20110430

花の名残り


L

es adieux au printemps.
風に散り、雨に落ち、儚く震える桜の花よ。僕らの幻想をよそに、今年も力強く咲き誇っていた。だから来年も、また逢いたいと、薫風にそよぐ桜の樹を見上げて呟いた。

名残り(SAYONARA)


京都
嘯月 しょうげつ

20110429

希望の花


ってしまった花びらや、 残された萼より淡く、甘く香る優しさが、僕を夢の国へと誘う。
春の陽射しの眩しさに、手を伸ばした僕の指先をそっと、最後の花びらが撫でていった。

“Sometimes, The World is Mine”
この世界はときどき僕のもの
(Cake au Pistache et aux Fraise)


京都
Nowhereman ノーウェアマン
http://www.nowhereman2010.com/

京都
今宵堂 こよいどう
http://www.koyoido.com/



僕はお菓子に詩を付けている。彼は詩からお菓子を生み出している。
僕はただの戯れで、彼は真剣。そこもまた、正反対だと感じた。でもね、2人にお菓子以外の共通点が無いとしても、この美味しさを共有出来るのであれば幸せだよ。少なくとも僕はね。
イベントに出ていたNowheremanのお菓子を買って、近所の知人の家を訪ねた。其処で、このお菓子に似合うお皿を作っていたから。
偶然が交差した先に物語があるとしたら、それは奇跡と呼べるだろう。当たり前の、日常に溢れる小さな奇跡。それがたとえ、神様の戯れだとしても。

20110428

夢のつづき


L

es jours sont passés comme un rêve.
花は散り、淡い想いとともに川を流れていく。まだ夢の余韻が残る日々の中で少しずつ、僕たちは酔いから醒めていく。
でももう少しだけ、あと少しだけ、その甘い香りの中で。

花筏(Les Pétales traversant)


20110427

L'univers poétique


に咲く、此処が世界の中心。全ての人が、詩人になれる国。
あなたを包む風が、春の夢幻へと誘う。
薄花桜の空の下で、乙女の吐息に咲く薔薇を、僕は探しに出掛けよう。

サクラズ(Sakurase=Macaron aux Framboise à la crème Sakura)


京都
grains de vanille グラン・ヴァニーユ
http://www.grainsdevanille.com/



水色の空を想わせる雰囲気の中、僕は夢の世界の住人になった。北欧の陽射しと微睡みを感じるこの場所では、光の速度も遅くなるような気がして、僕は優しい香りに身を任せた。ふんわりと柔らかな、夢の感触に。
静かに降り始めた雨を眺めながら、儚さとは消え去ることでは無く、思い出を残すことだと、僕はぼんやりと考えていた。

20110426

愛しい人よ


に散った桜はまるで、薄紅色の漣の様で、静寂に聞こえる波の音は優しく、その響きは貴方の名前の温もりに似ていた。
愛しい人よ、今宵、夢の逢瀬で。

苺のミルフイユ(Millefeuille aux Fraise)


京都
Comme Toujours コムトゥジュール

20110425

絶景かな


開の桜を望み、春の絶景を楽しむ。香気は空の境界線を暈かし、月が舞い降りてくる。鶯の歌に導かれて、僕らは桜吹雪に溺れた。
目覚めた先は夢の中。ならば醒めるまで、この花の宴に酔いしれよう。

桜抹茶クリームあんみつ(Annmitsu au Sakura et Mâcha)


20110424

光降る午後に


の寝顔を、太陽が優しく照らしていた。吐息は香り、夢の雲を青空へと浮かべては消えた。
揺らぐ光を吸い込んで、君は静かに微笑んだ。どんな夢を見ているのだろうか? 柔らかな君の唇に、僕はそっと触れてみた。

ヴァシュラン(Vacherin aux Mangue et Ananas)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/



