20101231

ゆく年くる年


の瀬の、寄せては返す徒然は、無常の静寂に輝く泡沫(うたかた)。心静かに耳を澄ませば、暗闇に浮かぶ小さき舟が見えるだろう。
流れ着くあても無く、ただ僕たちは流されて、微睡みに明日の夢を咲かせていく。それが未来だと信じて。
見えない時を、刻める心があるならそれで、僕は構わないよと嘯いた。

ゆく年くる年(Tigre et Lapin)





去年までは長久堂さんとのコラボであった、季節の和菓子。今回から、亀屋良長さんとのコラボに変わりました。何が出てくるか、どんな景色を見せてくださるのか、楽しみでなりません。
さて、色々とあった本年も、今日で終り。残念ながらいくつかのお店が無くなり、同じくらいの新しいお店と出会った年でした。不思議な縁でフランスへ渡ることもあり、個人的には楽しい1年であったと思います。
京の徒然 いとお菓子
来年も、よろしくお願いします。良いお年を!

20101230

此処に祈りを


しい食卓の、最後の一切れ。クリスマスまで繰り返される、祈りと感謝の日々。今日の楽しさと温もりに、明日の希望と輝きに、甘い祝福を捧げよう。
汚れなき純白の雪に似た、白き衣に包まれた御子。幼子を愛する聖母の慈悲と、祝福する天使たちの歌声を想いながら、夜の眠りに就こう。優しい夢を、見るために。

シュトレン(Stollen)


神戸
フロイン堂 ふろいんどう
http://www.geocities.jp/koapin1225/huroindou.html



去年、20種類程のシュトレンを食べ比べて、最も僕の好みであったものを、今年はじっくりといただくことにした。
仄かに、しかし華やかに咲く様々な薫りと、しっとりと夢に沈んでいく感覚は、最も祈りに似ていると感じたから、僕はフロイン堂のシュトレンを好きになったと思うんだ。
ちなみに、下のラベルにはいくつか並べてみたけれど、実際のところ、それらが入っているのかどうかは定かでは無い。更に言えば、ベリーのような可憐さや、うっとりとする淑やかさ、そしてなんとも表現し難い優しさのようなものが、ぎっしりと詰まっていた。夜食の後の、家族の語らいには最適かも知れない美味しさだ。
さて、徐々に日本にも浸透してきたシュトレン。本来は、クリスマスまでのアドベントの期間に、夜の祈りとして、一切れずつ食べるそうだ。
文化的食育的背景どころか、信仰心も、家族という単位すらも失った僕たちは、軽くペロリと平らげてしまう。だって、美味しいからね。
これを不信心と呼ばれるならせめて、僕は甘い言葉と祈りを此処に残そう。喜びと感謝と、ごちそうさまとともに。

20101229

陽光に咲く


り来る春の陽に、咲き誇るを夢見て眠る、紅色の花。降り積もる雪が美しいのは、その下に春が眠っているからだと、ささめく北風が教えてくれた。
おやすみ。暖かな夢たちよ。

冬籠(Rêves d'hiver)


京都
虎屋 とらや
http://www.toraya-group.co.jp/

20101228

夢の中


の見えない夜、闇に抱かれた森の中を、影と共に歩いた。星明かりに照らされた空は美しく、銀河の煌めきが水晶の歌のように響いていた。
地図に無い小径の先で、妖精に教えてもらった場所へと辿り着いた僕は、そこで美しい花と出逢った。青い光の中に佇む君の、幻の記憶という花に。

フォレノワール(Forêt noire)


大阪
Pâtisserie quai montebello ケ・モンテベロ
http://www.quaimontebello.com/

20101227

お菓子の国のアリス


よりも甘く、恋よりもときめいて、溺れるように飛び込んだ。溢れる香りの中へ。
甘いだけでいいじゃない。幸せになりたいの。
夢よりも儚くて、虹よりも綺麗なもの。希望が咲くこの国へ、花の翼で羽ばたいて行くの。
すべての願いが叶う、真実の夢の国へと。

ストロベリーランド(Strawberry land)


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

※店内写真撮影了承済みです



クリスマスイヴはのんびり過そうと考えていたけれど、
『私を楽しませなさい!』
その一言で僕は、アリスを導く白兎になってみた。…いや、お茶会だから、帽子屋だろうか?
とにかく、その日には夢のあるケーキが必要なので、お気に入りのお店にお願いして、素敵な_そして巨大な!_ショートケーキを注文したの。
『いかがかな? お気に召していただけただろうか?』
なんて格好つけてみたけれど、実は僕の方が喜んでいたりするんだ。
ちなみにコレ、10inchのホールケーキに等しい量はあるんだよ(笑)

20101226

Good Night


に舞う粉雪を、白い窓から眺めていた。夜の雪は、祈りと同じく白く降り積もり、虚空の星々の光を集め、淡く暗闇を照らしていた。
名も知れぬ誰かの、凍えてしまった祈りを集めて、僕はそっと月の元へと返した。世界が平和でありますようにと、最後の1切れに願いを込めて。

クリスマス・プディング(Christmas pudding)


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/

20101225

Stille Nacht


を照らす灯火は、月の光と星の祈り。それが私達の全てであり、救いであった。
聖なる夜に、感謝と祝福を。静かな、小さき祈りを此処に。

Silent night, holy night.
Son of God love's pure light.
Radiant beams from Thy holy face
With dawn of redeeming grace,
Jesus Lord, at Thy birth.
Jesus Lord, at Thy birth.

