20111117

美食家の憂鬱

T
he Melancholy of epicurean.
かのブリア=サヴァラン曰く。
『せっかくお客をしながら、食事の用意に自ら少しも気を配らないのは、お客をする資格のない人である。』

チェーン店やフランチャイズ店、流行に乗った店が消える事に、私は何の感慨も持たない。しかし、通った店、其処にしか無い店が消えるのは、幕を下ろすのは、様々な理由があれ、残念でならない。何故ならば、その代わりになる店が存在しないからだ。
…様々な理由。そうだ、様々な理由。挙げればキリが無いであろう。しかし、忘れられがちで、全く問題にされない真実が、日本には1つだけ存在する。
『客は、君は、店を愛していたのだろうか?』
愛していても、別れは来るだろう。でも、未来へと続いていけるだけの愛が足りなかったとしたら? そもそも、愛してなどいなかったとしたら?
客が支払う対価は、金銭に非ず。愛と感謝と、献身に他ならない。食事代なんて物は、後払いの入場料に過ぎぬのだ。店が日々の努力を重ねたように、客は日々、何をしていただろうか?
『そんなものは知らない。全ては店の勝手だろう。もしくは、運が無かったのだ。』
そういう人もいるだろうが、残念ながら私の考えとは相容れない。何故ならば、“店”を“恋人”に置き換えてみたまえ。…ほら、私は君とは、友人になれそうに無い。
振り返って私は思う。私は本当に、愛していたのだろうかと。日々の快楽に、甘んじてはいなかったかと。恋人達が去る度ごとに、虚しさは悲しみで満たされて、ただ後悔だけが残される。
美食家は、グルマンディーズ(恋多き人)でもエピキュリアン(一途な人)でも構わない。問題は、その愛は真実であったのか。また、愛の無い付き合いをしてはいなかったのか。ただそれだけが、問題なのだ。

私は本当に、君を愛していたのだろうか。

20110903

逢いたくて


りの中で夢咲くように、木蓮の花が笑っていた。甘い香りは思い出を優しく包む。青空に、歌うように流れた記憶は、ふわりと僕の唇にサヨナラをした。そしてただ、心の中に、幸せな微笑みだけが残された。

マグノリア(Magnolia d'Abricot)


京都
http://www.grainsdevanille.com/



ふわりと香る甘さが、青空に咲く木蓮のようであった。そしてその余韻は、散る木蓮の花びらのように感じられた。ふと僕が考えたのは、木漏れ日は蜂蜜の味がして、微笑みにはヴァニラが香るのではないだろうかという幻想だった。

20110902

the Little Zen Garden


N

unc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus.
日本では、memento moriとは“死を想え”と訳されてきた。しかし僕たちは今、必要以上に死を恐れていないだろうか? それはまた、生きる意味を見出せずにいるからでは無いだろうか?
先人達は歌う。どうせ人は死ぬのだから、無闇に恐れるな、今日を楽しめ、今を生きろと。

茜色の静謐が微睡む窓辺にて、僕は静かにたゆたう時を眺めていた。美味しいものを、美味しいと感じられる。ただそれだけで、何とかなるんじゃないのかな?

抹茶のクグロフ(Kouglof au Mâcha et Soja noir)


京都
cafe memento mori メメントモリ
http://mementmori.net/


なぜか通りすぎることの出来なかったカフェは、静かな余韻に満ちていた。時の残像が重なって、淡く滲んでいるようだった。僕は不思議な懐かしさを感じた。
大きな窓から光が入る店内は明るく、ゆらぐ光と、香るような影が印象的だ。特注したと言うライトには、命の灯火にも似たフィラメントが燃えており、それが無機質な壁や床や水晶に、優しさと微笑みを与えているような気がしてならなかった。
テーブルに置かれたガラスの器の中には、遥かな昔に大地に落ちたであろう林檎と、散ってなお燃える真紅の薔薇の花弁と落葉。永遠に保存された森の記憶。それは死をイメージしたのだろうか。
見据えた先の、仄かに灯る未来の先に、かようにも美しく朽ちる死があるのなら、何も恐れることは無い。あともう少しだけ、終りが来るその日まで、僕は前を向いて歩いていこう。

20110901

the Neyn tails stories


角に、ネインという名の店があった。優しいドーナツとクッキーと、心休まる珈琲に会える場所だった。明るい通りに面した店内には、いつも甘い香りが満ちていて、朝に昼に夕方に、気軽に訪れることが出来る店だった。
今は無くなったその店に、僕は何回通ったのだろうかと考えてみたけれど、美味しかったこと以外は、あまり思い出せないでいた。…良いのかな、それで。僕があのドーナツを好きだったことは、忘れられそうに無いのだから。
そして僕は最後のクッキーを、別の店の珈琲と共に口にして、静かにノートを閉じた。さよなら、ネイン。


