20110331

The Neverending Story


の青空に残る軌跡を、ぼんやりと眺めていた。点と点を結ぶと線になる。喜びと喜びを結ぶと思い出になる。ならば、思い出と思い出を結ぶと…なんだろう? でもそれがきっと“毎日”で、僕らが“生きてる”という事なんだよね。
春霞の空に、夢と夢を結ぶ白兎が跳ねた。

イチゴのショートケーキ(Gâteau aux Fraises)


京都
Point Pour Point ポワン・プール・ポワン
http://www.ppp-kyoto.com/



通い慣れた北山店は今日で終り。明日からは府庁前の本店のみになるそうだ。北山店の雰囲気は大好きだったので、とても残念に思う。でもきっと、この大好きは消えないから、明日へ、そして本店へと繋がっていくのだろう。好きと好きが繋がって、大好きが続いていく。そう思えるから僕は、この残念に思う気持ちと一緒に、明日へと跳ねていこう。今日と明日を結び、未来にある大きな幸せへと。

Blanche-Neige aux pommes


E

lle était ivre d'amour.
白雪姫は、深く深く恋をした。恋の天使は翼を捨てて、海よりも深い夜の闇へと溺れていった。
お願い、東の彼方の城門の前で、私に約束のキスをして。そして夢から連れ出して。

ショコラのテリーヌ(Terrine au Chocolat)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/



プチジャポネの面白いところは、同じ名前でありながら、形や素材、配合が変わったりするところ。例えばこのテリーヌなんだけど、最初はオレンジとグランマニエだったんだ。
それがほら、ある日突然にして、リンゴとカルヴァドスに変わっていて、しかもアルコールがかなり利いていたんだ。もう、酔いそうなほどに。
僕はお酒に弱いから、うっとりとドキドキの間で、妄想と空想を紡いでみたんだ。白雪姫が食べた林檎は、こんな味ではなかっただろうかと。

20110330

Rêve de printemps


女は言った。夢を見たいと。彼は答えた。夢を見せてあげると。満たされたグラスに落ちた流星が、唇に花を咲かせた。
魔法の香る夜に、2人は春の夢を見た。一陣の春風に連れ去られて舞い降りたのは、妖精の国だった。物語は、儚くも楽しい短い夢だった。
酔夢と香りを纏わせて、僕らは夜を抱擁した。

フィアンティーヌ(feuillantine aux fraise et PERNOD)


京都
Krepe クレープ
http://www.ksix.jp/krepe/



春風に、はらはらと舞う木葉を重ねて作ったミルフイユ。そこにペルノーを少々。その香りは、瑞々しい苺と、甘いクリームに良く似合っていた。花の咲く色彩と雰囲気に、緑色の風が優しく薫るような風景が見えた。
さて、ghostはkrepeへと変身を遂げて、Kの冠を頂くようになった。僕はghostを深く愛してはいたけれど、その亡霊に囚われる事無く、新たなKの魅力を楽しめた。それはとても、幸せな事なのだと思う。そこでふと考えたのだけど、この場所に、以前と変わらず存在し続けている魅力_それは魅惑かも知れないし、魔力や引力と呼んでも良いのかも知れない_とは、一体何であろうかと。
…夢であれ魔法であれ、それが何であれ、見えない物を楽しみ信じられる人は、今日もまたこの扉を開けるのだろう。それはもう、間違い無くね。
溺れるのであれば、鰓があれば良い。堕ちるのであれば、翼があれば良い。夢を見たいのであれば…ね?此処にお酒があれば、それで良いんだよ。

20110329

太陽の忘れ物


の中、モレ・シュル・ロワンの河辺を散歩した。風は煌めいて、瑞々しい青空に、淡く透明な波紋を咲かせていった。見上げると、詩人が描いた羊と花々が駆け抜けて行く。
ふと、足元に、誰かが忘れていった帽子が落ちていた。春風の女神か、太陽の乙女なのか、そんな帽子だった。

レモンと木苺のシャルロット(Charlotte au citron et aux framboises)


京都
LOTUS洋菓子店 ロトス



この店を、このお菓子を、僕は何に例えようかと迷い、棚の画集を眺めていた。印象派には間違い無いのだけれど、何かぼんやりとしていて、それでいて確かな光りのような物を感じていた。日常にある、気付かれざる風景のような美しさだ。
幾つかの絵画を眺めているうちに、1人の画家に辿り着いた。アルフレッド・シスレー(Alfred Sisley)だ。彼は、風景の抒情詩人と呼ばれていた。
甘く輝くシャルロットを窓辺に置くと、ゆっくりと景色が滲んでいく。日常は、淡く微睡みへと解けていった。
新しい一皿にまた、詩と夢が浮かぶ。波紋と空想を重ねながら、一輪のロータスが花開いた。