ツリー(Christmas Tree)


20101224

夜に咲くルビー


しい夜に、紅い微笑みが咲いた。満月が過ぎ去るように、君はゆっくりと瞳を閉じていく。
朧げな会話の後の微睡。ねぇ、お願い。甘い夜を引寄せて、聖なる夜を抱きしめて。

木苺とショコラのタルト(Tarte Chocolat Framboise)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20101223

冬の星座


空に白く、君の吐息輝いて、小さな小さな星が生まれた。
僕らが交わす言葉や、溜息すらも、金や銀の星々を生む。その星と星を繫ぎ、2人の星座を描こう。家路を照らす、物語と共に。

スフレ・チーズケーキ(Souffle cheese cake)


20101222

Where is the moon?


を探して見上げた空は、厚い雲に覆われていて、僕らが嘆くよりも早く、さめざめと雨が降り始めた。
月が欠けるのは、僕らが幻想に落とした影に他ならず、遠い雲と闇の彼方にはいつも、美しく輝く真実の月が佇んでいる。
それでも今宵、夜空に月を求めた僕は、ここにその姿を映して楽しんだ。

抹茶粟ぜんざい(Le zenzai à la crème mâcha d'azuki)


京都
月ヶ瀬 つきがせ
http://www.tsukigase.jp/

20101221

La vie solitaire


面に落ちた白椿が、静寂に波紋を描く。広がり、儚く消えゆく無音は、満月の調べに似ていた。その甘い香りに魅せられて集う鯉たちの鱗は、僕には夢に散る花びらのように思えた。
見上げた空に居なくても、僕はいつも君を想うよ。

椿(camélia)



20101220

happy birthday to all


つの愛を、ここに灯そう。
今までと、これからと、アナタが生まれた聖なる日に、甘くきらめく感謝と祈りを。
happy birthday to you.
名も知らぬ、今日が誕生日のすべての人へ、限りない祝福を。
平和を願い、僕は毎日、誕生日を祝うんだ。

苺のショートケーキ&キャンドル・クッキー
(Gâteau aux Fraises & Sablé)


20101219

Cendrillon


しき人よ、魔法をかけてあげよう。君が、君自身の美しさに気付けるように、月と、銀の鏡の力を借りて、零時の魔法をかけてあげよう。
さあ、姫君よ、ゆっくりと目を開けて。そして探すんだ。君だけの王子を。この魔法が解けないうちに。
…自信を持って。君がいるから、王子は王子でいられるのだから。

ルリジューズ(Religieuse)


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

※店内写真撮影了承済みです

20101218

3時のおやつ


C

'est l'heure du goûter.
美味しいってなんだろう?
ころころと笑う君を思い出しながら、たまには1人で3時のおやつを。
…うん、間違ってもそれは、舌の上だけで踊らせるものじゃないよね。美味しいと楽しいは。

シュークリーム(Chou à la crème)


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/

20101217

カラメルの想い出


空を染めていく、琥珀色の想い出たち。淡い記憶に埋もれていく僕たちは、君が誰だったかも忘れてしまう黄昏。
ふと薫る閃きが、心の闇に咲く。それが夜空の星になるから、僕たちは夢見ることが出来るんだ。甘い想い出とともに。

ポワール・キャラメル(Poire au caramel)


京都
AU TEMPS PERDU オ・タン・ペルデュ
http://www.bellecour.co.jp/

20101216

さよならのあと


角に佇んでいた秋は去り、低い空には冬が、朧な風景と戯れていた。優しかった晩秋の残り香は、冷たく透明な冬の光へと溶け、ゆっくりと消えていく。
それでもたまに思い出すのは、まだ君の温もりを愛しく想えるからだろう。もう、夢の中でしか逢えないけれど。

モンブラン(Mont Blanc)


京都
Atelier La Page Blanche アトリエ・ラ・パージュブランシュ
http://www.alpb.jp//

20101215

the White rabbit


のはじまりに待ちくたびれて、君に出逢ったあの日まで、僕は居眠りをしていたの。
時間が無い、遅れちゃう!
なんて嘘さ。驚いて飛び起きた無様さに、照れていただけだよ。時間なんてたっぷりとあるのだから。
…もっとも、君に恋してからは、立ち止まっている暇なんて無いのは本当だよ。
この恋は、さらに甘くなっていくんだ。

アリスのショートケーキ(Gâteau d'Alice)


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

※店内写真撮影了承済みです

20101214

What you waiting for?


