20110130

夢に溺れて


の裏を、微睡みが満たしていく。瞳を閉じるとそこは、淡い雲の海に浮かぶ王国で、僕たちは門を探していた。真実を開く黄金の鍵も、夢を繫ぐ白銀の鍵も持っているのに、宝石に溢れた王国へと入る為の、天国の門が見つからない。
あぁ、でも良いんだ。僕たちも、この王国も、共に甘い夢へと溺れていくのだから。

プリン・ア・ラ・モード(Le Pudding à la mode)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20110129

椿姫


の笑顔は、冬の寒さを忘れさせてくれる。白い雪の冷たさも、ただただ美しく感じられた。
静寂の中で微笑む君の唇に、僕はそっと指先で触れてみる。
その、甘い囁きを知りたくて。

椿(Camélia)





白椿はこし餡で、優しさの中にもどこか凛々しさや潔さが感じられた。そしてこの薄紅色の椿は白餡で、その印象は、麗しくも可憐であった。
柔らかな羽二重は儚いけれど、その余韻は長く香り続ける。初めての、もしくは最後のキスが、忘れられないように。

20110128

夢物語の絹衣


わり、優しさとともに春をとじこめた。ふりそそぐ光のぬくもりと、まぶしくも見上げた青空に浮かぶ、太陽のやわらかさ。夢に香り、風に匂い、君のとなりで咲く愛しさ。
ふと、夏の足音が聞こえた。閉じ込めた思出は、君との永遠。

クレープ(Crêpes à la crème pâtissière et Griotte)


京都
Point Pour Point ポワン・プール・ポワン
http://www.ppp-kyoto.com/



私が今まで此処に書いてきたお菓子の中で、作り手の顔を知らない、数少ない店の1つがポワンプールポワン。私も、たまにフラリと北山店を訪れる程度だから、きっとそれで良いのだと思う。
店内の可愛い雰囲気は、近くの雑貨店のそれに似ており、北山らしい店の1つだろう。お菓子の香りも味も、雰囲気によく合っている。日本的アレンジは加えられているけれど、どれもがシンプルに作られている。フランス菓子とか洋菓子とか、あまり細かいことは抜きにして、美味しさに素直であることが、最も大切だと私は思う。
何だか少し堅い文章になってしまったけれど、そのシンプルさと素直さが、この店を好きな理由なんだと気付いたのは、この柔らかいクレープだった。

20110127

森の妖精


枯らしに吹かれ、夢に迷った森の中で、小さな帽子を見つけた。拾い上げるとそこには小さな妖精がいて、夢の続きへと手招きする。
ハルモニオデオンの旋律の小径を歩いて、僕たちは森の奥へと進んでいった。夢の続きの、温かな眠りの先の物語へと。

モンブラン(Mont-Blanc)


20110126

月想曲


の無い夜にさえ、僕らは空を見上げてしまう。太陽では眩しすぎる光も、月の優しい眼差しであれば、僕らも微笑みを返すことが出来る。だからつい、探してしまうのだ。
月の満ち欠けに心動かし惑うこともあるけれど、月に落とす影は僕らの闇で、本当は、どんな時も常に欠ける事の無い満月が、僕らを優しく見守ってくれている。
その慈しみに感謝して、僕はそっと掌を合わせた。

抹茶粟ぜんざい(Awa zenzai = gâteau du millet à la crème d'Azuki et Thé vert)