20110328

Little Bird


たちの戴冠式を行おう。子供だけの、小さな戴冠式を。
紫色の小鳥は祝福の言葉を述べて、天使の代わりに囁き歌う。汚れ無き子供らよ、過ぎ去りし大人たちに代わり、愛と勇気と王冠を。
ある晴れた日曜の朝、全ての街の十字路で、僕たちは皆、小さな王様と女王様になった。

フランクフルタークランツ(Frankfurterkranz)


20110327

le flamant rose


々の影からちらちらと、美しいフラミンゴの姿がうかがえる。その曲がった首のシルエットは、時にハートの形に重なって、より鮮やかなピンク色に見えたりもする。誰かの恋を、垣間見たような心境だ。
ねぇ、君が少女だった頃も、あのような薄紅色の想いを抱いていたの?

フラミンゴ(gâteau aux Fraise et à la Vanille)


20110326

Au soleil


陽をひと掬い。流れる雲のようなミルクと共に、光り溢れる午後を掬った。やわらかな光と温もりを、穏やかな君の隣りで感じながら。
お茶のお代わりを頼もうと、僕は真鍮のベルを鳴らした。鈴の音は白い壁に木霊して、2人の微睡みに咲いた。

かぼちゃのプリン(pumpkin pudding)





大きな窓辺で過す午後も、静かな夜を眺めて寛ぐ夜も好きで、そのどちらにもこの店は、優しく対応してくれる。テーブル席でもカウンターでもソファー席でも、1階でも2階でも。君が独りでも、2人でも、友人や家族たちと訪れたとしても、きっと気に入ってくれると思うんだ。君が求めるものが、僕と同じだとしたらね。
どこか遠い夢の気配が感じられる空間は、イギリス領インドであった頃をイメージされたそうだ。店内に満ちる平和な空気は、大きな窓から差す太陽の光と、壁際に灯されたランプの明かりから生まれるのだろう。浮遊する音楽が、そこに優しさを添えていた。
ねぇ、君は紅茶の向こうに、一体何を夢見るの? どんな情景が見えているの?
カップに落ちた最後の一雫は、レコードに落とされる針の様に、僕たちが好きな音楽を奏で始めた。

20110325

恋の迷宮


L

abyrinth of Love. It is a fragrant bloom.
瞳を閉じると、薔薇の咲く庭園が見えた。君との約束の、小さな庭だ。煌めく緑と、色とりどりの薔薇の咲く、秘密の庭。薫りの中で、それは恋に似ていると君は笑い、僕も微笑みで返した。

紅茶(wall of rose)


京都
MISSLIM ミスリム



『お好きなカップをどうぞ』
そう薦められたので僕は、美しく花の咲くカップを選んだ。入れられた紅茶は、“wall of rose”という物で、映画“秘密の花園”を思い出させてくれた。遠く初恋を想い出す、優しい香りだった。

迷宮を進み僕たちは、もう引き返せないほどに恋をしていた。愛に辿り着きたいと迷い、彷徨っていた。チェスの駒を進めるようには計算高くなれず、童話ほどには美しく無い日々の中で、それでも僕たちは優しくあろうと努めた。
行き止まりに立ちすくんでは引き返し、見えない壁の向こうを知ろうとしては、小さな棘に傷つきもした。それでも僕らは恋をする。幾つもの薔薇を咲かせて、愛に辿り着くために。


さて、最近お気に入りの新店を、3店紹介します。京都は小さい街だけど、愛しい店が消える事もあるけれど、それでも僕は、この街を愛し続けたいと思うのです。だからほら、花咲くように生まれた、僕のお気に入りを紹介するよ。

20110324

Le pouvoir de votre sourire


ってよ。君の笑顔が見たいんだ。君の笑顔があれば、僕の世界は花で溢れるし、君の笑顔があるから僕は、世界を愛することが出来るんだ。
天使の翼よりも、満月の慈悲よりも、僕は君の笑顔を愛しく思う。だからそっと、指の間から零れてしまわぬようにそっと、優しく君の頬を撫でた。限りない愛しさとともに。

ミニョン(Gâteau à la crème framboise)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/



今回の震災について、色々と考えてみた。でも、納得する答えなんて出やしなくて、僕は、僕には、何が出来るのかさえ分かりはしない。
そんな不甲斐無い僕の前に出されたお皿の上の、よく知っているお菓子には、満面の笑みが咲いていた。
笑おう。誰かを、全てを、漠然とでも良いから、愛するために笑顔になろう。笑顔を増やせるように、まずは君に笑おう。