プチジャポネにお願いしたのは、溺れるようなケーキ。そして渡されたのは、マンゴーとアナナスのヴァシュラン。中にはラム酒がたっぷりと含まれており、僕みたいにお酒に弱い人間は、一口で酔ってしまう程だった。
ヴァニラの香りの中で咲いていたのは、白いカーネーション。それはまるで天使の羽根か、聖母の吐息の様に優しかったよ。

20110423

微睡みの中で


に咲く八重桜。その可憐さは微笑む乙女に似て、美しくも儚げだった。僕たちの記憶に笑顔だけを残して、夢に消えた乙女。恋よりも淡い、甘い残り香を追えども姿は見えず、ただ、温もりだけが其処にあった。

桜ロール(Rouleau au Sakura)





綺麗に写せなかったのが残念だけど、これは素晴らしいロールケーキだった。美味しいのはもちろんだけど、その発想力が素晴らしいの。…これ、中に小さな桜餅が入っているんだ!信じられない!
むしやしないのお菓子は素晴らしいものが多いのだけど、僕が上手く写真を撮れないもので、このblogに登場する機会は多く無いんだよね。それがとても、とても残念だよ。

花見弁当


散る春の午後、夢が零れる樹の下で、長閑な午後を楽しむ。花を肴に酔いしれて、日が暮れるまで語ろうか。
時の流れを忘れていたら、東の空から月がやってきて、夜の宴が始まった。

873471?(花見しない?)





写真1枚では説明し難いのだけれど、これはハート型の重箱になっているんだ。マカロンで飾られた竹炭クッキーのお重は、1段目が桜のムースで、2段目には桜のモンブランが入っていた。本当は3段の予定だったけれど、参加人数が増えたので、3段目に入る予定だった桜ロールは別にしてもらった。
いやはや、何ともこれは可笑しなもので、花見にはぴったりなお菓子だったよ。中味を綺麗に平らげた僕たちは、最後にクッキーの重箱を砕いて、これまた綺麗に食べ尽くしたんだ。
そしてそのまま、青空の下で、桜から降る夢を眺めたよ。

20110422

桜吹雪


に舞う雪は薄紅色の、優しい吐息のような桜吹雪。木漏れ日に眼を閉じれば、夢幻の園に迷い込む。
降り続ける桜を眺めながら、夢とも現実とも定かでは無い悠久の午後を、うつらうつらと楽しんだ。

桜生どら焼き(Biscuit à la Crème chantilly au Cerise et Crème d'Azuki)


京都
朧八瑞雲堂 おぼろやずいうんどう

20110421

Montagne au Printemps


方の空を仰げば、夢うつつの春の空。遠く桜を眺める午後は、はらはらと詩の散る。想いは風に、吐息も色づく桜かな。
春景色に、心躍らせて。

桜モンブラン(Mont-Blanc au Cerisiers)


20110420

遠山桜


を染める桜吹雪に傾いてみれば、常世の夢に彷徨う。うたた寝に見る夢は泡沫の、短き戯れの酔夢。ならば歌おう、満月の空に。欠けることも満ちることも無い、久遠の空に。

TOYAMA(Mousse aux Cerise à la Japonais)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/



久しぶりの青空に浮かれて出掛けてみれば、仰ぎ見た枝垂桜の上には白い月が浮かんでいた。春の旋風に舞う桜吹雪の中で、重力を忘れて魂を飛翔させると僕は、満月の上で寝転んで、桜を眺めながら昼寝を楽しんでいたんだ。
そんな夢を見れるほどの、良い天気だったんだよ今日は。

20110419

月のアルマセニスタ


から溢れた香気は光となりて、今宵の夜空に降りそそぐ。
聖母楽団と百花天使たちと共に船に乗り込んだ僕たちは、満月に歌い、酒と花と戯れた。
降り出した雨は香水のように香り、銀色の虹を描く。その日、全ての堕天使たちは赦されて、最後の琥珀を海へと捧げた。

シュー・ア・ラ・クレーム(Chou à la crème Amontillado del puerto)