東京
Neyn ネイン
http://www.neyn.com/




大好きな店が無くなってしまうのは悲しいもので、なのに何も出来ない僕自身の無力さは、失恋の喪失感と同じかも知れない。
幾度となく愛していると口にしたとて、終わってしまえば、それはただの戯言と変わらないだろう。それでも僕は、僕が口にした愛に偽り無きことを誓うためにも、この温もりと感謝の気持ちを、忘れないでいるだろう。僕が年老いて、たとえ君の名前を、思い出せなくなったとしても。

20110831

Lueur feutrée de la lune


味しいって何だろう?
その素朴な質問の答えに相応しい、無垢なるものを私は求めていた。夜、静かに絶望もした。夢も呑み込んだ。星明かりも無い荒野を、果ても無く彷徨ってもみた。そして辿り着いたのは、何てことの無い、ただの食卓だった。
恋い焦がれていた太陽よりも、そっと寄り添う月のように、そこには安らぎがあった。それこそが、私の求めた答えだった。




色々と思うところがあって、お茶会を始めました。シトロンでは毎月第2土曜日の夜、レモンのお菓子ガトーウィークエンドをメインに、季節に合ったお菓子と飲み物のセットをご用意いたします。流行や外見に流されない美味しさと、素朴で素直な幸せを感じて、甘いひとときを過していただけたらと、切に願います。
次回は9/7(土)の夜。涼しくなった宵闇に、薔薇のブランマンジェはいかがでしょうか? もちろん、旅するお菓子、レモンのガトーウィークエンドも用意して、貴方様のご参加をお待ちしております。

20110601

Merry-go-round


にも届かぬ幻想が独り、闇の降る夜に回り続ける。僕は耳を澄ませ、未来の羽音を探していた。
何故、君は美しいのか。何故、こんなにも愛おしいのか。
僕には、月の扉よりも向こうの星空に、届けたい想いが沢山あるんだ。


ちょっと思うところが在りまして、今月は写真では無くイラストを載せていきます。
文章とイラストの違和感がありますが、それを客観的に眺めてみたい為です。
7月からはまた、写真と戯言のblogに戻ると思いますので、どうかお付き合いください。
それでは、2010年の秋へと遡りましょう。

20110531

小悪魔の煌めき(Last Flowers)


にときめく真実は、夜空の星のように輝いてなんかいないの。夢の中にも在りはしないわ。
最後のキスが、始りのキスになることを、ずっとずっと待っているの。
愛という名の花を探して。

ディアブロタン(Diablotin : Tarte aux Cerise)

京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

福岡
Diablotin ディアブロタン
http://www.diablotin.jp/



何度目かの別れの日、短いキスの後で彼女が言った。サヨナラの味がしたと。愚かな僕には分からないけれど、きっとそれが真実なのだろう。僕は彼女の温もりと優しさが残る手を振って、虚空にさようならと告げた。
しばらくは、2人の残像と残り香のような関係が続くのかも知れないけれど、この日が別れの日なんだと、僕たちは淡く儚く確信した

小悪魔の囁き(Last Kiss)


りが教えてくれたのは、永遠という名の寂しさだったかも知れなくて、それでも私は、記憶の無い希望を待っているの。キスからキスへ、蝶のように羽ばたくけれど、ただ甘い蜜が欲しかっただけ。愛はいつでも真実だったわ。

ディアブロタン(Diablotin : Tarte aux Cerise)

京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/


福岡
Diablotin ディアブロタン
http://www.diablotin.jp/



匂いで分かると、彼女は笑っていた。キスの味で分かるとも、真面目な顔で話してくれた。抱きしめられた時の感覚で、未来が見えるそうだ。…女性は皆、そうなのだろうか?
彼女の未来に咲く花が、どうか僕であって欲しいと切に願った。眼の見えない僕には、ただ、それだけしか出来ないのだから。
そして僕たちはまた、蜜のようなキスを重ねた。

堕天使の歓び


る夜空の三日月が、零した吐息は夢より甘く、闇を艶やかなビロオドで包み込んでいく。
漆黒に咲く想い出は鮮やかに、夜風に吹かれて幻に散る。溶け出した誘惑は果実の様に熟れて、幸せなる咎人の手に落ちた。

フォンダンショコラ & パウロ・ベルタ
(Fondant Chocolat & PAOLO BERTA 1990 Berta)





白い皿に描かれた、黄金色の甘い三日月。空に咲く赤い薔薇と、漆黒の夢。
フォンダンショコラに銀のナイフを入れ、溶け出す魅惑にパウロベルタの一雫。…ほら、夜に花が咲いた。君の血よりも鮮やかな花が。
月の涙で、溺れる程の花を咲かせよう。そら、堕天使の葬列だ。
君の血がショコラの様に香るまで、僕は君を愛し続けよう。

どんなに抱きしめても届かない想いが、夜の闇へと溶けていった。

20110530

Rose romantica


薇の庭園を散歩した。雨上がりの花々は麗しく、雫は虹色に輝いていた。薔薇に宿る貴婦人たちの幻影と共に僕は、幸福の迷宮を彷徨う。
愛と薔薇は、とても良く似ていると思わないかい?