20110323

À la fleur exquise


の綻ぶ春の日に、瞼に浮かぶ夢の雲。静かな瞬きに咲く花が、君の唇から零れた吐息に揺れていた。目を開けて、その余韻の中に佇み僕は、束の間の夢の中でそっと、指先に花の咲く君の手をとった。
春よ、愛しい春よ。

本日のケーキ(Rouleau à la crème et fraise)


京都
Pâtisserie Exquise エクスキーズ


振り返ってみて、京都で好きな3店と、そこの大好きなお菓子について書こうかと考えた。でも、僕が京都へ引越す理由になった3品は、今はもう無いんだ。オ・グルニエ・ドールのクレーム・オ・リは姿を消したし、シトロンのシュー・ア・ラ・クレーム・シトロンは姿を変えてしまった。それらを食べる…いや、会いたいがために京都へと通った品々は、今はもう無いんだ。もちろん、姿が変わっても愛しているけれど、あの時、僕の人生を変えてくれた京都のお菓子は、もう無くなってしまった。
『いや、縁遠くなってしまったけれど、あの店なら…』
そう思って訪ねた店のショウケースにも、やはりあのお菓子は並んでいなかった。でも、それで良いと思うんだよね。京都らしくもあるしさ。

時は流れ、形は変容し、記憶は淡く滲んでいく。でも、その姿を失った時に、ふと匂うものを僕たちは、想い出と呼んで慈しむのだろう。
僕が愛したものは、姿でも味覚でも無く、そのほんのりと香る匂いだった。だから今でも僕は、この街に住んでいるんだ。
愛しているよ。今でも変わらずに僕は。

20110322

Que me conseillez-vous d'aller visiter?


L

es gens ont des étoiles qui ne sont pas les mêmes. Pour les uns, qui voyagent, les étoiles sont des guides. Pour d'autres elles ne sont rien que de petites lumières.
一歩一歩と踏みしめながら、長い道のりを歩いてきたつもりだった。でも、空を見上げることを忘れていたのかも知れない。僕は何処へ進んでいるのだろうか? 僕は何処を、目指していたのだろうか? 足元ばかりを見ていた僕に、落ちる影は自身の影であった。空を見上げよう。そして、星を目指そう。
まだ雪の残る小径を歩きながら、僕は冬の終りを感じていた。

Macaron chocolat à l’ancienne


パリ
JEAN-PAUL HÉVIN ジャンポール・エヴァン
http://www.jphevin.com/



タイトルと冒頭の一文は、サンテグジュペリの“星の王子さま”から。残念ながら、またフラリとパリを訪ねたわけじゃないんだ。
ただ、どうしたら、何をしたら、再びあの街を訪れることが出来て、親しくなった人達と再会出来るのかと、ぼんやりと考えていた。
ジャンポール・エヴァンの、マカロン・ショコラ・アランシェンヌ。パリと変わらない物が日本にもあるのだから、道は繋がっていると思うんだ。だから迷っているのは僕自身の心に過ぎないと思い、再び歩き出そうと思う。今度は、前を向いて、星を頼りにして。

20110321

la vie romantique


A

u temps Fantastiques.
Elle a l'imagination romantique d'une petite fille.
彼女は夢見る。少女の時に、抱いた夢を。それはとても甘く優しくうっとりとする、素敵な恋。
“あなた”が永遠でありますようにと。

Religieuse aux Fraises


パリ
Stohrer ストレー
http://www.stohrer.fr/



日本の苺は品種改良を繰り返し、増々甘くなっています。それが多くの日本人の好みなのです。対して、フランスの苺はどうかと言えば、酸いも甘いも香りもあって、でもどこか大人しい味でした。
それって恋愛観にも影響しているのかな?なんて考えたけれど、たぶんそれは僕の気のせいで、パリの空気が僕に見せてくれた、妄想と空想の間のような、淡い幻想なんだと思うんだ。
今日のパリの空は久しぶりに青く、流れる雲は、綿菓子のように柔らかそうに見えた。何処かで誰かの、素敵な話しが、…そう、夢の続きが始まりそうな天気だよね。