P

lease, kiss me again...
あなたのキスで氷は溶けて、眠っていた時間は、再び鼓動を始めるの。花咲くような、甘い香り。雪よりも淡くて温かく、星よりも遠く煌めくもの。逆さのハートを抱えて、白兎が走り出したわ。
えぇ、夢なんかじゃないのよ、私の恋は。

アリスのショートケーキ(Gâteau d'Alice)


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

※店内写真撮影了承済みです

20101213

La plume du cygne


空に咲く天華はふわりと芳しく、風にちぎれて舞う花びらは、まるで白鳥の羽根のようだった。
広げた手のひらに舞い降りて、溶けていく淡雪。不思議と冷たさを感じる事は無く、むしろ温かく思えた。夢のような幻に、僕は迷い込んでしまいそうだ。
風に舞う花の中に君を見つけ、僕は優しく抱きしめる。この日、冬は静かに舞い降りた。

ガトー・マロン(Gâteau au Marron)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20101212

Dream Afterglow


の余韻が、煌めく吐息に香る。僕達は、想い出と呼ばれる欠片を探し、残り少ない時間の中で拾い集めた。
淡く儚い眼差しと、ゆっくりと離れていく指先。ねぇ、お願いが1つだけ。最後に、別れのキスを、唇に。

Mousse au Champagne(ムース・オ・シャンパーニュ)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20101211

陽だまり


を集め、祈るように微睡む君は、ひだまりに咲く黄金の夢。やさしい想いが、窓辺に溢れていた。
君の暖かな眼差しが眩しくて、嬉しくて、ぼくは眼を細めて微笑む。2人の夢が、光の中で手を繫いだ。

KINAKO(きなこ)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20101210

see you on the moon


で逢いましょう。夜空を見上げて君は、悪戯な笑顔で囁いた。
月の渚、夜の向こう側で僕達は、誰も知らない夢を見る。
2人だけの星空に、2人だけの星座を描いて。

ティラミス(Tiramisu)


京都
菓子 cheka チェカ



動物園の北側、法勝寺町にある洋菓子店で、2Fはカフェになっている。その素敵な雰囲気の店内や、美味しいお菓子の数々(そして器たち)は、君に実際に見てもらうとしよう。明日にでも、散歩がてら出掛けてごらんよ。
冬の19時。閉店後に外へ出るともう真っ暗で、壁の向こう側では動物達がお喋りをしていた。見上げると綺麗な星々が輝いており、西の空には細い月が浮かんでいる。それはまるで、夜の世界へと沈んでしまった太陽を追いかける、妖精の舟みたいに優しく光っていた。
…追いかける?
いやきっと、太陽が待たされているんだ。優しい月の女神にね

20101209

diablillo


は可愛い小悪魔。妖艶では無いけれど、何故か僕を魅了する。祈りは届かないし、願いは聞き入れられない。でも、同じ夢を見てくれる。
冬の夜に寄り添う黒猫のような、悪戯なショコラ。目醒めるシェリーか、夢見るホットワインか。あなたはどちらを選ぶのだろうか?

ガトーショコラ(Gâteau au chocolat)


京都
Bar Picos バル・ピコス
http://www.barpicos.com/

20101208

Il être dans la lune


人達はラファエルの祝福を受ける。1つの誘惑と2つの選択の後に訪れる、小さな楽園。2人だけの天国。新たなる、ヘルメスとの誓い。この恋に、白い翼と約束を。
two of cups
2つの杯を1つの愛で満たす喜びは、甘いショコラの夢のように。

…それでも僕はうわのそらで、君の笑顔と、甘いひとときを楽しんでいた。その記憶は、昼間の白い満月のように儚げで、誰も知らない花のように美しかった。

コース仕立てのアシエット・デセール
 2つのショコラショー(Chocolat Chaud, Lait & Noisette)


京都
SALON DE THÉ AU GRENIER D'OR オ・グルニエ・ドール

20101207

SANCTUS


なるかな、聖なるかな、聖なるかな。
三位一体のアリアにしてアンサンブル。合わせた手のひらは一対の翼であり、君はいと高きところの天使。この素晴らしき詩に、賛美と祝福を。あなたの優しさと祈りに、愛の香りと奇跡を。

サンミシェル(Saint Michel)


京都
pâtisserie Tendresse タンドレス
http://kyotocake.com/

20101206

花の葬列


花繚乱の海へと溺れるように
深く甘い闇へと花葬された
腐敗することの無い我が軀を
美しき花々が浸食していく
目覚めることの無い夢を
薫り続ける永遠を。

…天国へ行くには死が必要だが、夢を見るのに眠る必要は無い。

トロワリビエール(Trois Rivieres)
 & ロンサカパXO(Ron Zacapa XO)


20101205

山吹の夢路


れゆく茜の静けさに、笹鳴きの声が木霊する。落ちていく太陽は最後の黄金を投げ、山々を照らした。一瞬、光り輝く春の幻を見たような気がしたが、あれは狐の仕業だろうか?
落葉の下で、眠りゆく大地は静かに薫る。鶯の詩が聴こえる日まで。

