20110308

甘いものはお好きですか? #03


色の星が瞬いていた。夜空は甘く溶けていき、誰かの夢が、月の隣りにふわりと浮かんでいた。僕は初めて、夜を見下ろしていた。全てを優しく包み込む、慈悲深き夜を。
そして僕は、愛に祈りを捧げた。

Chocolate Parfait(Parfait au Chocolat)


東京
Pierre Marcolini Chocolatier ピエール・マルコリーニ
http://www.pierremarcolini.jp/



サダハルもエルメも、偶然に訪れた縁のようなもので、実は最初に目指していたのはこのパフェだった。
『ねぇねぇ、よしながふみの、“愛がなくても喰ってゆけます。”って知ってる? その中に出てくるチョコレートパフェが、超おいしそうなんだけど〜!』
そんな友人の言葉に釣られて、ライブに出掛けるついでに訪ねたってワケさ。
でもその時の僕は、チョコレートよりも生肉の方が似合う男で、渋谷や新宿には出掛けても、銀座なんて地下鉄で素通りするような人間だった。それが何故か、ピエールマルコリーニに向かっていた。思い出すと笑っちゃうよね。
サダハルに迷い込んだ後、なんとか店へと辿り着いた時にはもうチョコレートパフェは売切れで、翌日のお昼に出直した。今度は道に迷わないように、友人に道案内を頼んで。そして念願のチョコレートパフェに会えたんだ。
…銀のスプーンでヒトクチ、ふわっふわのパルフェを食べた瞬間、背中に白い翼が生えて舞い上がった。見たことの無い青空を駆けて、地平線の彼方にある夜の国まで飛んで行き、冷たいチョコレートのアイスクリームを口へと運んだ。そこには星が輝いていた。
三口目の、ヴァニラのアイスクリームとチョコレートソースが溶けていく様は、まるで夢のようだった。だからこそバナナは、優しく見守る三日月に見えて、そこに夜の女神を感じたんだ。
そして僕は、甘いもの好きになった。

今ではこんな、甘いものだけで生きていける人間になっているけれど、それはこんな、
『ありえねえ!!』
出逢いから生まれたのです。冗談のような、本当の話しだよ。