フランボワジエ(Framboiser)


京都
pâtisserie Tendresse タンドレス
http://kyotocake.com/


去年はこのフランボワジエからダム・ドゥ・シュノンソー(Dames de Chenonceauisato)を思い出し、そこからシュノンソー城へと辿り着いた。姿が変わって華やかさを増した今年は、鮮やかに咲くルージュ・ロワイヤル(Rouge Royale)だろうか。それともジャルダン・ドゥ・フランス(Jardins de France)だろうか。ペパンは爽やかな通り雨の雨粒の様に、輝く余韻にはじけた。薔薇の香りはしないのに、美しく咲く薔薇を想うなんて、不思議だよね。貴婦人を想い描くのは、何ら不思議じゃないけれど。
初夏の薔薇園を歩きながら、僕は夏の兆しを感じていた。

20110529

Bonne fête, maman!


が少女だった頃も、今と変わらず輝いていたのだろう。出逢うまで時間が掛かってしまって申し訳無いけれど、僕は心から感謝しているよ。
赤いコサージュが、君の笑顔には似合うと思ったんだ。…どうかな?喜んでもらえただろうか?

パフェ471?(パフェしない?:Parfait)




日本の母の日は、アメリカと同じく5月の第2日曜日。フランスの母の日(la fête des mères)は5月の最終日曜日。聖霊降臨祭(Pentecôte)と重なる場合は、6月の第1日曜日になるそうだ。
子供が母に感謝する日であることには変わりないけれど、夫が妻に感謝する日であっても良いと思うんだよね、僕はさ。

20110528

Prémices du l'été


は静かに踊り始めた。風薫る中で僕たちは、輝く太陽を追い求めた。アポロンとアルテミスの矢は黄金色に輝き、二重の虹を青空に描く。
風は淑やかに、光は華やかに。気付けば其処に、夏が微笑んでいた。

KABOSU
(KABOSU & YOMOGI:Gâteau aux zestes d'orange à la japonais et L'armoise)

京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110527

Diablotin et Lolita


い微笑みに弄ばされる僕は、2人の間で成す術も無く、ただ溺れるしか無かった。
恋の罪深さにおいて、小悪魔と美少女、その違いなんてあるのだろうか?
淑やかで計算高い小悪魔と、魅惑的で悪戯な美少女に抗うなんて、どんな魔法でも不可能だよねきっと。

Diablotin(Tarte aux Cerise)
Lolita(Mousse au Fromage)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

福岡
Diablotin ディアブロタン
http://www.diablotin.jp/



今日は僕の誕生日なんだけど、お祝いされるなんてガラでも無いし、だったら誰かを強制的に祝おうと思って、ちょっとワガママを言ってみたの。
『小悪魔と美少女で♪』
去年、懐かしい福岡の上人橋通りを友人と散歩していた時に、偶然見つけたアトリエ兼ショップ。期間限定なので、今年の8月にはクローズする事が決まっているそうだ。だから…まぁ、何と言えば良いか分からない_本当のところは、美味しいケーキを楽しむための、唯の口実なんだけどさ_けれど、諸々のお祝いを込めて、ブランド名をイメージしたケーキを作ってもらった。
『食べるつもりが食べられた、みたいな感じで良いの?』
あぁ、流石は尊敬するパティシエール。良くご存知でいらっしゃる(笑)

Constellation in your dream



空を翔る航線が、星と星を繫ぎ物語を紡ぐ。君の足跡が、残した気配が、落としていった時間の欠片が、瑠璃色の闇に淡く光っている。
忘れられた、もう誰の物でも無い記憶は水晶の様に、静かに輝く花になる。それを夜空の旅人たちは辿り、新しい星座を描いていくんだ。

1杯の珈琲(une café)