『甘さを感じる感覚と、恋愛時の感覚はきっと、かなり近いような気がするんだ。女性の方が恋愛好きで、甘いものも好きな理由は、その感覚が男性より優れているからだと僕は確信している。女性が愛らしいのも、甘いものに目がないのも、脳や心の構造に因るものなんだ。
では男性はと言うと、大好きなお菓子は、子供の頃に食べていた、母の手作りお菓子だったりするワケで、それはきっと、初めての異性が母親だからだと思うんだよね。』
そんな話しを僕は、カフェで隣同士になった女性のヒマつぶしに付き合いながら喋っていた。
『じゃあ、あなたの好きなお菓子は何? やっぱり、お母さんの手作りなのかしら?』
カフェクレームを飲み干した彼女が、笑顔で質問した。
『僕は甘いものが大好きで、どれか1つなんて決められないけれど…決まり事が1つだけあるんだ。それは、女性に対する尊敬と優しさと同じものを抱いて、感謝しながら食べること。美味しく美しいお菓子は、素晴らしいものだよね。』
そう答えた僕に彼女は、信用ならない人ねと笑っていた。
『…ねぇ、もう1杯分だけお喋りに付き合ってよ』
当然僕も、そのつもりだよ。

20110320

Smileys(Smile for you)


ろい惑う。花も心も、やがては色褪せていく。
咲いては消える想い出の中で、変わらないものがある。それは君の、笑顔の美しさと愛しさだった。

花のいろは(Pain au patate douce violette)


京都
Boulangerie MASH Kyoto マッシュ京都
http://plaza.rakuten.co.jp/mashkyoto325/



花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
有名な、小野小町の歌。春の長雨に散る桜を歌ったものだから、季節的にまだ先の話し。菫はそろそろ咲き始めるのだろうか?
白いパンの上に咲く、小さな菫を眺めながら、君の笑顔を思い出していた。菫の花言葉は、誠実・小さな愛と言うそうだ。

18年ぶりの、スーパームーンと呼ばれる月の大接近の日に。

20110319

ありがとう


は過ぎゆく。記憶も、思い出も、良いことも悪いことも、全ては流れ去っていく。僕はそれで良いと思う。ただ、ふと思い出すことがあり、それで心落ち着けるのであれば、それが幸せなんだと思うんだ。
だからこそ僕は、大切な物事を、時に思い出すようにしている。ゆっくりと、感謝しながら。

三色萩乃餅(Trois sortes de ohagi)


京都
かさぎ屋 かさぎや
http://2nenzaka.ne.jp/view.php?id=kasagiya



二寧坂の甘味処で、竹久夢二も通ったそうだ。夢二が美人画を描いていたことよりも、僕は彼が、かさぎ屋に通っていたことの方を強く記憶している。愛しい女性が居ればこそであろうが、甘いものが好きだったのだろう。そんな夢二を僕は、少しだけ身近に感じているんだ。

記憶は記録とは異なり、確実に変容していく。良くも悪くも、不確かなシロモノだ。思い入れがあれば、そのとき感じたこと以上に鮮明な記憶となるだろう。でも、悪い記憶は忘れたらいい。良い記憶を思い出すことできっと、流され薄れてゆくだろう。
僕は日常的に甘いものを好むのだが、たとえば君が…そうだな、癒しなんて物を求めてこの店を訪ねたいと言うのであれば、いつでも僕を呼びつけてくれ。案内するよ。そりゃ僕だって、美人と一緒の方が良いけれど、友の頼みだ、駅まで迎えにも行くさ。

そう話しながら彼は、嬉しそうに3つのお萩をペロリと平らげた。白漉し餡のおはぎは、寒い時期だけで、もうすぐ黄な粉のおはぎに代わるそうだ。
『すみません、善哉を1つ!』
彼がこの店を訪ねる理由が、私のお供だとは信じられないわ。

20110318

Welcoming Morning


を待ちわびて、僕は君の夢を見る。同じ明日に辿り着くために、同じ未来を生きるために、僕は君の夢を見る。甘い夢の後に朝が来て、その余韻に微睡んでいる僕の隣に、優しい君の笑顔がありますようにと。

ミルクとフランボワーズのムース(Mousse au Lait et aux Framboise)


京都
Atelier La Page Blanche アトリエ・ラ・パージュブランシュ
http://www.alpb.jp//

http://www.takanokenichi.com/words/palpop/02.html

20110317

Lieu de naissance d'étoiles


いの数だけ星があり、祈りの数だけ瞬き続ける。夜空には、無限の希望と夢が煌めいているのだから、ごらん、幾億の星々を。こんなにも温かい空を。眠る君を包むようにいつも、夜空は輝いているのだから、おやすみ、子羊たちよ。遠く、星が生まれる瞬間を夢見ながら。

ムラングシャンティ(Meringue chantilly)


大阪
Pâtisserie quai montebello ケ・モンテベロ
http://www.quaimontebello.com/

20110316

白日夢


を見た。愛に溺れて惑い、堕ちていく夢を。
翼をもがれ、肉体を失い、白い虚空へと落ちていった。それは私への裁きだった。
全てを失い、気付いた時、私の魂の隣りにはただ、美しい愛だけがあった。