前回から少し思うところがあり、書き直し(食べ直し)てみました。そして感じたことはやはり、月を探して見上げた空は、いつも慈悲に溢れていると思うのです。
もっと、もっと優しくあれと願います。僕ら日本人に足りないものは、厳しさや勤勉さや反省では無く、優しさと慈しみだと強く感じるのです。
人間の存在理由の最小単位を、家族ではなく個人にしてしまった僕らの誤りは、罪にも思えるほどの痛みと悲しみとして、日常の隣人となってしまいました。それはもう、遥かな昔に。親よりも、祖父母よりも、ずっとずっと昔のことなのです。
人は弱く儚い存在で、個人の失敗により、傷つくこともあるでしょう。それは自業自得かも知れません。原因が事故や事件であるならば、それは不運とよべるでしょう。ツイていなかったと。
しかし、その傷を癒すのを、傷ついた本人に負わせてはいけません。隣人や、友人や、家族や恋人たちが、手を差し伸べるべき事なのです。当たり前のように。
『考えが甘い。ふざけるな。』
そう言ってしまう日本人の罪を、そろそろ認めるべき時だと思います。絶望と諦めの、その先の未来へと進むために。

見上げた東の空には、金色に輝く下弦の月が浮いていた。

20110125

トキハナツ


を開けると、様々な想いが蘇った。甘く幸福だった日々の思い出と、浪漫と哀愁。そして少なからぬ後悔も。だがしかし、全てが懐かしく、全ては愛しかった。あらゆるものの全てが、ただ愛しかった。
戻れないならせめて、過去を懐かしもう。楽しい記憶として、酔いつぶれるのも良いだろうさ。

ババ(Baba au rhum)





溺れるほどのラム酒と、夢見るクリームを。
コルク型の、生地の粗いブリオッシュに、たっぷりのラム酒とクレームパティシエール。どこかスパイシーな香りと苦味があり、生地はふわりと甘い。時を越える翼を与えてくれる、静かな感動がある。
伝統菓子を作り続ける価値と意味を、良く考えてみる必要がある。流行に流されて、大切なものを見失わないように。

…小難しいことはあまり書き残したく無いので、小洒落れたワイン(それとコルク栓)の諺でも引用したかったのだけれど、あまり酒を嗜まない私の記憶には、その楽しさに相応しいものが記されていなかった。何か、何か無いものか…なんて悩むフリをしつつ、私はまた、この大好きなババを注文した。
店名が“AU TEMPS PERDU”で、そこでコルク型のババを味わえるなんて、溢れる想い出は、芳醇で甘く愛しいに決まっているじゃないか。

20110124

白兎


毛に変わった白兎が、小春日和に踊っていた。嬉しそうに鼻をひくひくとさせて、太陽の匂いを嗅いでいた。
まだ春は遠いけど、待ち切れなくなった僕たちは、真っ白な雪原を駆け回り、花畑のような足跡を残した。白兎を追いかけて。

キャロットケーキ(Carrot cake)


大阪
BROADHURST'S ブロードハースト
http://www.broadhursts.com/

20110123

Lanterne Magique


のような、きらびやかな魔法を見た。それはシンデレラを迎えに来た、カボチャの馬車。貴女を舞踏会へと誘う魔法。運命の御者は貴女の手をとり迎え入れると、流星の鞭を振るい、馬車を走らせた。森を抜けて銀河を越えて、憧れの城、北極星へと辿り着いた。
さぁ、姫君よ、夢で踊ろう。零時の鐘が鳴るまでの、素晴らしき夜の宴の中で。

カボチャのシュークリーム(Chou à la crème au Potiron)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/



これは全くの偶然なんだけど、この日はとても寒くて、だから僕たちはシトロンへと逃れ、温かい珈琲とシュークリームを頼み、いつものように写真を撮ってみたら…ほら、こんな感じに。まるで魔法だよ。
でもさ、レンズが曇っただけなんて言っても夢が無いじゃない。このシュークリームをカボチャの馬車に見立てて、もう一度夜へと繰り出そうよ。ねぇ、愛しのシンデレラ

20110122

DAYS GO BY


れていく雲を、ただ見上げていた。青空の美しさは変わらないのに、何か切なく感じてしまうのは、私の心が変わってしまったからだろうか?
ゆっくりと、時は流れて。全ては思い出へと変わっていく。雲の彼方のその向こう、空想の果てへと流れ落ちる感情は、やがて甘く香るのだろう。
ふわりと、白い微睡みが咲いては消えて、私はサヨナラと呟いた。