京都
Lagado研究所 ラガードけんきゅうしょ
http://lagado.jp/


カフェを訪れる理由は何だろうか?
このシンプルな質問には、人それぞれの答えがある。中には理由なんて無い人もいるだろう。ただ、珈琲が飲めれば良い。あるいは、ビールやワインや…いや、飲み物の種類なんて関係無いのだろう。そこに自分の時間があれば、それで良いんだ。
好きなカフェで感じる、誰かが残していった想い出は、過去の、あるいは未来の、忘れてしまった貴方の時間と記憶なのかも知れない。時に眩しく、時には仄かに。僕は星の記憶を頼りに歩き、僕だけの星座を描いた。

20110526

CUP OF TEA


を止めて眺めるのは、窓に映る季節の風景。そして愛しい君の笑顔。僕に与えられたのは、1杯分の魔法だけ。
この街で、この店で、このテーブルで、僕は魔法使いになれるんだ。

抹茶のパフェ(Parfait au Mâcha)


京都
UENOYAMA ウエノヤマ
http://www.cafe-restaurant-uenoyama.com


ウェッジウッドのカップに盛られた抹茶のパフェ。抹茶アイスの苦味と甘味が溶けていき、バター香るビスキュイの甘味と、季節のフルーツの酸味や華やかさが、淑やかにワルツを踊るんだ。そこに何か物語を探そうとしてしまうのは、庭を眺める時の感覚に似ているのかも知れないと、僕はぼんやりと考えていた。
様々な想いを巡らせて、やがて辿り着く静寂には、優しい花が咲いているんだ。その花の名前を、僕はまだ知らないけれど。

20110525

恋セヨ乙女


女がキスをするように、小さな花を摘んでいく。時にくるくると花を回しながら想うのは、小さな恋の行方だろうか?
その清らかなる恋に、女神(Muse)たちの祝福を。

エルドベアトルテヘェン(ERDBEERTORTCHEN)


京都
KONDITOREI Mausi コンディトライ・マウジー



苺の時期に気まぐれに、マウジーに咲く小さなタルト。これをマーガレットに見立てて、恋占いでもしてみませんか?
もちろん、フランス式で。
Je t'aime, un peu, beaucoup, passionnément, à la folie...
ほら、甘い香りがしてきたでしょう?

20110524

L'amour d'été et le soleil


から吹く女王の風に乗って、白い胡蝶がやって来た。揺れる木陰で羽を休めるその姿は、夢の花が咲いたかの様で、しばし僕は幻想と戯れた。薫る夏の、輝く光を想いながら。

ポランジュ(Porange:Mousse au praliné et au Orange)


京都
grains de vanille グラン・ヴァニーユ
http://www.grainsdevanille.com/



コアントローの香りに、明るい太陽と白い花を思い出した。プラリネのムースは優しく、その2つのハーモニーが、夏の幻想をふわりと描いた。そう、まるで木陰で蝶が羽根を休めるかのように、僕の微睡みの中で、刹那の幻がゆらりと薫ったんだ。
もう夏が近いことを、茜さす窓辺で感じていた。

20110523

Je rêve de toi


空に寝転んで、僕は君の夢を見る。吐息は羽ばたき雲を越え、君の元まで翔けるよ。
通りすぎる太陽の頬を撫でると、君の囁きが聞こえたような気がして、僕はまた微睡みに身を任せた。

イチゴのロールケーキ(Rouleau aux fraise)





オススメのカフェを尋ねられたので、シトロンを教えたの。するとさっそく彼女はシトロンを訪れたようで、メールでありがとうと伝えてきた。僕が見たことの無い、ロールケーキの画像付きでね。
『トッコ先生、このロールケーキは何?』
『教室メニューを、たまたま店頭に出してみたんやけど…』
先生は、どーしてバレるかなぁなんて言いながら、また作ってくださった。今年最後の苺を使った、カソナードのビスキュイとマスカルポーネクリームのロールケーキ。残り僅かな苺を使ったものなので、お急ぎくださいな♪

20110522

Comme au Cinéma


が囁くラストシーンが、青紅葉を静かに揺らした。ほんのりと紅色を匂わせて、静かに時が散っていく。永遠など無いという真実を、木漏れ日が照らしていた。
僕の口から零れた言の葉は音も無く、静寂の水面に波紋を重ねる。たった一言の花が欲しいのに僕達は、ただ見つめ合うことしか出来なくて。
ねぇ、僕は君を…

ドラマ(Cake aux figue et au vin rouge)


京都
Nowhereman ノーウェアマン
http://www.nowhereman2010.com/

Lagado研究所 ラガードけんきゅうしょ
http://lagado.jp/



Nowheremanのお菓子には、全て詩がつけられている。たとえはこの“ドラマ”には、こんな短い文章が添えられているんだ。
暗転の前のたったひとつのジョークで
物語は悲劇から喜劇になり得る。
バターの香りが溢れるケークの中には、ワインが薫るイチジク。その香りと味は沈黙を誘うのに、ひとくち、もうひとくちと進むうちに、華やかで饒舌な空気に満たされるの。不思議だよね。
今月からラガード研究所(月曜21:00~22:00)での販売も始められたので、ぜひ訪れて欲しいと僕は願うよ。君の物語を綴る為にもさ。