サヴァラン(savarin)


京都
Atelier La Page Blanche アトリエ・ラ・パージュブランシュ
http://www.alpb.jp//

20110315

naît à L'amour


が聴こえた。水面に落ちた、ひとひらの花びらのような、甘く柔らかな囁きが。
静かに広がる波紋のように、その声は僕の心を満たしていく。
満月の夜、君の瞳から溢れた雫をそっと、僕は優しく受け止めた。

ピュイダムール(Puits d'amour)


西宮市
pâtisserie au temple du goût オ・タンプル・デュ・グゥ
http://www.du-gout.com/

20110314

L'amour naît


している。ただそれだけで、幸せになれる不思議。愛している。ただそれだけで、全てを信じられる神秘。
甘い薔薇が微笑むの。あなたを愛していると、私の心の真ん中で笑っているの。
3つの愛を重ねて。愛が生まれた瞬間の、甘さと優しさを君に。

いちごのショートケーキ(Gâteau aux fraise)


東京
Kaori Hironé カオリヒロネ



日本には、ヴァレンタインデーとホワイトデーがある。義理とお返しなんて、なんと日本的なことだろうか。
商業主義とか、もう流行らないとか言われるけれど、良いじゃない。だって僕たちは、愛するために生まれてきたんだから。
naît à L'amour.
La vie naît à L'amour.
もっと素直に、もっと優しく。愛だけが全て…。

La tiédeur de l'amour


く囁いて。耳元で、心のそばで、私に甘く囁いて。ただ、信じていると。
その一言が、月の無い闇夜に輝く星となり、私が生きる理由になるの。
あなたが眠りに落ちる前に、私が夢に目覚める前に、お願い、甘く囁いて。

苺のショートケーキ(fraise japonaise)

東京
patisserie de bon coeur ドゥ・ボン・クーフゥ
http://dbc.apartment-key.com/



ゆっくりと、心の奥へと融けていく温もりは、手のひらから伝わる優しさに似ていた。
静かな余韻の中で考えたのは、安心感。そして…。
眼を閉じると、深く広い暗闇があった。それを夜空だと認識出来たのは、姿を見せずとも感じられる、月の気配であった。暗闇でもう一度、ゆっくりと心の眼を開くと、金と銀の星々を散りばめた、煌めく満天の空があった。
言葉にならないのなら、声に出せないのならせめて、私のそばにいて。
そんな囁きが聴こえたような気がして僕は、静かな闇に沈黙した。

20110313

キスまでの距離


の羽ばたきは蝶のように、その香りは花のように咲いて、僕らの指先に止まる。その指は、恋する小指かも知れないし、未来をさす人差し指かも知れないし、約束の薬指かも知れない。
ねぇ、君はいま、何を考えているの?教えてよ僕に。

そして彼女は悪戯に、可愛い瞳を閉じて微笑んだ。

ショートケーキ(Verrine aux fraise)


東京
Pâtisserie Cacahouète Paris カカオエット・パリ
http://www.cacahouete-paris.jp/



多くの人が勘違いしているけれど、生クリームたっぷりのショートケーキは日本のケーキで、いわゆる洋菓子。フランス古典菓子には無い物なの。
だから、フランス菓子店(パティスリ)を名乗るお店には並んでいないのだけれど、やはり日本人としては恋しいところで、どうしても欲しくなってしまう。…君もそうでしょう?
そこで、フランス人シェフのジェローム氏が考案したのは、こんな形のショートケーキ。再構築されたショートケーキを観察すると、僕たちが何を求めているのか、シェフがどんな想いを込めているのかが、理解出来ると思うんだ。

キスまでは何マイル?それとも…

20110312

茜さす


辺に惑う、胡蝶の羽ばたき。はたはたと、ひらひらと。
ゆらぐ光に踊り微睡む。その蝶がとまるのは、君への愛を咲かせる僕の胸の上だった。
ただ愛情だけを、君の吐息に重ねて。

ご褒美いちごのショートケーキ(Récompense de Gâteau aux fraise)


東京
Kaori Hironé カオリヒロネ



店の壁にはゴールドで縁取られた鏡が架けられていて、午後の一瞬に、柔らかな西日が当たる。その時に店内に満ちる雰囲気が、僕は大好きなんだ。
そうそう、
『僕にとってのお菓子は、ご褒美なんかじゃない』
なんて言っておきながら、最初に勧めるのは“ご褒美いちごのショートケーキ”だったりするの(笑)
でも、誤解して欲しく無いのだけれど、これは自分自身のご褒美(と呼ばれる言い訳)なんかじゃなくて、愛情に対するお返しだと考えてもらいたい。愛に報いることが出来るのは、純粋なる愛だけ。だからこのケーキにも、甘くうっとりとする愛情が込められていると感じたんだ。
このケーキを口にした時に、あなたは誰を想うのだろうか?