きなこ


京都
今西軒 いまにしけん

20101204

小春日和


風にも凛とした、庭の南天が美しかった。
束の間の青空。雪に映える赤い実は、まるで兎の眼のようで、ならばこの尖った葉は、兎の耳であろうか。
白い吐息の君の指先を、そっととって手を握ると、君はほのかに頬を染めた。

師走“南天”


20101203

月と狂言師


G

ive me shadow, put on my crown.
夜の夢幻に闇を積重ねて、仄暗い光へと辿り着く。漆黒に光を纏い、月へと昇天する我は、失われた太陽の温もりを知る。
眼差しに光を、吐息に闇を。訪れた永遠に、まだ誰も知らぬ、最後の花を捧げよう。

生チョコレート大福


大阪
菓匠 日月餅 にちげつもち
http://nichigetsumochi.jp/

20101202

銀の朝に


待月の空は澄み渡っており、昨夜の月も、穏やかなる水面に遊ぶように浮いていた。夜であれ闇であれ、晴れておれば心地良いものだ。
戯れの後、眠れぬ夜は明けて、秋の名残に霜降る朝。それでも僕は、まだその美しさに魅かれている。君の優しさと、重ねた季節の温もりに。
見上げれば、西の空の果てへと、金色の月が沈んでいく。君の夢に、僕の半身を残して。

銀杏餅



20101201

月のエトワール


い夜の幻か、朧に目覚めた暁に、月の残り香を発見して、遠く煌めく錦を眺めていた。
薄暗い紫の闇に吐く息は白く、凍てついた星が零れるようだ。
あぁ、そうか。それで月の香りを感じたのだ。あの初霜に、月の吐息に。

落葉の霜


京都
嘯月 しょうげつ

京都
sione シオネ
http://si-o-ne.jp/

京都
Mesda nu kyad メスダヌキヤド
http://www.kyad.jp/

20101130

Réveiller dans la nuit


J

e garderai un bon souvenir de mon séjour en France.
帰国して一ヶ月が過ぎた。その間に季節は色を変え、艶やかな秋はもう終りを告げようとしている。
昼に夜に、様々なこと_正確に言えば、それは1つのものに集約される_を考え、嘆き、悩んでいるけれど、時も、風も、止まりはしない。流れ続けているのだ。
僕に出来る事は少ないが、それをやらなければならない。だから友よ、協力しておくれ。この無力な僕に。

それぞれの花


が美しいのは、何故だろうか?
その答えは簡単。花は花故に美しいのだ。
たとえ誰に知られずとも、花は美しく咲き、美しく散っていく。
それ故に僕達は、花を美しいと感じるのだ。

Tarte Linzer


京都
SALON DE THÉ AU GRENIER D'OR オ・グルニエ・ドール



帰国して、最初に確かめたかったことは、このリンツァー。僕の中で、フランスと京都を繫いでくれたのは、このタルトだと思うんだ。
サロメちゃんが美味しと言ったリンツァーをいただきながら、色々と考えた。日本のこと、フランスのこと、お菓子のこと、文化や歴史のetc.
…もっと長く、例えば数年間フランスで暮らしたら、今の悩みの答えは得られたのだろうか?
Non, non.
そんなに簡単じゃない。でも、悩みの先へと進むなら、答えには近づけるさきっと。だからそろそろ歩き出そう。その先へ、綺麗な薔薇が咲く、茨の道の、その先へ。

そうそう、リンツァーなんだけど、フェルベールさんのリンツァーには母の優しさがあって、グルニエドールのリンツァーには、季節を眺める日本人の心があると感じたよ。個人的な、僕の感想なんだけどね。
どちらが好きかなんて決める必要が無いのは、花の美しさにたとえると理解してもらえるだろうか?

優しい夜


夜に眠る幽玄を。月影の黄金と、真実の夜を。
罪深き僕に、教えてくれないか。
夢から醒めた、夢の続きを。

かぼちゃのブリュレ・温かいりんご添え
 &シェリー酒
Crème brûlée au potiron et Pommes flambé
Sherry(Valdespino Inocente)


京都
遊形 サロン・ド・テ ゆうけい



the Power of solitudes
孤独は悲しさとイコールでは無いし、優しさから遠い場所にあるものでも無い。もし、そう感じるのならば、それは貴方の心の弱さだ。
うつむいていないで、顔をあげて月を見て。
寂しさのすぐそばに、あたたかい優しさがあることを、僕たちはつい忘れがちだ。

俵屋旅館の南にある、遊形サロン・ド・テ。秋にはかぼちゃのブリュレがあって、これがとても優しく美味しい。
このブリュレを、関谷江里さんは金屏風のようだと表現された。シルエットも、能における意味的にも、これ以上の表現は無いと感動したのを憶えている。
僕はまだまだ辿り着けないので、宵闇と、お酒のチカラを借りてみた。…花の香の先、幻想の夜道で出会ったのは、ボードレールとドビュッシーだった。




Nous aurons des lits pleins d'odeurs légères,
Des divans profonds comme des tombeaux,
Et d'étranges fleurs sur des étagères,
Ecloses pour nous sous des cieux plus beaux.

