20110106

孤高のメルヘン


は湖に黄金を溶かし、神々の黄昏を夢見た。ワーグナーが奏でる神話をその眼で見んとして、現世の瞼を閉じられた。
その青く清冽なる血に咲く薔薇は、王の夢想。ならば見られよ、香り豊かな終末を。最後の太陽と、愛しき日々の残照を。

クレープシュゼット(Crêpe Suzette)





愛しいghostのケーキが楽しめなくなるかも知れないと聞いたのは、確か夏の初め頃だった。まだ、梅雨の最中だったかも知れない。その不確かな噂はやがて現実となり、戸惑うより早く秋が来て、夢見るうちに冬は訪れ、静かに別れの日がやって来た。夜空の流星が微睡みの彼方に消えるように、音も無く、ただ光の軌跡を残して消え去った。ghostらしい幕切れだった。
別れの日が告げられた時、私はあと何回通えるのだろうかと数えたりしたのだけれど、ふと思い止まった。
『果たしてこれは、別れであろうか?』
永遠と絶対を知ることの無い私達は、幸いにして、幾度かの巡り合わせや、不可思議な縁による螺旋を踊ることがある。そう考えた刹那、遥か彼方の黄昏に、新しい幕が上がるのを感じた。だからサヨナラを告げること無く、私は再会までの夜を歩き続けよう。未来に希望と祝福を祈りながら、この暗闇を愛していこう。