20110418

花の春日


の風に舞う想い。川の水に流れる匂い。落ちた花の先に咲く、詩のような心と心。巡り来る春の、出逢いと別れ。
桜は散りゆきて、僕の記憶にまた、様々な想いが綴られた。泡沫の、美しき春の日々が。

桜餅(Sakura-mochi)



torinouta トリノウタ
http://www.torinouta.jp/



桜に心魅かれるのは、儚さや美しさだけでは無く、何か引力のようなものを感じるからで、…いや、それを魅力と呼ぶのだろうか?
桜の香り、春の匂い、夢の色。空を覆い、雨のように振る桜の花びらに、濡れて歩くのも春の楽しみだろう。桜吹雪に迷ったとしても、あの人に会えるのならと。

20110417

さよならの代わりに


空を想い、花を捧げた。強いチューリップの花を一輪、さよならの代わりに。天国はきっと、あの空の向こうにあるのだろうと、そう思える青さだった。
春に旅立つ貴方へ、感謝と祈りと祝福を。
Au revoir, à bientôt.

ぼにぃぴんく(Bonnie Pink)


京都
松彌 まつや



何故かこの日は目当てのお菓子に振られ続け、4軒目を諦めた後、ふと思い出して買いに走ったのは、チューリップを模した和菓子だった。これと桜餅を片手に友人の店を訪ねた。4時のお茶のお供にと思って。
さて、お茶の準備が出来て、手を合わせようとした瞬間、メールが届いた。アルザスでお世話になった、パパ・フェルベール(Monsieur Maurice FERBER)が亡くなった知らせだった。…様々な事を思い出したけれど、空の青さと、笑顔で握手した時の力強さを特に覚えていた。それから、別れの言葉も。僕がサヨナラと言ったら、また来なさいと言われたっけ。
天国は、ニーデルモルシュビルよりもほんのちょっとだけ遠いと思うんだ。だから再会の日は少しばかり先になりそうなんだけど、また会えるよね。きっと。
気付けば日は傾き始め、通り雨の後の雲間から差す光が、天国への階段のように思えた。花のお菓子を選んだのは、この為だったのかと思い、手を合わせてお祈りをした。そして誓った。再びニーデルモルシュビルのメゾン・フェルベールを訪れた時は、やっぱり僕は、ただいまと言うと。パパに聞こえるようにね。

2011年3月29日17時、モーリス・フェルベール氏、永眠。
ここに深い哀悼の意を表すとともに、感謝と祈りを捧げます。

20110416

乙女桜


の笑う季節に、ひらひらと風に踊る薄紅は、まるで乙女の吐息のようで、淡く霞んだ空は微睡みに似て、全ての輪郭を甘く溶かしていく。ただ1つだけ鮮明に覚えていたのは、桜の花の色と艶。恋するほどに、花びらは紅に染まるのだろうか。

マカロン(Macaron aux fraise)


京都
Pâtisserie Exquise エクスキーズ

20110415

春に咲く


く花の永遠は、優しさの中に。時が止まった城の中に咲いていたのは、希望という名の花。冬の終りにサヨナラを告げ、春の扉を開く鍵、桜草だった。
悪戯に妖精が止めた時間の中で、私は春と戯れた。

エルドベアトルテ(Erdbeer Torte)


20110414

すずらんの音色


くように、囁くように、君の心に寄り添うよ。
離れていても、眠っていても、君の心に寄り添うよ。
例えばそれは、月のように。時にはそれは、雲のように。君が君を忘れたとしても、君の心に寄り添うよ。

フィナンシェ(Financier)


東京
Cura² クーラ
http://cafe-cura.com/



記憶の片隅に、そっと寄り添う。そんな印象を受けた、お菓子と珈琲。ふらりと訪れた店内は、初めてなのに優しく落ち着いていて、まるで以前からそうであったかの様にこの店は、お気に入りのカフェに加えられてしまった。僕の記憶なんて曖昧だから、この店も、通い慣れた店も、等しく愛してしまうのだろう。
この椅子にも、テーブルにも、並べられた本や、淡いランプの灯りにさえも、不思議と愛着を覚えた。僕では無い僕が、何度も通っているのだろうか? それともこれは、未来の僕が感じているものなのだろうか?