Usant à l'envi leurs chaleurs dernières,
Nos deux coeurs seront deux vastes flambeaux,
Qui réfléchiront leurs doubles lumières
Dans nos deux esprits, ces miroirs jumeaux.

Un soir fait de rose et de bleu mystique,
Nous échangerons un éclair unique,
Comme un long sanglot, tout chargé d'adieux;

Et plus tard un Ange, entr'ouvrant les portes,
Viendra ranimer, fidèle et joyeux,
Les miroirs ternis et les flammes mortes.

STAR WALKER


B

elle nuit étoilée.
グラスを傾けると、漆黒のテーブルに星空が咲いた。うっとりと眺めるようにして、銀のナイフを入れると、輝く流れ星が闇を駆け抜けていった。何かを願う間も無いほどに、美しい夜だった。
さぁ、僕達の月と踊ろう。星と共に、銀河のステップで。

BLACK BUSH


京都
gion ghost ギオン・ゴースト



京都へと戻り、旅の疲れも抜けた頃、友人達と集まった。特に意味も無く、ただ何となく、毎月のように集まっている。今回は、祇園のghostにお願いして、様々なお酒とケーキのマリアージュを楽しんでみた。なかなか楽しい発見があり、皆も喜んでくれたと思う。
集まりは不定期で、誰からとも無く希望が出るから、それをまとめて場所と日時を決める。だから毎回、集う面々は異なるけれど、なんだか気が合う者達ばかりで、実はとても感謝している。何故なら僕が、とても安心出来る人達だから。
そうだな…例えば、夜空に輝く星座は、人間が想像した物語に過ぎず、実は隣り合ってもいなければ、近い者同志でも無い。光の速度ですらももどかしい程に、遠く遠く離れているんだ。
孤独な星と星を結びつけるのは、愚かで幼い僕達の、ただの幻想だ。でもそれが、とても美しい物語を描くのは、決して幻なんかじゃないんだよ。
特に、こんな美しい夜にはね。

20101129

Quand Même


く稜線を眺める。鮮やかなルージュ。葡萄色の空の境界線を、ロマン派の詩人たちが通り過ぎていく。
甘いそよ風の先に、歌声が咲いていた。銀嶺に立つ、サラ・ベルナール(Sarah Bernhardt)の美しさ。孤高では無く、高嶺に咲く麗しき花よ。

モンカレ(Mont-Carré)


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/



フランス菓子の甘い残り香も、僕の服に着いていた香水の香りも、だんだんと薄れていく。多くの人に甘えて暮らしたし、たくさんお世話になったのだから、何か恩返しをしたいと強く願うようになった。…僕には何が、出来るのだろうか?
迷い悩むことが多くなったけれど、これは恋の悩みのようなもので、痛みや苦しみすらも、きっと甘いのだ。そう、甘いのだよ。
だからその甘さ、シンプルな喜びについて、僕はもっと考えるようにしよう。それこそが、辿るべき道なのだ。

出町柳のこの店も、フランスの雰囲気を淡く感じられるので、未来を考えるには、ちょうど良い場所に思えた。そして今日もまた、窓の向こうに綺麗な幻を見せてくれたんだ。

Kyoto et Paris


M

émoire de la rose.
蕾の時から薔薇は薔薇で、可憐な花を眺める私の眼差しは、愛娘に対する親の愛しさと同じだった。そう、ただ愛しさだけが、咲いていたんだ。

Mignon(Kawaii)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/


このblogには、好きだけを書きたいし、好きなものだけを並べて眺めたいのです。それは例えると、あなたの自慢の子供や恋人や妻を賞賛するのと、なんら変わりません。いわゆる親バカですね。
でもさ、それで良いじゃない。甘いものを前にして、甘いお菓子を口にして、甘くない話しが出来るなんて、僕には信じられないよ。…ねぇ、だからもっと、甘い話しをしようよ僕と。

さて、ところでこのミニョン。僕が描いたスケッチに、フランス語で説明を添えた最初のお菓子なんだ。初めて出逢った時からずっと、薔薇の幻想を重ねてしまうほどにこのお菓子を僕は愛しているのだけれど、君に1つ質問がある。
ねぇ、このお菓子、君にはどう見える? 僕は、シャルロット(Charlotte Gainsbourg)なのか、ソリータ(solita)なのか、どちらに似ているのだろうかと考えているよ。
そしてココはとても需要なんだけど、彼女らの母である素晴らしい女性、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)とクレモンティーヌ(Clémentine)を、僕はとても尊敬しているんだ。
だから、簡単にはどちらと決められなくてさ、僕にとってのこのお菓子は、いまだに薔薇の蕾のままなんだよね。

Mon Amour


が吹くように、花が咲くように、季節が移ろうように。淡い恋はやがて、深い愛へと辿り着き、甘い香りで満たされる。
ほのかな夢から紡ぎだされたのは、1本の、運命の糸だった。手を繫ぐように僕たちは、魅かれ、結ばれていく。

秋風(Le vent d'Automne)