僕ら現代の日本人には、愛が足りない。もう、全くと言って良いほどに。それは何故か?
あなたは愛してますか?
誰かを、そしてあなた自身を、深く、本当に、心から愛していますか?

20110311

恋の始りは静かに優しく


を想うだけで、僕は優しくなれる。君を近くに感じるだけで、僕は強くなれる。君の笑顔があるだけできっと、僕は世界と向き合える。
たとえ全てが夢であったとしても、僕は君を信じているよ。

プリン・ア・ラ・モード(Le Pudding à la mode)


京都
Citron Sucré シトロン・シュクレ
http://speem.com/citron/



もう随分と昔の事のように思えるけれど、フランスから帰ってきて、少しばかり感覚が変わってしまった。いくつかの店には訪れることが無くなり、その分、馴染みの店を訪ねる回数は多くなっていた。
その理由はなんだろうかと考えてみるとそれは、お店が持つ雰囲気だった。その全てが、親しみやすくて優しかった。
僕にとってのお菓子は特別じゃなく、ご褒美でも、癒しでも、ましてや流行なんかじゃないんだ。ただそこにあるもの。あって欲しいもの。それは日々に咲く恋であり、永遠に誓える愛だった。甘い余韻の先には、幸せがあると思うんだ。

さて、僕が甘いもの好きになるキッカケの3品を並べたけれど、今なら何が良いのだろうかと、ふと考えてみた。流行では無く、本当に大切なものを、僕たち日本人に、分かりやすく感じさせてくれるものは、何だろうかと。
君に寄り添うようにして、優しく微笑んでくれるお菓子を、僕の知っている中から並べてみるね。

20110310

もう少しだけ…


の終りと、春の始まりの束の間に、夢見るように淡く、眠る萌黄の幻が、粉雪の下で歌っていた。
あとすこし。もうすこし。
下萌えに、芽吹く春を、待ちわびて。

さわらび(Au début de fougère)


京都
嘯月 しょうげつ



氷餅が煌めく道明寺の中には、薄萌えの漉し餡。つい先日までは、薄紅色の餡の寒梅が並んでいたっけ。いまだに雪の舞う日もあるけれど、もう真冬のような厳しさは無く、風さえ無ければ春を想う陽気が感じられるこの時期。そんな儚い一瞬を表した和菓子だった。
あとすこしだけ。
夢と期待に萌える春を、待ちわびるようにして。

20110309

la lune noyé dans l'ombre


空は静かに眠っていた。暗闇は優しく、すべての子供達の瞼を撫でた。人も、星も、花々も、穏やかに眠っていた。薔薇も、その神秘と共に眠っている。どんな夢を見ているのだろうか?
月の囁きを遠くに聞きながら、僕も深い眠りに落ちていった。

Guayaquil(Gâteau au Chocolat)


東京
JEAN-PAUL HEVIN ジャンポール・エヴァン
http://www.jphevin.com/



振り返ってみると確かに、突然僕は甘いもの好きになった。生活や性格が変わるほどに、甘いものに溺れるようになった。
では、以前の僕は全く甘いものを食べなかったのかと言うとそうでも無く、少ないながらも幾つかの思い出はある。
他所にお土産として持って行った福砂屋のカステラを、牛乳と一緒に食べたこと。
誕生日に、さいかい堂で苺のケーキを買ったこと。
海外に住む叔母から、気まぐれに箱入りのクッキーやチョコレートが送られてきたこと。
バレンタインには、彼女の手作りチョコレートを手伝わされたこと(笑)
チョコレートと言えば、エヴァンのボンボンショコラには感動して、福岡にブティックが出来た時には確か、僕から彼女を誘って出掛けた気がする。もう、かなり昔の思い出だけど。
そうそう、エヴァンのショコラは亡くなった祖母も大好きで、お土産にはタブレットやボンボンショコラをお願いされたっけ。それも懐かしい思い出になっているよ。

ゆっくりと溶けていくショコラにはきっと、様々な想いが眠っていると思うんだ。グアヤキルはエクアドルの都市だから、きっと薔薇の夢も隠れているに違いない。インカ時代から続く、ショコラの夢とともに。

20110308

甘いものはお好きですか? #03


色の星が瞬いていた。夜空は甘く溶けていき、誰かの夢が、月の隣りにふわりと浮かんでいた。僕は初めて、夜を見下ろしていた。全てを優しく包み込む、慈悲深き夜を。
そして僕は、愛に祈りを捧げた。

