20110417

さよならの代わりに


空を想い、花を捧げた。強いチューリップの花を一輪、さよならの代わりに。天国はきっと、あの空の向こうにあるのだろうと、そう思える青さだった。
春に旅立つ貴方へ、感謝と祈りと祝福を。
Au revoir, à bientôt.

ぼにぃぴんく(Bonnie Pink)


京都
松彌 まつや



何故かこの日は目当てのお菓子に振られ続け、4軒目を諦めた後、ふと思い出して買いに走ったのは、チューリップを模した和菓子だった。これと桜餅を片手に友人の店を訪ねた。4時のお茶のお供にと思って。
さて、お茶の準備が出来て、手を合わせようとした瞬間、メールが届いた。アルザスでお世話になった、パパ・フェルベール(Monsieur Maurice FERBER)が亡くなった知らせだった。…様々な事を思い出したけれど、空の青さと、笑顔で握手した時の力強さを特に覚えていた。それから、別れの言葉も。僕がサヨナラと言ったら、また来なさいと言われたっけ。
天国は、ニーデルモルシュビルよりもほんのちょっとだけ遠いと思うんだ。だから再会の日は少しばかり先になりそうなんだけど、また会えるよね。きっと。
気付けば日は傾き始め、通り雨の後の雲間から差す光が、天国への階段のように思えた。花のお菓子を選んだのは、この為だったのかと思い、手を合わせてお祈りをした。そして誓った。再びニーデルモルシュビルのメゾン・フェルベールを訪れた時は、やっぱり僕は、ただいまと言うと。パパに聞こえるようにね。

2011年3月29日17時、モーリス・フェルベール氏、永眠。
ここに深い哀悼の意を表すとともに、感謝と祈りを捧げます。