久しぶりにいただいた蕨餅は美味しくて、京都へ帰ってきた実感が溢れた。しみじみと、幸福が体中へと広がっていく。御主人と奥様に、僕は深く感謝した。
さて、と。やっぱり1つで終わることなんて無く、2つ目のお菓子に手を伸ばした。淡い色彩の秋風。糸車に巻かれた生糸を模した、おだまき(小田巻き、または苧環)きんとん。薯蕷と小豆のシンプルな和菓子だけれども、銘と季節と色彩が、味覚に大きく作用するようで、毎回異なる印象を楽しむことが出来る。
『色の濃さも食感も、同じものは出来ないんですよ。』
まだまだ未熟ですからと、謙虚な御主人。狙い通りの色や食感を作り出すのは、なかなか難しいそうだ。
上手くいかないもどかしさと、それでも美味しく美しくと求め続ける姿。…思うにそれは、恋に似ているのではないかと思った。だからこそ、通うほどに僕は、この店を愛しく感じるのだ。

Bonne nuit


は優しく夢を包み込む。あたたかい夜。やさしい夜。君が甘い夢を見れますようにと、星空が抱きしめてくれる。
だからおやすみ、愛しい人よ。夢の中で逢いましょう。

ガトーショコラ(Gâteau au chocolat)





フランス菓子って、なんだろう?
その疑問に対する答えは、フランス人の食事にあった。彼らはとても、食を大切にしていたし、食事を楽しんでいた。そう、楽しんでいたんだ。
それに比べて日本人は…なんて言っても無意味なので、楽しく食べることが出来るお店を訪れた。だからこの店も、僕にとってのフランス菓子なんだ。味覚よりももっと、大切なもの。それがこの場所には、ちゃんと有るのだから。
この可愛いガトーショコラで、笑顔にならない人っているの?

Mon ange


を見ていたのだろうか?それともまだ、夢の続きなんだろうか?
甘い浮遊感と、うっとりとする安心感に、世界は淡く、とけていく。
すべての子供に王冠を。すべての大人に白い翼を。彼らが、夢の世界で暮らせるように。

プリン・ア・ラ・モード(Le Pudding à la mode)





ア・ラ・モードなんて呼ぶけれど、実はプリンは日本語で、これは日本生まれのデザートなんだ。フランスから帰国して、最初に訪れた店がシトロンで、そこにこの可愛いプリンがあったから、迷わず選んでしまったよ。
…あぁ、僕はやっぱり日本人なんだよね。この小さなプリンに、大きな満足感と安心感を覚えて、ただいまとありがとうを呟いた。
ちなみに、これは断言出来るのだけれど、シトロンに満ちる雰囲気と、お菓子から感じる気配は、フランスで感じた喜びと何ら変わらないもので、同じ空を見上げていることが分かったんだ。味だけじゃないの。味覚だけじゃないんだよ。大切なものは、五感と、その先にあるんだよ。

僕は菓子職人では無いし、評論家でも研究家でも無いから、詳しい分析も、批判もしない。ただ、好きから始まったこの道が、恋を経て愛に至れば幸いだと、ミルキーな微睡みの中で願わずにはいられなかった。

20101128

LA POMME D'OR


く果実。それは雄大なる西海へと沈む、黄昏の太陽に似ていた。煌めく黄金。艶やかなる炎。真実の蜂蜜が、夕日へと溶けていく。神の果実は、ゆっくりと楽園へ沈んでいった。闇へ、夜へ、明日と呼ばれる未来へと。
再びこの果実を掴むために僕たちは、甘い夢を見るのである。星の海に、夜の静寂に、永遠と呼ばれる、束の間の幻に。
語り尽くせぬほどの夢を、僕たちは毎晩見ているのだ。忘れたなんて、言わせないよ。

Tarte Tatin


パリ
Blé Sucré ブレシュクレ



感謝と撮影の後、3つのケーキを美味しくいただき、それをスケッチして、お礼とごちそうさまを言うために、トレイを持って店内へと戻った。気付けば太陽は沈んでおり、向かいの公園は暗く、もう夜になっていた。
スケッチしたケーキを見せながら、マダムに感謝の意を述べると、
『あなた、日本人よね? ちょっと待って、ウチにも日本人がいるのよ。』
そう言って、奥から土屋さんを呼んできてくださった。仕事の手を休めて彼は、丁寧に私のスケッチの隣に、それぞれのケーキの説明を書いてくれた。
桃のケーキと苺のタルトは詳細を書いてくださったのだけれど、面白かったのが、このタルトタタン。
『これはね…おいしいりんご!それが全てだよ!』
確かに。一目見ただけで伝わってくる程に、この林檎の美味しさは素晴らしく、正に黄金の林檎であった。
(神話に登場する“黄金の林檎”のほとんどは、実はオレンジやトマトの事らしい。…でもさ、そんな事を言う古の彼らは、このタルトタタンを知らなかっただけなんだよきっと)
お忙しいのにシェフも顔を出してくださり、幸運にも直接お礼を述べることが出来た。
そしてやっぱりシェフも、こう言われるの。
『うん。美味しい林檎だ。それをガレットブルトンヌに乗せただけだからね。』
その笑顔には、力強さと優しさが見えた。
…ねぇ、シェフ、僕が知っているのは、黄金の林檎を手に入れることが出来るのは、神と英雄と、色男だけだったはずですよ♪