リンと小さな鈴の音(ね)がして、僕は微睡みから目覚めた。読みかけの本に栞を挟み、静かにその本を閉じた。
話しの続きは、夢の中の僕が読むだろう。

20110413

遠い星


いを馳せる。空を越え夢を越え、あなたの温もりの隣りへ。
涙の雫が星になり、微睡みの淵ではじける頃に、祈りは小さな十字架に変わる。
2人にしか見えない、愛しい道標。どうかお願い、この夜を照らして。

Mousse au Champagne(ムース・オ・シャンパーニュ)


京都
Citron Salé シトロン・サレ
http://speem.com/citron/

20110412

FRUITS CLiPPER


しか無いから、僕はそれを食べた。
僕には愛しか残されていないから、それを捧げた。
ただ、愛だけを。
そして綺麗な花が、人知れず空に咲いた。

タルトフレーズ(Tarte aux Fraises)


20110411

桜の草庵


のような青空に、桜の花が咲いていた。姿は見せぬ鶯が、春を長閑に歌っている。
ふと見上げると、はらはらと舞う桜。そのひとひらが、ふわりと髪にかかる。手に取ると、悪戯な風にさらわれて、朧な月へと帰っていった。

抹茶黒みつロールケーキ(Rouleau au thé vert et Agar au muscovado)


20110410

ユメウツツ


醇な太陽のアロマを思い出す、柔らかなランプの灯り。夜の寂しさと、眠りに落ちるまでの短い道を、光は淡く優しく照らしていた。夢枕で空想の羽根ペンをくるくると回していると、フワリと甘い記憶が蘇る。その微笑みを、微睡みの日記に綴った。
吐息は寝息へと代わり、文字は夢へと変容していく。おやすみ。昨日へと消えゆく今日の残り香よ。

バナナのエクレア(Éclair aux Banane)


京都
pâtisserie fraicheur フレシュール

20110409

キスの意味


は香る。風は踊り花を咲かせていく。幾つもの花を。美しい花々を。
花の咲く理由なんて、愛以外にあるのだろうか?
だからもう一度キスを。

ルージュ・ベゼ(Rouge Baiser)


京都
pâtisserie Tendresse タンドレス
http://kyotocake.com/



シルエットは変わったけれど、花椒(Poivre Sechan)の香りと苺の可憐さはそのままに、もっと芳醇で愛しい味へと進化していた。優しいよりも、豊かなハーモニーよりも、もっと適切な表現を探すのならば、やはりこれは愛と呼ぶしか無いのだろう。それも、とても美しい女神との。
こんなにも愛しいお菓子を作る職人が京都に居ることを、僕は誇りに思う。だからこそ、このblogに書き続けているのだけれど。

20110408

Le Poète Violette


い出は菫色。花の咲く幻。幻想の森へ溢れる言葉を文字にして、青空に手紙を書いたの。
もう、読めなくなってしまったけれど、ペン先に残った一雫が、幽かに香っていたわ。

ヴィオレット・デ・ボワ(violette des bois)


京都
pâtisserie Tendresse タンドレス
http://kyotocake.com/



長らくお休みされていたので、随分と心配しました。掛ける言葉が見つからず、待つことしか出来ませんでした。
そして再開…いや、私達にとっては嬉しい喜びの再会でしたが、そこにはあの、タンドレスとして再出発した日にも並んでいた、菫のお菓子がありました。以前よりも更に、さらに優しくなって。
喜びと感謝と…あと、私達に出来る事は何だろうかと、花の咲く余韻の中で、静かに考えるのでした。

