20110130

夢に溺れて


瞼

の裏を、微睡みが満たしていく。瞳を閉じるとそこは、淡い雲の海に浮かぶ王国で、僕たちは門を探していた。真実を開く黄金の鍵も、夢を繫ぐ白銀の鍵も持っているのに、宝石に溢れた王国へと入る為の、天国の門が見つからない。
あぁ、でも良いんだ。僕たちも、この王国も、共に甘い夢へと溺れていくのだから。

プリン・ア・ラ・モード(Le Pudding à la mode)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20110129

椿姫


君

の笑顔は、冬の寒さを忘れさせてくれる。白い雪の冷たさも、ただただ美しく感じられた。
静寂の中で微笑む君の唇に、僕はそっと指先で触れてみる。
その、甘い囁きを知りたくて。

椿(Camélia)





白椿はこし餡で、優しさの中にもどこか凛々しさや潔さが感じられた。そしてこの薄紅色の椿は白餡で、その印象は、麗しくも可憐であった。
柔らかな羽二重は儚いけれど、その余韻は長く香り続ける。初めての、もしくは最後のキスが、忘れられないように。

20110128

夢物語の絹衣


ふ

わり、優しさとともに春をとじこめた。ふりそそぐ光のぬくもりと、まぶしくも見上げた青空に浮かぶ、太陽のやわらかさ。夢に香り、風に匂い、君のとなりで咲く愛しさ。
ふと、夏の足音が聞こえた。閉じ込めた思出は、君との永遠。

クレープ(Crêpes à la crème pâtissière et Griotte)


京都
Point Pour Point ポワン・プール・ポワン
http://www.ppp-kyoto.com/



私が今まで此処に書いてきたお菓子の中で、作り手の顔を知らない、数少ない店の1つがポワンプールポワン。私も、たまにフラリと北山店を訪れる程度だから、きっとそれで良いのだと思う。
店内の可愛い雰囲気は、近くの雑貨店のそれに似ており、北山らしい店の1つだろう。お菓子の香りも味も、雰囲気によく合っている。日本的アレンジは加えられているけれど、どれもがシンプルに作られている。フランス菓子とか洋菓子とか、あまり細かいことは抜きにして、美味しさに素直であることが、最も大切だと私は思う。
何だか少し堅い文章になってしまったけれど、そのシンプルさと素直さが、この店を好きな理由なんだと気付いたのは、この柔らかいクレープだった。

20110127

森の妖精


木

枯らしに吹かれ、夢に迷った森の中で、小さな帽子を見つけた。拾い上げるとそこには小さな妖精がいて、夢の続きへと手招きする。
ハルモニオデオンの旋律の小径を歩いて、僕たちは森の奥へと進んでいった。夢の続きの、温かな眠りの先の物語へと。

モンブラン(Mont-Blanc)


20110126

月想曲


月

の無い夜にさえ、僕らは空を見上げてしまう。太陽では眩しすぎる光も、月の優しい眼差しであれば、僕らも微笑みを返すことが出来る。だからつい、探してしまうのだ。
月の満ち欠けに心動かし惑うこともあるけれど、月に落とす影は僕らの闇で、本当は、どんな時も常に欠ける事の無い満月が、僕らを優しく見守ってくれている。
その慈しみに感謝して、僕はそっと掌を合わせた。

抹茶粟ぜんざい(Awa zenzai = gâteau du millet à la crème d'Azuki et Thé vert)





前回から少し思うところがあり、書き直し(食べ直し)てみました。そして感じたことはやはり、月を探して見上げた空は、いつも慈悲に溢れていると思うのです。
もっと、もっと優しくあれと願います。僕ら日本人に足りないものは、厳しさや勤勉さや反省では無く、優しさと慈しみだと強く感じるのです。
人間の存在理由の最小単位を、家族ではなく個人にしてしまった僕らの誤りは、罪にも思えるほどの痛みと悲しみとして、日常の隣人となってしまいました。それはもう、遥かな昔に。親よりも、祖父母よりも、ずっとずっと昔のことなのです。
人は弱く儚い存在で、個人の失敗により、傷つくこともあるでしょう。それは自業自得かも知れません。原因が事故や事件であるならば、それは不運とよべるでしょう。ツイていなかったと。
しかし、その傷を癒すのを、傷ついた本人に負わせてはいけません。隣人や、友人や、家族や恋人たちが、手を差し伸べるべき事なのです。当たり前のように。
『考えが甘い。ふざけるな。』
そう言ってしまう日本人の罪を、そろそろ認めるべき時だと思います。絶望と諦めの、その先の未来へと進むために。

見上げた東の空には、金色に輝く下弦の月が浮いていた。

20110125

トキハナツ


封

を開けると、様々な想いが蘇った。甘く幸福だった日々の思い出と、浪漫と哀愁。そして少なからぬ後悔も。だがしかし、全てが懐かしく、全ては愛しかった。あらゆるものの全てが、ただ愛しかった。
戻れないならせめて、過去を懐かしもう。楽しい記憶として、酔いつぶれるのも良いだろうさ。

ババ(Baba au rhum)





溺れるほどのラム酒と、夢見るクリームを。
コルク型の、生地の粗いブリオッシュに、たっぷりのラム酒とクレームパティシエール。どこかスパイシーな香りと苦味があり、生地はふわりと甘い。時を越える翼を与えてくれる、静かな感動がある。
伝統菓子を作り続ける価値と意味を、良く考えてみる必要がある。流行に流されて、大切なものを見失わないように。

…小難しいことはあまり書き残したく無いので、小洒落れたワイン(それとコルク栓)の諺でも引用したかったのだけれど、あまり酒を嗜まない私の記憶には、その楽しさに相応しいものが記されていなかった。何か、何か無いものか…なんて悩むフリをしつつ、私はまた、この大好きなババを注文した。
店名が“AU TEMPS PERDU”で、そこでコルク型のババを味わえるなんて、溢れる想い出は、芳醇で甘く愛しいに決まっているじゃないか。

20110124

白兎


冬

毛に変わった白兎が、小春日和に踊っていた。嬉しそうに鼻をひくひくとさせて、太陽の匂いを嗅いでいた。
まだ春は遠いけど、待ち切れなくなった僕たちは、真っ白な雪原を駆け回り、花畑のような足跡を残した。白兎を追いかけて。

キャロットケーキ(Carrot cake)


大阪
BROADHURST'S ブロードハースト
http://www.broadhursts.com/