20110521

La fantaisie


像の花は気まぐれに、夜と闇を越えて微睡みの光に咲く。胡蝶は無音の音楽を添えて、囁きを振りまいた。
触れることの出来ぬ世界の向こう側の残照を写して、月は今日も微笑んでいた。

トプフェンショコトルテ(TOPFEN-SCHOKOTORTE)


京都
KONDITOREI Mausi コンディトライ・マウジー



ウィーン菓子の全てが、クラシカルでシンプルで地味な重いお菓子なんていうのは間違いで、それは例えば、イタリア料理は全てにトマトが使われていると言うようなものだ。…まぁ、様々な種類の、色々なお菓子があるのだと言いたいわけなんだけどさ。
ちなみにこのトルテ、胡桃のブラウニーみたいな生地に、不思議な生クリームと、お酒が香る苺が乗っているんだと思ったの。とにかく素晴らしい香りのハーモニーが感動的なんだ。…でも実はこれ、生クリームでは無く、3種類のクリームチーズを混ぜたもので、お酒も全く使っていないそう。さらに、この3種類のクリームチーズの比率を変えると、また違った味と香りになるそうだ。繊細で手間のかかる、伝統的な製法だと教えてもらったんだ。
目に見える輝きだけを至上とする人々は、舌の上に載せられた味さえもきっと、理解出来ないと思うんだ。人間の五感、特に視覚なんて、いとも容易く騙されるモノなのだから。

僕の五感は鈍く、空想や妄想や勘違いや思い込みの数々は曖昧なものなので、美味しさへの感謝と共に、素直に教えを乞うようにしているんだ。だって、少しでもその秘密を理解したいと思うことが、お菓子への愛情へと繋がっていくと思うんだよね。

20110520

薄明のトゥーランドット


闇に浮かび上がる稜線は、まだ太陽の温もりを宿しており、柔らかな空気が世界を包んでいた。
毎夜生まれては明け方に消えるものが希望だとするならば、この胸に咲いた想いは何だろうか?
過ぎ去りし太陽よ、訪れし月の女神よ、王子の名前を教えておくれ。

コルセノア(Corse Noix:Gâteau au Praliné et au Chocolat lait)


京都
grains de vanille グラン・ヴァニーユ
http://www.grainsdevanille.com/

20110519

笑顔の森で


U

n beau jour, dans la forêt.
Bonjour, mon gars! Quelle surprise!
“Bonjour! (`(エ)´)ノ”

KUMASAN(Mousse au Chocolat)


京都
patisserie RIGOLÉ リゴレ



久しぶりに訪ねてみると、お店は少しだけ雰囲気が変わっていて、そこには可愛いクマさんが待っていた。こんにちは。僕は彼に挨拶をして、窓際の椅子に腰掛けた。
爽やかな朝に、穏やかな日の午後に、または、学校帰りの夕方に、こんな甘い森へと出掛けてみてはいかがだろうか?
ささやかでもきっと、素敵な物語が始まると思うんだよね。

20110518

夢の隨


の瞬目は蝶の羽根。零れた光に羽ばたくの。移ろい流れ、忘れたとしても、きっと此処へ帰って来れるわ。
穏やかな陽射しの中でぼんやりと、彼女は未来の薫りを眺めていた。

オーブン焼きプリン(Pudding)


京都
Cafe 箔屋 カフェはくや

20110517

C'est l'amour?


を蝶に例えるならば、どんな花にとまるのだろうか?
美しい花?可憐な花?それとも甘い花?
ただ1つだけ確かなことは、恋を蝶に例えるならば、花こそが愛なのだ。
どの花であれ、花は花ゆえに素晴らしい。

ちょうちょうのマカロン(Le Papillon)
※店内撮影了承済み


京都
Magasin Des Fraises マガザン・デ・フレーズ
http://ichigonoomise.com/
Le salon sélectionné ル・サロン・セレクショネ
http://blog.ichigonoomise.com/?eid=1276731

20110516

Éphémère


白な月の、浮かぶ日の花かげに、僕らの夢が戯れる。百花の微睡みに宿る胡蝶たちよ、甘い夢を見ておくれ。儚くも限りない、幸せなる浮世を。
青空にゆらぐ月影は、そよ風よりも優しく。

たわむれ(Le Papillon)


