切に願うのでした。

初めてのものを前にして、関西の人は匂い、関東の人は眺めるそうです。
京都で暮らしているからか、視力が弱い為か、嗅覚は本能を刺激するからなのか、私は香りに魅せられることが多いと感じます。京都の洋菓子にはムース系が多いのも、影響しているかもしれません。
好きな店は何処も、妙なる香りに溢れています。

今月は(来月も?)京都の店ばかりを書き連ねておりますが、月や花から得るインスピレーションが多いようです。妄想と幻想と夢想の間にある、白日夢のような戯言と拙文に、もし興味を持たれたものがありましたら、はんなりと香るその店をお訪ねください。
味覚と嗜好は人それぞれだと考えているため、味については詳しく書いておりませんし、批判はしていないつもりです。また、“それ”目当てに私が浅ましい事をせぬ様にとの戒めから、コメント欄を設けておりません。個人的嗜好のblogなんて、こっそりと隠れて書いておれば良いのです。
ただ、好きだけを。できるだけ文章は短く、個人的な感覚と印象のみを書こうと心掛けております。味覚だけでは無く、私が五感で感じた雰囲気を、写真と文章に込めることが出来ればと願います。
しかし、私の心と文章と写真が捉えるよりもっと、実際のお菓子は美味しいのです。
残念だけど、嬉しいものですね。


このありふれた美しさ


花が咲くようなキスを。唇を重ねた時よりも、離れたあとの吐息の中に永遠を。想いは華やいで、ココロときめいて。

ヴィエノワを、より甘く可憐にアレンジしたヴィエンヌ。繊細なムースは、その日の天気や体調により、感じる印象も変化するようです。
コート・ド・ニュイやカノンといったケーキの方が、よりお店の理想型に近いのかも知れませんが、共通する美しさはやはり、花(艶)のある風景を想起されること。
花が咲き、花が散り、風に消えても、想いは残る。そしてまた花が咲く。繰り返される日常にこそ、美と喜びが溢れている神秘。
静かな余韻の中で、私はそのように感じました。

慎ましやかに、淑やかに。ただ、あるがままの美しさを。花と風を感じる静かな歌を。


京都
PÂTISSERIE . S パティスリー・エス
http://patisserie-s.com/

一輪の花


風の生まれる場所。そこに咲く花。
清らかな風に揺れて微笑む、名も無き花のように。咲き誇り、風に散りゆく愛しさよ。緑の野を駈け抜ける風は、朝日に、木漏れ日に、黄昏に、星の輝きの中へと、薫る想いを空へと帰す。
目を閉じて、余韻に耳を澄まし、香る吐息を楽しむ。再び心に咲いた花は、強く、優しく、微笑んで。


京都
PÂTISSERIE . S パティスリー・エス
http://patisserie-s.com/

20091016

そして僕は恋に落ちた

魅惑的な吐息に搦めとられ、僕は抵抗するのを諦めた。まどろみの中で運命を感じ、とろける夢へと堕ちていく。ショコラ、その素敵な魔法よ。僕の全てを君へ捧げる。

まだ旅行者であった、ある日の午後。偶然出会ったクレーム・オ・リが衝撃的で、それは私が京都へ移り住む理由の1つになった。
ドライフルーツとポワブル・ロゼを混ぜ込んだ、甘くふっくらとしたお米のバーを崩し、優しく穏やかなクレームと共に食べるのが好きだったけれど…今ではショコラ・オ・リに。
でもやはり、それでも好きなんだ。ほら、僕のハートは撃ち抜かれている。


京都
SALON DE THE AU GRENIER D'OR オ・グルニエ・ドール

20091015

星降る夜に


かに咲く花のように、水面に映る月読みのように。
店の名前はOKU。祇園の裏路地にひっそりと佇み、はんなりと、見えぬものを、見過ごしていたものを、美として表してくれる場所。香気にカタチを与えてくれる場所。
季節の詩に想いを乗せた歌人が綴る、時間と空間。この場所を満たすのは、誰かの想いと恋心であって欲しい。
溜息すらも、こぼれる花弁の如く美しいと、君の睫毛に煌めく星を眺めながら、清らかなる白い花に願った。この想いが、ゆっくりと溶けていきますようにと。
空に咲く花のような雪は、凍える街では無く、温かな心をもった人々の上で、甘く甘く融けていく。音も無く、星のように輝きながら。