ムラングシャンティ(Meringue Chantilly)


20110121

秘密の果実


く耳元で囁いたのは、天使だったのか、それとも悪魔だったのか。僕らの御先祖様は、この果実によって王冠を失ったけれど、代わりに翼を手に入れたんだ。心と未来にね。
今、また僕の耳元で囁く者がいる。それは妖精なのかも知れないけれど、僕の答えは決まっているよ。
王でもなく、女王でもなく、僕たちは恋人として、甘い果実にキスをした。

ポメ(Pommé)


西宮市
pâtisserie au temple du goût オ・タンプル・デュ・グゥ
http://www.du-gout.com/



ポム(Pomme)ではなくポメ(Pommé)と名付けた理由を考えてみた。名詞と形容詞の違いでは無く、なぜポメと命名したのだろうかと。ただ単純に、小さく可愛い林檎のような形だからかも知れないけれど、もっと詩的で浪漫を感じられそうな理由が欲しくなるほどに、このお菓子は美味しく味わい深かったんだ。
…林檎のような…林檎に似た………そうか、林檎そのもので無く、林檎が意味するものだ。それは恋人たちの果実。どんなに禁じられても、手を出してしまうもの。甘美なる真実と幻想と黄金と約束。
僕たちは愛へ辿り着きたいが為に、恋へと手を伸ばす。その味が甘くても酸っぱくても苦くても、そんなの大した問題じゃないんだ。ただ僕たちは、愛を知りたいだけなんだ。

イメージの世界では、西洋の林檎は東洋の桃に当たるのかも知れないと閃いたけれど、そのまま僕は、深く甘い海へと溺れていった。

20110120

青空の百花


に咲く大輪の花は、光り輝く笑顔をふりまいて、地上をまるで楽園の如く照らしていた。陽光は天使たちが降りてくる階段であり、その温もりは、花が香るように優しかった。
そんな情景が思い浮かぶ甘さと優しさが、この小さな花にも詰まっていた。太陽王は、今日も軽やかに青空を行進していたよ。

ピティヴィエ(pithivier)


大阪
café Weg カフェヴェーク
http://www.cafe-weg.com/



ピティヴィエとガレットデロワの違いはいくつか有るのだけれど、最も簡単な違いと言えば、ピティヴィエは年中作られることなんだ。ガレットデロワは、1月6日の公現祭だけ_最近は、1月中ならいつでも良いみたいになって来たけれど_のもので、金色の王冠を頂き、フェーブを1つ隠し持っているんだ。それを当てた者が、王様もしくは女王様になれるんだよ。
さて、それではピティヴィエなんだけど、こちらは太陽をイメージしたお菓子で、元々はピティヴィエという町で作られていた、名物料理だったそうだよ。ムースだったりプティングだったりパイだったりと様々で、バリエーションに富んでいたようだね。
それが今ではこの、ガレットデロワと区別がつき難いお菓子として落ち着いたのだけど、違いをもう1つだけ書いておこう。ピティビエは、ふっくらと膨らんでいるんだ。だって、青空に輝く太陽をイメージしているのだから。

20110119

Hkuna matata, Cheka! Cheka!


でもが笑顔になる魔法を、ぼくは知っている。教えてあげるよ君に。ほら、スプーンでひとくち食べてみて。…ね?おいしいでしょ?
おいしいは幸せで、そこにはかならず笑顔があるんだよ。

プリン(Crème caramel)





スワヒリ語の分かる友人がいて、彼がケニアにて頻繁に耳にした言葉の1つが“Cheka”だったそうだ。“笑顔”という単語だけど、笑ってよとか、元気出してとか、使い方は色々あって、よく使う言葉であり、笑顔を絶やさない人々を象徴する言葉でもあったと語ってくれた。
ちなみに、タイトルの意味は、
『気にすんなよ、元気出せ(笑っとけ)!』
そんな感じらしい。