20110407

夜空の女神


と祈りの全てを捧げる存在であり、あらゆる芸術と美術の女神にして、詩人が追い求める永遠の恋人よ。
夜空に散らばる星辰の詩編を集めて僕は、紫の女神への贈り物とした。月の眠る夜に、こっそりとね。

Muse(Mousse au Mûre)


京都
Patisserie petitjaponais プチジャポネ
http://plus5.jp/pj/

20110406

花の季節


雪の下で眠る、春の花とトキメキよ。その甘い夢を、僕に教えておくれ。君が夢見る、春の夢を。
咲き誇る前の乙女にも似た、気丈なる清廉と美しさを、僕はここに見つけた。春よ、麗しき春よ。

苺のショートケーキ(Gâteau aux Fraises)





これは僕のワガママでしか無いのだけれど、この愛しいショートケーキのビスキュイを、日本人好みの柔らかいものに変えようかと悩まれていると聞いた時は、正直動揺した。だって、僕はこの、ほろほろと崩れていく食感と儚さを、とても愛していたのだから。
結局のところ、ビスキュイは今まで通りのものでやって行く事となり、僕は一安心した。そこで考えたのは、僕たちはあまりにもワガママでは無いだろうかという現実だ。無知故に、愛情に欠けるが故に僕たちは、作り手側に大きな無理を強いているのでは無いだろうか?
だから僕は、今まで以上に感謝して食べようと誓ったし、職人が目指すものを追い求められる環境と文化が、早く日本に根付いて欲しいと祈った。本当に、お願いだから、お店や職人へ文句を言う前にもっと、感謝と感動を伝えて欲しい。美味しい食事と、素晴らしい未来の為に。

20110405

咲く花の美しさ、散る花の美しさ。


霞の舞う空の下で、桜の樹を眺めていた。花は笑い、葉はさやさやと囁いていた。見上げた青空に月が居ないのを不思議に思った僕は、心が舞い上がりすぎていたのだろうか?
春の香りと戯れて、しばし微睡む。訪れたのは、美しい朧月夜であった。

花宴(Hana no En : Banquet de printemps : Le Dit du Genji #08)





桜の花に、貴方は何を想うのだろうか? 僕の友人達は、物悲しいとか、寂しいとか、とかく別れのイメージが強いようだ。
そんな感傷的な感覚を持ち合わせていない僕は、ちょっとおかしいのでは無いかと思ったけれど、桜に別れのイメージを重ねるのは、3月には開花する西日本の人々であったり、桜=卒業や別れのイメージで歌うJ-POPが山の様にあるからだと気付いて、なんだか少し安心したんだ。
江戸期の武家や、戦中戦後の人々が、桜の潔さに死をイメージした気持ちも分かるけれど、やはり僕は、毎年楽しく愛でたいと思わずにはいられない。
色は匂へど散りぬるを
花の色気が色香に変わるのを楽しみとしているのだから、悲しむ暇なんて無いよ僕には。

ねぇ、君には、毎年出会うのを楽しみにしている桜の樹があるかい?

20110404

春に咲く幻想


に宿る、淡く儚い夢の香り。微睡みに瞬くのは薄紅色の胡蝶だろうか。幻は、夜は花灯りに遊び、昼は花影に踊っていた。…見えない雨が、虚空に穏やかな余韻を残し、想い出のうちに消えていく。
すれ違う微風が奏でたのは、恋の残り香のようであった。

Les Confitures Extra de Christine Ferber
“Kyoto”
(framboises et griottes d'Alsace à la rose)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール

KYOTO


都の吐息。京都の眼差し。僕らは何も知らない。目に映る全てに宿る、見えない余韻。耳に届かぬ全てに響く、聴こえない囁きを。
はんなりと、香る匂い。陰に咲く幻の花。陽の光に佇む僕たちの、影に寄り添う優しさに似て。何も知らない僕たちは、全てに包まれて生きている。
掬った一匙の幻想と、ガラスの小瓶が落とした影を、ルージュに染める、彼女の淡い夢よ。