京都
OKU おく
http://www.oku-style.com/

20091014

月の気配


いは華やいで、しっとりと香り出す。雲に隠れても月の美しさは変わらぬように、見上げずとも今宵の月の美しさを知るように、同じ想いが静寂の間を漂い、気を満たしていく。
あなたは此処で、何を想うのだろうか。私は其処で、何を見るのだろうか。
心の動きは月に似ていると感じた。
だから此処には、月の香りが流れていると、窓の外を眺めながら呟いた。


京都
遊形サロン・ド・テ ゆうけい

20091013

太陽の匂い


と感じるのは、微睡みの中で見た太陽。それは、あたたかな光。やわらかな木漏れ日。懐かしい想い出と、陽炎のように揺れる追憶の日々。
太陽の隠れ家で翼を休め、夜更けまで語ろう。優しさに包まれて、グラスを傾けて、とけていく五感を楽しもう。
ほら、明日の足音が聞こえるよ。


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20091012

きみが好きだよ


咲きはじめたばかりの薔薇は、すでに凛として。
少女のままの無邪気さと、乙女がまとう恋心。そしていつまでも変わらない可憐さをもって、純粋な夢へと歩いて行く君の姿は、可愛くも美しい。
忘れないで、その笑顔を。君の素晴らしさと愛しさを。


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20091011

たとえ世界が滅びても


魔法の夜。罪よりも深い闇に、緑色の妖精をくゆらせて微睡む。絡みつくその美酒は、恋心に根を下ろし、魂を虜にする。
ゆっくりと溶けていく時間。蠱惑的な香りに誘われて、見えるはずの無い深淵を覗き込む。
耳を澄まし、嗜む様に。高貴なる戯れのようなショコラと踊り明かそう。

ゴーストの、シャルトリューズヴェルト。
ショコラを使って表現される、艶やかなカクテルのようなケーキ達は、淑女を酔わせる為に、紳士を惑わす為に。そして何よりも、我ら闇の一族の快楽の為に、心を酔わせてくれる。
ショコラに、罪悪感と恍惚感を感じる全ての者達の為に、この店はある。
血液に溶け、魂を染めていく魔法は、我らの吐息を輝かせる。闇に薫るアロマは星々の囁きに似て、煌めく終末の幻想を見せてくれる。
溺れよう。
この甘い夜に。


京都
ghost ゴースト

血に眠る記憶


酔わせて欲しい。束の間でも良いから、全てを忘れてしまえるほどに。
金色の闇はデカダンな調べ。 無憂なる終焉は神々の黄昏か。 それとも、 大いなる罪にも優る恍惚なのか。
我々は祈る。例え現世で救われること無くとも、 来世の祝福を信じて。
我々は願う。堕ちた先が悲しみだとは限らない。 望んで落ちる闇もある。

彷徨える魂が、粋と艶が結実した、禁断の果実を求める。
そら、口にするが良い。
この素晴らしき闇を。


京都
ghost ゴースト

20091010

daydream loveletter

愛が死に、やがて私の骸が死ぬ。
Love dies. And finally my corpse dies.

それは谷川俊太郎の詩。このblogのサブタイトルも、同じく谷川俊太郎の詩の一節を英訳したものから。書き始める時に、背景色が白なら谷川の、黒ならランボオにしようと思った。
そして、書き記そうと思った理由(わけ)は、こんな些細なことなんだ。