笑顔になるお菓子が溢れる店の名前として、最高だと思ったんだ僕は。

20110118

花束を君に


郁たる芳香が、光の中に揺れていた。口付けるたびに花は咲き、吐息の中で華やかに散っていく。その、魅力的な香りだけを残して。
キスを重ねる度ごとに愛しさが増すように、僕は虜になっていく。君の甘い唇に、君の甘い残り香に。

ショコラショー“フローラルスイート”
(Chocolat Chaud “Fleurs très parfumées”)


京都
Chocolat ショコラ



液体の美味しさを撮るのは、私にはまだまだ難しく、どう捉えれば良いのか分かりませんでした。
ただ、この店の本気度と、ショコラショーの美味しさは間違いありません。だって、夏でも3種類のショコラショーが楽しめるのですから。それも、全てカカオが異なるショコラショーなのです。
残念ながら、日本ではまだまだ認知度の低いショコラショー。この店で是非、本気のショコラショーをお試しください。

君の横顔


めく夜空をシェイクして、甘い夢に浮かべてみた。金色の一番星も、銀色の流星も、君の好きな蒼い星々のネックレスも入れて、南十字星で混ぜてみたんだ。
だから聴かせておくれよ僕に。囁くような、月の砂漠の歌を。

コーヒーゼリー(Gelée de café)


20110117

太陽ノ夢


の静かな時間を、何をするでも無く、ただ流れるようにすごした。たゆたうように、微睡むように、優しさに身をゆだねた。
ランプの明かりは睫毛の先に、太陽のカケラを踊らせる。あの日のことを想うたびに僕は、なんだか甘い気分になれるんだ。

クレープシトロン(Crêpe au citron et Glace vanille )


20110116

オヤスミ


の女神は、闇を優しく抱きしめた。朧な影たちは安らぎの中で眠りに就き、夢の雲は星の海を流れていく。踊る月影は微笑んで、僕たちの額にキスをした。
Bonne nuit, et fais de beaux rêves!
楽しい夜を。良い夢を。

ショコラ・グランマニエ(Gâteau chocolat et Chantilly au Grand Marnier)


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/

20110115

花正月


寿

ぎの華やぎに、めでたき紅白の饅頭と、愛らしき花餅を。1年の実りと祈りを、幸多からんと願い姫御子に捧ぐ。
真白な雪を見下ろす青空も、この花のお陰で心なしか香るようだ。店を後にして、昼の静かな祇園を歩いていたら、そよ風に柳の葉が散っていた。手を振るように、旅立つように。

餅花(Meilleurs Vœux!)


20110114

永遠なる夢幻


幻の見えない輪郭を、感覚を頼りに撫でる。心の指先でなぞった円は、儚い永遠。夢際に月を見つけ、微睡みに満月を追いかけた。
君の永遠。僕の刹那。遥か彼方の隣人に、背中合わせの挨拶を。
遠くで春が、鳴いていた。

抹茶ぜんざい(Zenzai au macha)


大阪
菓匠 日月餅 にちげつもち
http://nichigetsumochi.jp/



椀に盛られた小豆と、ころんと丸い、炙った餅が2つ。それから抹茶。シンプルなそれぞれが導くひとときは、永遠にも感じる微睡みと至福。それは刹那の出来事だけど、僕を世界の果てへと連れて行ってくれる。…世界の果て?いや、この小さなお椀の中の、幸福へ。
『善哉(よきかな)』
その一言へと辿り着いた。

20110113

冬の木漏れ日


ガラスを通して落ちる光は、まるで春の木漏れ日のようにやわらかく、冬の窓辺にあたたかい笑顔をもたらしてくれた。一瞬の空想は儚くとも、淡い君の微笑みは永遠に、僕の心を照らしてくれる。この陽光のようにさ。