20101127

Jolie petite


い微睡みを夢見て笑う、春乙女。その笑顔に癒されて、冷たい風も和らぐ。
高く透明な青空に、玲瓏なる月の面影を探して、辿り着いた場所には、可憐な花が咲いていた。

Fraise sur gâteau


パリ
Blé Sucré ブレシュクレ



苺が乗ったお菓子、なんてシンプルな名前とはうらはらに、こんなにも可愛いタルト。日本には春乙女というチューリップの品種があって、その可憐さにも似ていた。
このタルト、上の苺の外側はショコラブランなんだけど、テラス席に連れて来て、どうやって食べようかと_だってほら、フォークで押さえるのも、ナイフを入れるのも忍びないほど可愛いし、実際、ちょっと硬いんだ_悩んでいたら、お店から出てきた小さい女の子が、真横でこっちをじっと見ていたんだ。
僕はフランス語は分からないので、会話の内容なんて推測なんだけど、
『ほら、あなたのケーキはもう買ったでしょう。家に帰りますよ。』
『だってママ、あのケーキも可愛いじゃない!』
『ケーキは1つだけです。』
『でも!』
そんな内容だと思うんだよね、たぶん。
僕は増々、食べるに食べれなくなり、ナイフとフォークを持って、肩をすぼめるしか無かったよ(苦笑)

20101126

Murmure du vent vert


風に乗って、甘い囁き声が聞こえた。野山を駆け、谷を飛び越え、七色の空を渡り、耳元で小さな花が揺れるような声だ。それはまるで、風の谷の魔法使いが、空の果ての恋人へ送った手紙に似ていた。
青空に詩を紡ぐように、そよ風が流れていた。

PV(Pêche Verveine)


パリ
Blé Sucré ブレシュクレ



風の谷の魔法使いが送った手紙というイメージは、ナイフを入れた瞬間に溢れた、桃とベルベーヌの香りで思いついた。ただ、あれから随分と経った今でも、手紙を送った相手が、魔法使いの恋人なのか、それとも異国の姫君なのかは、実は僕にも良く分からないでいる。もしかすると、その両方かも知れない。次回は、もっと耳を澄ましてみるよ。

あぁ、そうそう、この店を教えてくれたのは、フランシス・クラインのマリアンなんだ。彼は日本語が完璧で、ブレシュクレで働いている土屋さんの友人でもある。
ボナパルト通りのラデュレから出てすぐ、偶然訪れた素敵なメガネ店にて、僕が甘いもの大好きだと言ったら、ブレシュクレを紹介してくれたんだ。
『僕の友人が働いている店なんだけど、とても美味しいんだ♪』
その言葉は真実で、もし、付け足すことがあるとしたら、可愛いくてオリジナリティに溢れている事くらいだろうか。正直な話し、店内に1歩足を踏み入れた瞬間に、僕はこの店に恋をしたと言っても良いくらいだよ。
僕がバスティーユ界隈に住んでいたら、きっと毎週訪れるだろうし、例えば子供がいたとしたら、毎日一緒に訪れたかも知れないよね。向かいの公園へ行くのを理由にしてさ(笑)
それほどまでに、愛らしい店だと感じたんだ。


Francis Klein フランシス・クライン
http://francisklein.com/

20101125

Bon appétit !


咲くような、うららかな日曜日。何をしようか?どこへ出掛けようか?
あなたが居れば、どこだって良いわ。
そう言ってくれた君の笑顔が眩しくて、嬉しくて、でも照れくさかった僕は、君の手をとって歩き始めた。
大好きなあの店へ行こう。明るい陽射しに溢れた、あの店へ。

Millefeuille


パリ
http://www.lapatisseriedesreves.com/



日曜日は、私がミルフイユを作るから来てね!なんてエルザに言われたから、週末も16区のデ・レーヴへ。
お店へ着くと、ちょうど大きいサイズのミルフイユを組立てていた。フィユタージュアンベルセの上に、花畑みたいにクリームを絞り、またフィユタージュを重ね、繰り返す。最後に、フォンダンでキラキラと輝くフィユタージュの上に、ロゴのピックで可愛い模様を付けて、出来上がり。
『完成!さぁ、召し上がれ!』
いやいや、美味しいのは見ただけで分かるけど、このサイズ(30cmくらいのキャレ)は大きすぎるよ。小さいので充分!
『あら、小さいので良いの?それで足りるのかしら?』
…全くその通りなんだけど、他のケーキも食べたいじゃない(苦笑)

20101124

fly me to the moon


くような、月の香りを知っているかしら?
甘く、小さな蕾が花咲くような、静かなパフューム。蝶の羽根のような月光から、夢の夜空に降ってくるの。
そして彼女はそっと、美しく潤んだ瞳を閉じた。