京都
嘯月 しょうげつ



幾つもの言の葉を取り零し、欠けた魂の器に残った数少ない文字を並べ変えては、戯れに、意味を見出そうとする。それは誰かに向けられたものでも無く、誰かの耳に届くわけでも無く、我が心に残るでも無く。
何かが流れた、その感覚だけを確かめる為に。ただの戯れ。泡沫の暇つぶしの果てに僕は、何処へ辿り着くのだろうか?
それともただ人知れず、淡く消え去るのか。

20110515

over the rainbow


に夢が舞う午後、僕は空から降る花を眺めながら、白い微睡みを楽しんでいた。
見たことの無い、いつもの風景。そして名も知らぬ親友と、記憶に無い思い出たち。
確かなことは1つだけ。その余韻の甘さは、今日も優しかったよ。

ヴィンドボイデル(Windbeutel)


20110514

聖母の戴冠


の祝福を、全ての花に。聖母の祈りを、全ての星に。
咲く花も散る花も、全ては星のように美しい。永遠と束の間に、輝ける王冠を。
主よ、どうか僕らの、僕らの罪をお赦しください。

クグロフ(Kouglof:Gracia & Antoinette)


京都
喫茶葦島 きっさあしじま
http://ashijima.com/



ふわりと香るクグロフ。手前の、十字架をイメージしてホワイトチョコレートで飾られた方はガラシャ、その奥はアントワネットと言う。そう、細川ガラシャとマリー・アントワネットから名付けられているんだ。
2人の繋がりは無いように見えて、実は2つある。1つは、細川ガラシャをモデルにしたオペラを観たアントワネットが、とても感銘を受けたという史実。
もう1つは…これは僕の私感なんだけど、共に美しい花を連想させてくれると思わないかい?
生き方も、その最後も、美しかったと思うんだ。静かに香るようにね。

20110513

La clé du coeur


に繋がる心の扉を、あなたの鍵で開いて欲しいの。眠りの茨も、黒い森も、幻の城も全て、ただの魔法なのだから。
お願い、夜空に星を輝かせて。

イチゴのショートケーキ(Gâteau aux Fraises)


京都
Café Bastille カフェ・バスティーユ
http://www.bastille.jp/cafe/cafebastille.html

20110512

Comme un ange


る君の横顔は、天使の微笑みを思い出させてくれた。やすらかに、夢に折り畳まれた翼はまるで、空高きところの雲のように柔らかく、そして儚かった。
天使の溜息は青空の吐息。甘い天使よ、僕を導いてくおくれ。

Ange(Meringue chantilly)


京都
Point Pour Point ポワン・プール・ポワン
http://www.ppp-kyoto.com/

20110511

光の中へ


る匂いにときめきがあった。光さす方へ僕たちは、夢の香りを探し求める。
きらきらと星の降る、午後4時のテーブルの上には、もう夏の薫りが佇んでいた。

KABOSU(Gâteau aux zestes d'orange à la japonais)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110510

Valse Romantique


夜に奏でた夢の余韻が、さよならも言わずにベッドを抜け出した彼女の、残り香のような気配の中で踊っていた。
ふっと零した僕の溜息にもまだ、仄かな甘さが残っていた。

Valse Romantique/ Claude Achille Debussy

ショートケーキ(Gâteau aux Fraises)


京都
Limour リモール
http://www.limour.com/

20110509

風に流れて


に掛かる柳の枝が、青空に靡いていた。あの淡く美しかった春は、気付けばまるで、夢のように終っていた。
光の踊る川面を眺めていると、銀色の魚が跳ねた。風にはもう、夏の気配すら感じられるようになっていた。

青柳(Le Saule pleureur)


京都
嘯月 しょうげつ

20110508

The Unbirthday Song


る空の下、黄金色の昼下がりに、何でも無い日の、いつもの君の笑顔に。
紅茶とケーキと、ささやかなクッキーを添えて、あとは夢のような微風があれば、僕は幸せを感じられるんだ。

練乳ショートケーキ
(Gâteau à la creme de lait condensé et aux Fraises)


20110507

夢枕


なる花の影で、夢を見るのに眠る必要があるだろうか?
蝶の群れに乗ってきた船の君を眺めながら、僕は呟いた。未来に微笑みはあるのかと。
光の波に揺られて去りゆく女神に、祈りとともに短い手紙を預けた。夢の国で寛ぐ、彼の伯爵への手紙を。

紅茶のクレープ(Crêpe au Pamplemousse à la crème au Thé)


20110506

うたたねの午後


しく霞む空を見上げて、溢れる太陽の微笑みを浴びた。揺らぐ午後のひとときに見る夢は儚くも鮮やかで、世界の境界線が曖昧になっていく。
夢の中で微笑んでいた君が、隣りにいる不思議。まだ夢を見ているのかな僕は。