Les Confitures Extra de Christine Ferber
“Kyoto”
(framboises et griottes d'Alsace à la rose)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



去年の秋に、マダム・クリスティーヌのアトリエを訪れた際には、まだそれはイメージの世界だけだった。だから僕は悪戯っぽく、エヴァンさんの新作ガトーは、京都よりも奈良のイメージでしたよと言うと、彼女は笑顔でこう応えた。
『大丈夫。私は京都をイメージしているわ。任せて!』
そして年が明けて、伊勢丹のSDCに持って来られたのが、このコンフィチュール。名前も“Kyoto”だ。僕は嬉々として蓋を開け、京都の友人達と庭を眺めながらいただく事にした。
…薔薇の花びらは、空に舞う桜だろうか。いや、緑に落ちた花弁のようでもあるし、余花をも想わせてくれる。グリオットは古都の気配を伝えるとともに、祇園界隈の石畳を思い出させてくれた。何よりも、そのルージュの色と艶が、京都らしさを物語っている。紅の和傘が、影に落とす色。舞妓の柔らかい唇。連なる鳥居。夜の紅い提灯や、ぼんぼりの温もり。あとは…そうだな、血の色だ。受継がれてきた歴史の色。この街に息づいている、深く優しい気配。とても京都らしいと感心し、同時に僕は、彼女以上に京都を知っているのだろうかと悩んでしまった。
甘い余韻の中、冬の庭を眺めていると、桜の老木に幻の花が咲き誇った。それは妖精の魔法だったのかも知れない。

いつか彼女とご家族に、美しい京都の桜を見せてあげたいと思い、この桜の樹にお願いをした。

20110403

夢の雫


れた涙の一雫が、心に静かな波紋を描いては消えた。悲しみとか、切なさとか、それらとは違う想い。例えるならば、桜咲く風景を眺めた時の、歌人の心境に近いのかも知れない。
風に揺れては微笑んで、青空に、夜闇に、はらはらと花弁を散らしていく。落ちた花びらに僕たちは、想いを重ねていく。その想いにまた、桜は花びらを贈るのだろう。

フレジェ(Fraisier)





3月22日、また1つ、僕は居場所を失った。好きな店が無くなるのは寂しいもので、残念に思う。いつまでも在ると思い込んでいた幻想が、突然終りを告げる。正直に言えば、やはり悲しみを感じてはいるんだ。
でも、この店のオーナーであった小林君は、見ていて飽きない。何か不思議と期待してしまうし、興味が尽きない。彼が作るお菓子と同じく、僕の想像なんてものを、軽く飛び越えていくんだ。だからきっと、また何処かで会うことになるのだろう。その場所にお菓子があって、僕が其処へ通えることを、最後の一皿に願った。
ちなみにこのフレジェの形、僕にとっては、涙よりも花びらのように見えていたんだ。桜が咲くよりも早くに散ってしまったけれど、その皿の上に、余韻の中に、僕は桜の花を夢見ていたよ。

それではまた。ごきげんよう。

20110402

Le Lac des Cygnes


は踊る。静かな夜の湖で。雲間から差す月影は、可憐な白鳥たちの幻想を見せてくれた。月の光は羽毛のように柔らかく、煌めく細波に踊っている。
湖畔に音楽が流れ始めた頃には、僕はその幻に、初恋の人を探していた。

タルトショコラ(Tarte au chocolat)


京都
Comme Toujours コムトゥジュール

20110401

Kiss me forever


に花が咲いていた。ただそれを眺めていた僕は、触れることの出来ない香りにそっと、サヨナラのキスをした。月の雫は甘く輝いて、少しだけ時を止めた。思い出を夢に変える、刹那の吐息の時間だけ。

苺クリームサンド(Soy bagel, Strawberry Cream sandwich)


京都
Radio Bagel レディオベーグル
http://www.radiobagel.com/
京都市北区上賀茂池端町9 久世ハイツ101