Chocolate Parfait(Parfait au Chocolat)


東京
Pierre Marcolini Chocolatier ピエール・マルコリーニ
http://www.pierremarcolini.jp/



サダハルもエルメも、偶然に訪れた縁のようなもので、実は最初に目指していたのはこのパフェだった。
『ねぇねぇ、よしながふみの、“愛がなくても喰ってゆけます。”って知ってる? その中に出てくるチョコレートパフェが、超おいしそうなんだけど〜!』
そんな友人の言葉に釣られて、ライブに出掛けるついでに訪ねたってワケさ。
でもその時の僕は、チョコレートよりも生肉の方が似合う男で、渋谷や新宿には出掛けても、銀座なんて地下鉄で素通りするような人間だった。それが何故か、ピエールマルコリーニに向かっていた。思い出すと笑っちゃうよね。
サダハルに迷い込んだ後、なんとか店へと辿り着いた時にはもうチョコレートパフェは売切れで、翌日のお昼に出直した。今度は道に迷わないように、友人に道案内を頼んで。そして念願のチョコレートパフェに会えたんだ。
…銀のスプーンでヒトクチ、ふわっふわのパルフェを食べた瞬間、背中に白い翼が生えて舞い上がった。見たことの無い青空を駆けて、地平線の彼方にある夜の国まで飛んで行き、冷たいチョコレートのアイスクリームを口へと運んだ。そこには星が輝いていた。
三口目の、ヴァニラのアイスクリームとチョコレートソースが溶けていく様は、まるで夢のようだった。だからこそバナナは、優しく見守る三日月に見えて、そこに夜の女神を感じたんだ。
そして僕は、甘いもの好きになった。

今ではこんな、甘いものだけで生きていける人間になっているけれど、それはこんな、
『ありえねえ!!』
出逢いから生まれたのです。冗談のような、本当の話しだよ。

20110307

甘いものはお好きですか? #02


から花弁がこぼれた。僕には君が、春の女神に思えた。
生まれた夢は、白い砂漠で見上げた幻想的な昼間の月のように儚げで、異国の都で見つけた、紅く輝く曰く付きの宝石のように魅力的だった。
そして僕はもう一度、君にキスをした。

Ispahan( Gâteau au Framboise et Litchee à la Rose)


東京
PIERRE HERMÉ PARIS ピエール・エルメ
http://www.pierreherme.co.jp/



サダハルアオキにて、ピエールエルメのイスパハンを教えていただいた。幸い、宿泊予定のホテルは赤坂だったので、ニューオータニは歩いても行ける距離だった。友人のライブは夜だったから、銀座から地下鉄に乗って赤坂見附まで行き、SATSUKIを目指した。
なんだか不思議な気分だったけれど、運ばれてきたイスパハンを目にした瞬間、恋に落ちたと思う。そしてヒトクチで、僕はまた別世界に羽ばたいていた。
ライチは食べたことあったけれど、実はフランボワーズは初めてで、何よりも薔薇の花びらを食べられることが驚きだった。僕はマカロンの不思議な食感と、魅惑的な香りと味の陶酔感に暫し放心し、何か夢か幻を見ていたような感覚に包まれた。
後で調べると、イスパハンとは都市の名前で、アダムがエデンの園を追放された後に住んだ都と言う伝説も残っているそうだ。
だからだろうか、甘美なる喜びの陰に、胸を締め付けられるような淡い切なさと儚さと、少しばかりの罪悪感のようなものを感じていた。薔薇の花弁が落とす影には、見えない茨があるのだろう。それが僕の恋心に絡みついてくる。なんとも美しくも罪深い美味しさだった。

20110306

甘いものはお好きですか? #01


爽と現れた君は、白い一輪の花のように美しく、後ろ姿に静かな笑みを湛えていた。私はただ茫然として佇み、静寂に独り取り残された。
微風にふと気が付くと、凛とした花が落としていった影は柔らかく、その甘い香りを頼りに私は、幽玄なる竹林の奥へと追いかけていったのだ。

Bamboo(Opéra au Thé vert)


東京
pâtisserie Sadaharu AOKI paris サダハル・アオキ
http://www.sadaharuaoki.com/



実はこの店を訪れたのは偶然で、本当にたまたまでした。美しくシンプルな外観に興味をひかれて店内へと入り、薦められがままにバンブーをお願いしました。
抹茶を使ったオペラが珍しいとか、フランスで活躍する日本人パティシエが凄いとか、そんな感想は全く無くて_何しろ、誕生日とバレンタイン以外でお菓子を食べることが無い生活で、1人でケーキを食べるのも、そもそもパティスリやサロンに入ること自体が初めてだったのだから!_ただ、
『こんなものがあったんだ…』
そう呟きました。美しいと美味しい以外に、言葉が浮かばなかったことは憶えています。
…それは確か、5年前(2006年)の5月の出来事でした。