君は全てを忘れてしまう。
そして僕も…。

愛した人の温もりを、優しさを、香りを、眼差しを、時の流れは奪っていく。それは愛の深さや強さに無関係で、別れても、別れずとも、過去の全ては淡く滲んでいく。
同様にして、
日々の美味しさに感動し、写真とメモをとり、blogに書き残したとしても、きっとこの記憶は次々に抜け落ちてしまう。記録は全てを残せないのだから。
過ぎゆく時間を止められず、忘却するのも仕方が無い事なのだから、願わくば全てを失わないようにと祈る。消化であれ、昇華であれ、過去は全て儚い。ならばせめて、変容した想い出が、未来の私にも見えるようにと、このblogを書き続けようと思う。未来の過去の為に、今を残そう。
それが素晴らしき事であれ、つまらない事であれ。


PS.ちなみに今回のタイトルdaydream loveletterは、World's End Girlfriendの曲から。
ここからは、京都へ移り住んでから出会った素敵なお店とお菓子を綴っていきます。…しばらくは、京都エリアばかりになりますよ。

見上げた空の月影に

御所西に構える老舗。屋号の虎屋には様々な謂れがあるけれど、最近ふと感じた事が。
雲間から差す、妙なる月影の光条が、世を照らす天皇の御威光であると同時に、虎の縞模様に見えたのでは無かろうかと。

飾りすぎず、語りすぎない存在感。その風味をもって受け継がれてきた伝統。
そっと寄り添うように感じるのは、おだやかな季節感。
繰り返す日常に何を見たのかが、その人の歴史になるのだと感じた。


京都
虎屋 とらや
http://www.toraya-group.co.jp/

20091009

under the moon


月に歌うは、しなやかなる虎。竹林の風のような清らかさと、雲間から差す月明かりのような夢幻の残り香。目にした時よりも、口にした時よりも、喉元を過ぎたあとの淡い余韻が印象深く、吐息に残った思い出が、また此処へ足を運ぶ理由になる。

初めて嘯月に出会ったのは、祇園にあるせせらぎすへら。梅雨の時期、嘯月セットのきんとんは、紫陽花を模した朝の露でした。たまたま当時は毎週末のように京都を訪ねておりましたが、その度に、野に咲く紫陽花の彩りが移りゆくのと同じく、きんとんの彩りが変化していくのに感動を覚えました。
以来、ここが最もお気に入りです。(個人的に)心が穏やかでなければ暖簾をくぐれないと思っているので、足繁く通えるようになればと願います。


京都
嘯月 しょうげつ

20091008

Love Me Tender


優しく愛して、甘く愛して。
再び奏で始められたシンフォニーには、艶やかな歌声が聞こえる。ここに僕たちは、永遠の愛と誠実を見つけた。その瞳に強い想いを感じると同時に、深い優しさに満ちた光を見て、僕は君に愛を誓ったんだ。
君が王女であれば、僕は王子になろう。
君が妖精なら、僕は詩人になるよ。

愛している。いつまでも変わらずにずっと。


京都
pâtisserie Tendresse タンドレス
http://kyotocake.com/

歌うように笑うように毎日を

芳醇なる南風や、南国の幻想をイメージされて、店名にハチドリの名を冠せられたのかと最初は思った。でも、何度も通い続けるうちに、仕事に対するシェフの真摯な姿勢に感動し、ある童話を思い出した。

アフリカに、確かこんな話しがあった。山火事になり、多くの動物達が逃げ出す中、とても小さな鳥(ハチドリ)が一羽、湖の水を一滴ずつ運び、火を消そうと何度も往復した。
「そんなことをしても無駄だ!山火事が消せるものか!」
小さな鳥は答えた。
「ぼくは、ぼくに出来ることをやるんだ」

丁寧に、真剣に、1つ1つに想いを込められていたシェフ。多くのファンに愛されていたのは、その心を皆が知っていたから。
10年を一区切りとし、ベックルージュの看板は外されてタンドレスへと進化したけど、僕たちはハチドリの歌を忘れない。