レモンのタルト(Tarte au Citron)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110112

La Joconde


笑みをもっと、笑顔をもっと眺めたくて、私は貴女へと近付いた。薄衣の柔らかな感触や、静かな吐息を知ってもまだ、貴女の微笑みには近付けないでいる私は、やはり不粋なのだろうか。それともただ、愛に臆病なだけなのか。
オペラの夜に輝く金色は、天使であり、願いを叶える星でもある。ならば私が願うのは、唯一つだけ。貴女の幸せだけなのです。

オペラ(Opéra)


京都
Atelier La Page Blanche アトリエ・ラ・パージュブランシュ
http://www.alpb.jp//



僕は知らなかったのだけれど、オペラというお菓子には細かな定義があって、高さまでもが正確に決められているそうだ。そう言えば、去年のS.D.Cで聞いたような気もする。
そこでふと気になって、このオペラを作られたチエさんに尋ねてみた。
『オペラを作るとき、何をイメージされましたか?』
決まり事以外で、作り手が表現出来るものとは何だろうかと思っただけの、曖昧な僕の質問に、彼女は明確に答えてくれた。
『美味しいジョコンドを作りたかったの。』
つまり、もっと微笑みが欲しかったのだと聞いて、僕はとても納得出来た。何故ならこの美しいオペラには、微笑みが静かに溢れていたからだ。

20110111

春の夢


を見た。またあの夢だ。雪の降るような寒い日に何故か、春の香りを思い出していた。咲き誇る笑顔と、眩しい笑い声。やわらかな陽光と、頬を撫でるそよ風。
夢だとは分かっていても、春の幻に遊べるのであれば、僕は何度でも蝶になろう。

イチゴのショートケーキ(Gâteau aux Fraises)


京都
Point Pour Point ポワン・プール・ポワン
http://www.ppp-kyoto.com/

20110110

Humpty Dumpty?


年は頭が良いようだ。高い塀の上では無く、なだらかな丘の、柔らかな芝生の上に座っていた。
いや、実は少女かも知れないけれど、鼻歌を歌ったりなんかして、青空に舞う蝶を目で追いかけていた。何でも、ここらは紋白蝶ばかりだけれど、紋黄蝶を見つけた日はラッキーなんだそうな。
…困ったな、先ほどから僕のスプーンが、空中で空回りをしているよ。僕も蝶を探してみようかな。

フランボワーズのレアチーズケーキ(mousse de fromage blanc aux framboises)


大阪
CAFE 太陽ノ塔 GARDEN たいようのとう
http://www.taiyounotou.com/
大阪市西区新町1丁目2-13 新町ビル104号

ULTRA JAM ウルトラジャム
http://www.taiyounotou.com/ultrajam/
大阪市北区中崎西2-6-3 パステル1101号

20110109

金のスプーン


福という言葉があって、それは造語かも知れないけれど、僕はかなり気に入っているんだ。美味しいものを口にした時は、誰でもが幸福を感じられるだろう?
そのヒトクチを運ぶスプーンは、(それが何色であっても)僕には黄金色に輝いて見えるから、まるで月や太陽や、とても大きな星が運んでくれたような気がして、優しい気分になるんだよ。
それがトキメキや空想であり、ここに書いてあるものの正体なんだ。

かぼちゃのプリン(pumpkin pudding)


京都
きさら堂 きさらどう
http://www.ne.jp/asahi/cafe/kisarado/



本を開きたくなるような空間、と言えば納得されるかも知れない雰囲気の店。もしかすると、時が止まったように感じる事もあるから、栞に似ているのかも知れないね。
だとするならば、ここで過した時間や、君とのお喋りの内容は、今日というページ_あるいは、段落や章だろうか?_に書かれたものと言えないだろうか?
壁は小さな個展スペースになっていて、ふと目が合った時の気持は、珈琲や食事や、吐息や瞬きに、少しだけ香りを添えてくれるんだ。
…ねぇ、何処にでも有るものなのに、僕たちはついウッカリと、幸せなんて大層なものを探そうとしてしまう。こんな小さなスプーンの上や、僕と君との間にもあるものなのにさ。