Pample(Gâteau au Pamplemousse et aux Fraise)


京都
grains de vanille グラン・ヴァニーユ
http://www.grainsdevanille.com/

20110505

Les Larmes du Croissant de Lune


上げた夜空の月は金色で、清らかな月影は女神の睫毛のようだった。
泣いているの? 不粋な僕の問いかけに、彼女は笑顔で応えてくれた。
春の夜は、静かにすぎていく。

いちごショート(Gâteau aux Fraises)


京都
Le Sucrier ル・シュクリエ
http://lesucrier.web.fc2.com/

20110504

彼女の微笑み


E

lle est pousser un soupir.
春色の吐息に心惑わせて、泡ガラスの窓の向こうに滲む夢の景色を眺めていた。
散ってしまった花びらが、まだ風に舞っているような気がして。

SANO(SANO de Printemps = Mousse aux Fraise et au Chocolat blanc)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110503

ショコラな夜に


B

onsoir, tout le monde!
今日も僕はカフェを訪れる。暇つぶしなんかじゃなくて、暇を弄ぶために。夜は長いし、独りで過したく無い日もあるでしょう? それにほら、良い夢を見たいじゃない。だから美味しい珈琲と、お喋りを楽しみにね。

クラシックショコラ(Chocolat classique)


京都
Café Bastille カフェ・バスティーユ
http://www.bastille.jp/cafe/cafebastille.html

20110502

in the sky, on the table.


のような午後、愛について考えてみた。流れる時の中で愛は、何処へ向かうのだろうか?
愛情は、空や海に似ているのかも知れない。でも僕の愛はきっと、あの儚い雲みたいなものなのだろう。今の僕の愛は。

ビスキュイロール(Rouleau à la crème)


京都
Comme Toujours コムトゥジュール



I thinking about love.
“愛の不思議について”なんかじゃ無くて、人を愛することについて。
失ったものは人(彼女)では無く、(僕の)心なんだと分かってはいるけれど、誇りを取り戻す術も、悲しみを取り繕う手段も見つけられず、僕は戯れに余生を過しているのだろう。
ただ幸いなことに、怒りと虚しさも忘れてしまったので、これでも楽しい日々を送れているんだ。大好きな、甘いお菓子にも囲まれているしね。

20110501

Résonances


時雨に濡れる木陰で、散ってしまった桜を思い出すのは、まだ香りが残っているから。
募らせた恋心に似て、散ってなお薫るのは、桜も乙女も同じようだ。
優しい雨は、春の匂いを残して。

 春時雨 花の木陰で思い出す
          愛しき君の 残り香を

余花(Calice des cerisiers en fleurs)


20110430

花の名残り


L

es adieux au printemps.
風に散り、雨に落ち、儚く震える桜の花よ。僕らの幻想をよそに、今年も力強く咲き誇っていた。だから来年も、また逢いたいと、薫風にそよぐ桜の樹を見上げて呟いた。

名残り(SAYONARA)


京都
嘯月 しょうげつ

20110429

希望の花


ってしまった花びらや、 残された萼より淡く、甘く香る優しさが、僕を夢の国へと誘う。
春の陽射しの眩しさに、手を伸ばした僕の指先をそっと、最後の花びらが撫でていった。

“Sometimes, The World is Mine”
この世界はときどき僕のもの
(Cake au Pistache et aux Fraise)


京都
Nowhereman ノーウェアマン
http://www.nowhereman2010.com/

京都
今宵堂 こよいどう
http://www.koyoido.com/



僕はお菓子に詩を付けている。彼は詩からお菓子を生み出している。
僕はただの戯れで、彼は真剣。そこもまた、正反対だと感じた。でもね、2人にお菓子以外の共通点が無いとしても、この美味しさを共有出来るのであれば幸せだよ。少なくとも僕はね。
イベントに出ていたNowheremanのお菓子を買って、近所の知人の家を訪ねた。其処で、このお菓子に似合うお皿を作っていたから。
偶然が交差した先に物語があるとしたら、それは奇跡と呼べるだろう。当たり前の、日常に溢れる小さな奇跡。それがたとえ、神様の戯れだとしても。

20110428

夢のつづき


L

es jours sont passés comme un rêve.
花は散り、淡い想いとともに川を流れていく。まだ夢の余韻が残る日々の中で少しずつ、僕たちは酔いから醒めていく。
でももう少しだけ、あと少しだけ、その甘い香りの中で。

花筏(Les Pétales traversant)


