20090929

ある食卓の物語


星が囁くテーブルに見る幻想は、限りなく優しくて、見慣れていたはずの光景の中に、未知の歓びを発見する。知っているのに知らなかったもの。気付かずにいた神秘。ただ、それを優しく教えてくれる紳士が作りだすものは、感じれど触れることが出来ない光や、香れども目に見えない微風や、器により姿形を変える水のように。
私達は、まだまだこの星を知らない。そっと示された小さなサジェスチョンは新しい空想を生む。その一皿に何を見るのかは、人それぞれ。でも必ずそこには優しさがあった。
吐息からこぼれた星の欠片は煌めいて、暗闇を照らしてくれると、私は信じている。

巨大建造物のような建築美を感じるエクレール。残念ながら新宿高島屋にあったガニェールは閉店してしまったけれど、数々の美味しさと感動よりも、記憶に残っている出来事が1つ。
ある晴れた日曜日に、テーブルを囲む家族が一組。何気に視界に入ったのだけど、小さな子供が父親からテーブルマナーを教えられていた。その時、少年の前にあったのが、このエクレール。
慣れぬナイフとフォークで切り分けて、ひとくちパクリ。その時の少年の顔と、父親の笑顔は、やさしさに溢れていたと思うんだ。


東京
La Patisserie PIERRE GAGNAIRE ピエール・ガニェール