※2009年、店名をタンドレスへと改名しました。


京都
Bec Rouge ベックルージュ

20091007

いつも、いつまでも。

歌いたくなる香りに誘われて、毎日通いたい美味しさが並ぶ店へ。どんな言葉よりも確かなのは、私がこの店の近所に引越してきた事実。
朝、焼き立てのタルトを買いに行く時や、ずらりと並んだ焼き菓子を眺め、誰かへのプレゼントを選ぶ時。そして、季節のフルーツを使ったケーキが登場した時の幸福感。
今日は何にしようかな?
明日は何があるのかな?
コムトゥジュールへ向かうときは、しあわせを感じながら玄関の扉を開くのです。


京都
Comme Toujours コムトゥジュール

20091006

pure and innocent


純白の1ページに綴られたのは、夢見るショコラと初恋フランボワーズ。乙女心は甘いだけでは無いのよと、笑顔の君は言うけれど、その口どけと香りは、やっぱり甘いと思うんだ僕は。

吐息から、ハート型の香りがこぼれるケーキです。


京都
Atelier La Page Blanche アトリエ・ラ・パージュブランシュ
http://www.alpb.jp/

20091005

ふたりの引力


愛がはじまるキッカケの、恋について。そんなコトを考えたくなった時は、この店を訪れてみて。
続いていく二人の未来の始まりが、この場所でありますように。


京都
MALEBRANCHE マールブランシュ
http://www.malebranche.co.jp/

20091004

日の雫、月の佇まい。


茶道の敷居が高いと感じるのであれば、まずはここから。最後の一滴にまで込められた想いを、背筋を伸ばし、美しく。注がれたお茶に時の流れを感じれば、心は妙なる仙境へと遊ぶ。
香りに想いを。味に気持ちを。こころ穏やかにして見えるのは、自身の有り様。欠けるも満ちるも、月は月故に美しいと知る。

お茶うけには小豆のフロールを。はんなりと香り立つ甘さが、お茶の旨味を引立ててくれます。


京都
さのわ
http://www.sanowa.shop-site.jp/

20091003

smile


笑顔の理由は美味しさからなんだけど、美味しい理由は何だろうかと考えてみたの。
…でもそれってさ、
「なぜ君は美しいの? なぜ、僕は君を愛しく思うの?」
これくらい無意味な質問だと思ったんだよね。

キミの笑顔が好きなんだよ、僕は。


京都
むしやしない
http://648471.com/

キミの笑顔は僕のよろこび


笑顔が咲くお菓子。美味しさの中に美しさがあるように、お菓子の中に可笑しさがある…なんて書いてしまうと駄文になるけれど、美味しいと感じた時に、人は笑顔になります。
優しくも強く明るい太陽のようなシェフが、お客様の笑顔のために作られるお菓子。それは、口にした人々の心を、あたたかく元気にしてくれます。

たとえばコレ、鏡もち de マカロンは、むしやしないらしい1品。
見ただけで笑顔になるものが、このお店では間違い無く美味しいのです。


京都
むしやしない
http://648471.com/

20091002

清けし月の、薫る夜空に。


心に春を感じる。月ヶ瀬のこし餡は、白梅の気品と紅梅のふくよかさを併せ持つ風味と甘味。そして清らかなる月光のような余韻。その美味しさに、ひと時の幸せに、目を閉じれば和やかな春の情景を感じるのです。

冬季限定の抹茶あわぜんざいは、暖かくしっとりとした抹茶餡に、ぷちぷちとした粟餅。底冷えの京都を愛しく感じられる品です。
ほっこりと、ゆっくりと。静かな冬を楽しみましょう。


京都
月ヶ瀬 つきがせ
http://www.tsukigase.jp/

20091001

時の魔法


憶えていたのに、忘れてしまった記憶。それを再び取り戻す事を、jamais vuと呼ぶ。未視感。既知なるものから未知を発見すること。事実から真実を、未来へと繋がる過去を見出すこと。
プルーストの小説では、主人公は紅茶に浸したマドレーヌのひとくちから、遥かなる過去へと飛翔する。ならばこの、溺れそうな程のラム酒が溢れ出す、芳醇なるババを口にした時、私は何を取り戻すのだろうか?

願わくば、溺れる程の愛と夢を。


京都
AU TEMPS PERDU オ・タン・ペルデュ
http://www.bellecour.co.jp/