20110427

L'univers poétique


に咲く、此処が世界の中心。全ての人が、詩人になれる国。
あなたを包む風が、春の夢幻へと誘う。
薄花桜の空の下で、乙女の吐息に咲く薔薇を、僕は探しに出掛けよう。

サクラズ(Sakurase=Macaron aux Framboise à la crème Sakura)


京都
grains de vanille グラン・ヴァニーユ
http://www.grainsdevanille.com/



水色の空を想わせる雰囲気の中、僕は夢の世界の住人になった。北欧の陽射しと微睡みを感じるこの場所では、光の速度も遅くなるような気がして、僕は優しい香りに身を任せた。ふんわりと柔らかな、夢の感触に。
静かに降り始めた雨を眺めながら、儚さとは消え去ることでは無く、思い出を残すことだと、僕はぼんやりと考えていた。

20110426

愛しい人よ


に散った桜はまるで、薄紅色の漣の様で、静寂に聞こえる波の音は優しく、その響きは貴方の名前の温もりに似ていた。
愛しい人よ、今宵、夢の逢瀬で。

苺のミルフイユ(Millefeuille aux Fraise)


京都
Comme Toujours コムトゥジュール

20110425

絶景かな


開の桜を望み、春の絶景を楽しむ。香気は空の境界線を暈かし、月が舞い降りてくる。鶯の歌に導かれて、僕らは桜吹雪に溺れた。
目覚めた先は夢の中。ならば醒めるまで、この花の宴に酔いしれよう。

桜抹茶クリームあんみつ(Annmitsu au Sakura et Mâcha)


20110424

光降る午後に


の寝顔を、太陽が優しく照らしていた。吐息は香り、夢の雲を青空へと浮かべては消えた。
揺らぐ光を吸い込んで、君は静かに微笑んだ。どんな夢を見ているのだろうか? 柔らかな君の唇に、僕はそっと触れてみた。

ヴァシュラン(Vacherin aux Mangue et Ananas)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/



プチジャポネにお願いしたのは、溺れるようなケーキ。そして渡されたのは、マンゴーとアナナスのヴァシュラン。中にはラム酒がたっぷりと含まれており、僕みたいにお酒に弱い人間は、一口で酔ってしまう程だった。
ヴァニラの香りの中で咲いていたのは、白いカーネーション。それはまるで天使の羽根か、聖母の吐息の様に優しかったよ。

20110423

微睡みの中で


に咲く八重桜。その可憐さは微笑む乙女に似て、美しくも儚げだった。僕たちの記憶に笑顔だけを残して、夢に消えた乙女。恋よりも淡い、甘い残り香を追えども姿は見えず、ただ、温もりだけが其処にあった。

桜ロール(Rouleau au Sakura)





綺麗に写せなかったのが残念だけど、これは素晴らしいロールケーキだった。美味しいのはもちろんだけど、その発想力が素晴らしいの。…これ、中に小さな桜餅が入っているんだ!信じられない!
むしやしないのお菓子は素晴らしいものが多いのだけど、僕が上手く写真を撮れないもので、このblogに登場する機会は多く無いんだよね。それがとても、とても残念だよ。

花見弁当


散る春の午後、夢が零れる樹の下で、長閑な午後を楽しむ。花を肴に酔いしれて、日が暮れるまで語ろうか。
時の流れを忘れていたら、東の空から月がやってきて、夜の宴が始まった。

873471?(花見しない?)





写真1枚では説明し難いのだけれど、これはハート型の重箱になっているんだ。マカロンで飾られた竹炭クッキーのお重は、1段目が桜のムースで、2段目には桜のモンブランが入っていた。本当は3段の予定だったけれど、参加人数が増えたので、3段目に入る予定だった桜ロールは別にしてもらった。
いやはや、何ともこれは可笑しなもので、花見にはぴったりなお菓子だったよ。中味を綺麗に平らげた僕たちは、最後にクッキーの重箱を砕いて、これまた綺麗に食べ尽くしたんだ。
そしてそのまま、青空の下で、桜から降る夢を眺めたよ。

20110422

桜吹雪


に舞う雪は薄紅色の、優しい吐息のような桜吹雪。木漏れ日に眼を閉じれば、夢幻の園に迷い込む。
降り続ける桜を眺めながら、夢とも現実とも定かでは無い悠久の午後を、うつらうつらと楽しんだ。

桜生どら焼き(Biscuit à la Crème chantilly au Cerise et Crème d'Azuki)


京都
朧八瑞雲堂 おぼろやずいうんどう

20110421

Montagne au Printemps


方の空を仰げば、夢うつつの春の空。遠く桜を眺める午後は、はらはらと詩の散る。想いは風に、吐息も色づく桜かな。
春景色に、心躍らせて。

桜モンブラン(Mont-Blanc au Cerisiers)