20110305

Le Trèfle à quatre feuilles


福について、貴方の、私の、幸福について、深く考えてみてください。
昨日は幸せでしたか?
今日は幸せだと感じていますか?
明日は幸せが訪れると思いますか?
どこか1つでもNonがあるのなら、このお菓子をひとつ食べてみて。
すべてにOuiと答えられたなら、このお菓子を誰かにプレゼントしてください。
私は祈ります。あなたに幸せが訪れますようにと。

ハートのクッキー(Biscuits de coeur)


京都
Comme Toujours コムトゥジュール



『いつから(そのように)甘いもの好きになったのですか?』
そんな質問を受けることが多いです。そこで、そのキッカケとなったお菓子を、当時を思い出しながら並べてみたいと思います。愛と優しさから遠く離れて生まれ育った私に、その素晴らしさを語ってくれたお菓子たちを。

『甘いものはお好きですか?』

鹿鳴の夢枕


く想いを馳せて、しみじみと野山を眺める。牝鹿の鳴く声を聞いたような気がして、あの人のことを思い出していた。もし、願いが叶うならと、孤悲を募らせて。
それでも陽の光は今日も優しく、あたたかく微笑んでくれていた。もう少し、待ってみようか。

我もしか鳴きてぞ君にこひられし 今こそ声をよそにのみきけ
〜今昔物語

丹波黒豆モンブラン(Mont Blanc au Soja noir )


京都
Comme Toujours コムトゥジュール

20110304

Départ en Voyage


の華やぐ春の日に、夢へと旅立つ君へ贈るよ。
花の香を道標に、瞳に映る星を頼りに、見果てぬ夢の入口の、虹の橋を越えて行け。
羽ばたく羽根を、君は既に持っているのだから。

テントウムシのエクレア(Éclair du L'Printemp)
※店内撮影了承済み


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

20110303

マヨヒガの花


解けを知らせる春の花。陽に笑い、巡り来る春を歌う桃色は、風に香る仙境の花。
降り積もる想いを越えて、逢瀬の桜で会えずとも、来世の桃の樹の下で。
春に咲く花よ、願わくば甘い実りを。

みちとせ(Fleurs de la Peach au Paradis)


京都
嘯月 しょうげつ



蛇足ながら説明をすると、“みちとせ”は三千歳と書きまして、三千年に一度実をつける西王母の桃、不老不死の仙果を表します。
桃の節句の和菓子の1つとして、この桃の花を模した金団(きんとん)をいただきました。
嘯月さんの金団は、花を模した場合は粒餡を用いられることが多いのですが、漉し餡と変わらず瑞々しく繊細で、尚かつ深い喜びと甘さに溢れていました。

20110302

Märchen von Glücks


精の物語が咲いていた。夢に眠る森は甘く微睡んでいて、柔らかな霧が白日夢を連れて来た。
花の歌声に誘われて僕は、物語の中を歩いてゆく。子守唄が道しるべで、昼間の星は天使だった。
童話の扉をノックして、僕はキノコ婦人の家を訪ねた。今日はどんな話しを聞けるのだろうか?

シュバルツヴェルター・キルシュトルテ(Schwarzwälder Kirschtorte)





ドイツ菓子ってなんだろう?
そんな素朴な疑問を与えてくれる、優しさと温もりがあった。もっとも、僕はドイツの事を詳しくは知らないから、物語を紐解くように、一文字一文字を指でなぞりながら追いかけて、ゆっくりとページを繰るように想像してみた。そして其処に、僕の空想を加えてみた。全てを受け入れようと、両手を広げて。
素材使いや組合わせ、技法や表現方法に楽しさを見つける事は簡単だけど、もっと大切なものがある。それは愛情だ。作り手と、受け手側、つまり僕らに必要なものは、信頼なんだ。その先にある愛情を教えてくれるのが、美味しいという事なんだと、僕は考えているんだよね。

20110301

約束のキスを


顔が素敵だったから、天使だと思ったの。君が、僕の天使だと。君の優しさは白く大きな翼で、微笑みは賛美歌のように清らかだった。だからまるで夢のように感じたけれど、手のひらから伝わる君の温もりと、甘いキスの感触が、僕に現実だと教えてくれた。

スペシャル・クラシック・ショコラ(Gâteau au chocolat spécial)