Tarte Tatin


パリ
http://www.lapatisseriedesreves.com/



こちらも新解釈の古典菓子、タルトタタン。でも、タルトタタンには多くのバリエーションがあり、様々な知恵と技術でもって、美味しいタルトタタンを作られています。菓子職人だけではなく、家庭の味でもあると思うの。
さて、このタルトをどう表現しようかと考えていたら、ちょうどHelena Noguerraの歌声(Toi Mon Auto)が流れて、その甘さと浮遊間が、タルトの余韻に似ている気がしたのね。だから彼女の歌に、何かヒントは無いかと探し求めていたら、ジャズのスタンダードでもあるfly me to the moonに行き着いて、歌詞のイメージから、上の文章が書けたってわけさ。
そうそう、“言い換えれば”そーゆーコトだよね(笑)

PS.
僕はタルトタタンを食べて、それを素早くスケッチして、エルザに説明文を添えてもらった。
薄く重ねられた林檎も、歯ごたえの良いパイも美味しかったけれど、それを引立てるクリームが素晴らしかったので、これは何かと尋ねたら、
『フフフ、ここに書いてあるよ。』
そう言ってアセヌが指差した場所を見ると、Mascarponeと書いてあった。
オリジナルのクレームシャンティは、現在よりも濃厚で酸味があったそうだから、ここにも古典を大切にする思想が見えて、増々この店のお菓子が好きになったんだ。

mémoire


いを夜空に薫(くゆ)らせるように、ゆっくりとペンを走らせて、古き友への手紙を書いた。星が瞬くたびに、様々な記憶が蘇るので、楽しくも懐かしく、そして長い文章になってしまった。
だから読むのに疲れたら、窓を開けて、君の夜空を見上げて欲しい。
流れ星が見えたら、再会をお願いしといてくれたまえ。

Éclair Chocolat


パリ
http://www.lapatisseriedesreves.com/



そっとフォークを当てて、薄くパリッとしたショコラのシートと、フワリと香るシュー生地と、ゆったりとしたクリームを切っていく。その感覚は、銀のペーパーナイフを使い、封筒から丁寧に取り出して、親友からの大切な手紙を読む時の気持ちに似ていた。なんだかとても懐かしく、何故だか楽しいのだ。
エクレールの語源の1つに、稲妻のように速く、クリームをこぼさないで食べるというものがある。でもこれは、ゆっくりと楽しみたいと思った。少しくらい長居しても、良いじゃないか。…ねぇ?

Paris-Brest-Paris


に遊ぶ花の記憶。遠い道程を駆ける想い出。花の都から吹く風は、太陽の光の、甘さや柔らかさを教えてくれた。
名も知れぬ道端の白い花が、青空に微笑むような優しさを感じて、僕の心に喜びが咲いた。

Paris-Brest


パリ
http://www.lapatisseriedesreves.com/



パリブレストとは、ある菓子職人が自転車レースを記念して作ったことは、僕も知っている。きっと、店の前を選手達が駆け抜けて行ったのだろう。
その古典的なお菓子を、新しい形で作ったのが、この店のパリブレスト。メディアでは、新古典主義とか呼ばれる、パリの流行に乗ったものらしい。
僕は個人的に、美味しく楽しいと感じたお菓子のことしか書けないから、思ったままに述べさせてもらうと、これは花輪(ガーランド)に見えた。
今までのスタイルは、車輪をモチーフにしつつも、風をイメージさせるものだったけれど、これはきっと花なのだ。選手に架けられる物かも知れないし、沿道に咲く花なのかも知れない。そして何よりも、パリは花の都と呼ばれているのだから、僕にはこの空想が、スッキリと腑に落ちた。白く甘い花が、太陽に微笑んでいるみたいだ。
店名にあるように、夢を見させてくれる、素敵なお店とお菓子だったよ。

20101123

夢から醒めた夢


しく降りそそぐ光の中で、神様にお願いをした。すると、光の翼を持った天使が現れて、私にこう告げた。祈りなさい。願いが叶うまでずっと。
祈り続ける限り、願いはすでに叶っているのだと、優しい光の中で理解した。

Millefeuille vanille


パリ
pâtisserie Sadaharu AOKI paris サダハルアオキ
http://www.sadaharuaokiparis.com/



ミルフイユを口にした時に、何故かとても懐かしく思えた。その理由は何だろうかと考えながら、甘い夢にたゆたう。はらはらと散るフィユタージュは、降り積もる黄金の落葉に似ていた。溢れるバターの甘さは軽く儚く、それは光の羽根のようだと感じたらやがて、教会で見た、光り輝く天使のイメージと重なった。
パラパラとページを捲るように、もっと深く、もっと深く光の中を覗いてみると、懐かしさの理由に気が付いた。キャラメリゼ、つまり砂糖なんだけど、その味わいが、名古屋で通っていた店と同じ雰囲気だったのだ。
その店の名はアズュールと言って、そこのパティシエールはかつて、サダハルで働かれていたことを思い出した。
なんだか不思議だよね。この感覚は。僕は遠くへ来たつもりなのにさ。