20110108

ミカヅキ


月の夜。女王の眠る空は青く、星の輝く様はまるで、ゆらめく海の底に似ていた。あの深い瑠璃色は、月の夢なのだろうか?それとも静かな慈悲であろうか?
見えない姿を想えばこそ、夢の吐息に月明かりが香る。密やかに、囁くように。
愛しい君の、睫毛の先の溜息に、僕はそっとキスをした。おやすみ。眠る月夜の姫君よ。

ガトーショコラ(Gâteau au chocolat)


京都
逃現郷 とうげんきょう



気付けば其処に、ずっと前から存在していたかのようなノスタルジーを感じつつ、住み慣れた街の片隅の、気のおけないカフェに僕は入り浸っていた。
訪れるといつも銀色の猫が居て、知っている顔も何人か寛いでいたりす。マスターは相変わらず飄々としているけれど、いつもと変わらない安心と雰囲気が、今日もそっと待ってくれていた。
そうそう、店の名前は逃現郷という。それは桃源郷を捩ったものであろうと想像出来るけれど、此処は仙境や隠れ里といった別世界などでは無い。残念ながらね(苦笑)
セピア色の木漏れ日や、ひだまりのような…いや、違う。銀さん(猫の名前)があくびをしていたからそう思ったが、ちょっと違う。そうだな、うん。道草だ。道草を楽しめる場所なのだ此処は。
店の向かいは小学校で、下校時には元気な子供達の姿が見える。そんな日常を眺めつつ、僕たち大人は、こんな場所で人生の道草を楽しんでいるんだ。君たちが、ちょっと背伸びをしたら覗ける場所で、珈琲を片手にね。

20110107

金色の魚


は告げる。神秘の夜に、希望の朝を。白く降り積もる雪の中、高く深い空を見上げ、遠い天国へと祈りを捧げた。空に咲く白い花は、天使の羽根。囁く星々は、天上の音楽。夜に聖歌が降りそそぐ。空の果てと深海の底を結び、私たちは厳かに、静かなミサを始めた。世界樹は輝き、夜空には巨大な魚が泳いでいた。
幼子の手のひらに福音を。頭上には王冠を。我等の進む暗闇の先に、希望という名の光をお与えください。

聖夜(Holy night)


20110106

孤高のメルヘン


は湖に黄金を溶かし、神々の黄昏を夢見た。ワーグナーが奏でる神話をその眼で見んとして、現世の瞼を閉じられた。
その青く清冽なる血に咲く薔薇は、王の夢想。ならば見られよ、香り豊かな終末を。最後の太陽と、愛しき日々の残照を。

クレープシュゼット(Crêpe Suzette)





愛しいghostのケーキが楽しめなくなるかも知れないと聞いたのは、確か夏の初め頃だった。まだ、梅雨の最中だったかも知れない。その不確かな噂はやがて現実となり、戸惑うより早く秋が来て、夢見るうちに冬は訪れ、静かに別れの日がやって来た。夜空の流星が微睡みの彼方に消えるように、音も無く、ただ光の軌跡を残して消え去った。ghostらしい幕切れだった。
別れの日が告げられた時、私はあと何回通えるのだろうかと数えたりしたのだけれど、ふと思い止まった。
『果たしてこれは、別れであろうか?』
永遠と絶対を知ることの無い私達は、幸いにして、幾度かの巡り合わせや、不可思議な縁による螺旋を踊ることがある。そう考えた刹那、遥か彼方の黄昏に、新しい幕が上がるのを感じた。だからサヨナラを告げること無く、私は再会までの夜を歩き続けよう。未来に希望と祝福を祈りながら、この暗闇を愛していこう。

20110105

夜空のウィークエンド


の空(うつほ)、虚空の水面の飛石を、軽やかに跳ねる天女の波紋。飛沫は星に、細波が描く光輪は星座へと変わり、僕らの夜空に煌めいた。そう、ゆっくりと黄昏に、夜は静かに舞い降りる。
瞼の裏に、空想を。夢見る前の静寂に、泡沫の物語を綴ろうか。

ショコラ・カラメル・サレ(Chocolat caramel sale)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110104

Ivre d'amour


雪舞う窓から、澄み渡る夜を見上げては、徳利を傾ける。ゆれるお猪口の中では、綺麗な星が踊っていた。
微睡みの中に月を待てども昇らず。指先の水鏡を飲み干してはまた見上げ、甘い溜息をつく。宵待ちの君よ、新月の夜くらい、会いに来てくれても良いものをと。

大吟醸 酒粕のソルベ(Crème glacée au sake)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20110103

暁の鈴慕


寿

ぎの空に響き渡る、音無き金色が、朝日とともに降り注ぐ。闇をあまねく照らす慶びの鈴の音は、雲間を飛ぶ鶴の羽ばたきと共に、白銀の世界へと降り積もる。
当たり前の今日を、素晴らしき1日に。舞い降りた奇跡に、感謝と祝福を。

丹頂(Grue du Japon)


20110102

雪兎を追いかけて


よりも白く清らかな心で、満月に跳ねるよ白兎。
薄紅色の足跡を残して、空を駆けるウサギが導く明日には、どんな未来が待っているのだろうか?
ねぇ、教えてよ私に。

白兎(Lapin blanc)





アリスのお茶会をイメージしたクリスマスケーキの前に、ちょっと小洒落たお菓子が欲しいと思い、聚洸さんにお願いして作っていただいたのがコレ。羽二重の雪兎。
アリスを導く白兎をイメージしたのだけれど、喜んでもらえただろうか?
メレンゲを混ぜた羽二重餅は、淡雪のように儚くて、ピンクに染められた白小豆のこし餡は、少女の吐息の様に感じられると同時に、瑞雲を象った豆皿に乗った姿は、月に住むウサギのようにも思えたんだ。
はたして、追いかけたのはアリスだろうか?それとも兎?またはその幻を想像した、僕自身だったのだろうか?

20110101

あけましておめでとうございます


B

onne Année !
Que cette année 2011 soit sensationnelle !
Je suis content de te voir heureux.

お鏡マカロン(Kagamimochi de Macaron)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

夜明け前


陽の気配。明日の息吹。まだ明けぬ漆黒を、迫り来る黄金が瑠璃色へと変えていく。星々が消えた重く冷たい暗闇は、ぬばたまの潤いを取り戻す。
昨日に帰れないのであれば、今日は優しくあろうと曙に誓う。それがやがて、愛しい思い出になると思うから。

黄味しぐれ(aube)


京都
御菓子司 親玉堂
京都市北区小山上花ノ木町26



近所の和菓子屋。たまに思い出す、あんこの甘さ。小さなどら焼きや大福、かのこ等が好きだった。栗も素朴で、美味しかったことを憶えている。
残念ながら、旧年の大晦日をもって店を閉められて、もうあの素朴さには会えなくなった。美味しい店が、また1つ無くなったのだ。
美味しいものが好きな人でさえ、手軽さや便利さや安さを求める。それを悪とは言わないけれど、せめて近所のお気に入りと、優しさだけは大切にしてもらいたいと、願わずにはいられない。親玉堂が、“しんぎょくどう”だったのか“おやだまどう”であったのかも知らないままである私自身に対し、自戒の意を込めて。

まだ遠い朝日を想像しつつ鳥居をくぐり、そっとお祈りをした。甘い日々と、優しさに包まれた生活を願って。
今年は、どんな1年になるのだろうか。