20101105

優しさはいつも其処にある


V

ous êtes avoir le coeur d'or.
心に秘めた優しさは、花が香るように溢れる。見えない温もりと愛情は、穏やかな暖かさとして伝わってくる。過ぎ去りし日々が想い出に変わる頃、君はどんな女性になっているのだろうか?

Tarte Linzer(リンツァー)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



5歳のサロメちゃんは、京都のオ・グルニエ・ドール(AU GRENIER D'OR)にて、リンツァートルテを口にして、
『うちのリンツァーより、美味しいわ。』
なんて小さな声で言ってたけれど、このハートのリンツァーは、なかなかどうして、愛情に溢れた、素朴で素敵なお菓子だった。
ちょうど学校から帰って来たサロメちゃんに、このお菓子は好きかと尋ねたら、
『大好き!』
そう笑顔で答えてくれた。
伝えるべき味があって、それを喜ぶ人々がいて、家族で囲む、美味しく楽しい食卓がある。それは素晴らしい事なんだと、僕は初めて感じたのかも知れない。

20101104

夢に溺れて、雲にたゆたう。


I

l est absorbé dans sa douce rêverie.
その日は朝から、村中が霧に包まれていて、空は1日中雲に覆われていた。それでも遠く太陽を感じるのは、霞がかった世界が全て、淡く光っていたからだろう。
見えない霧の向こう側では、妖精たちのパレードが始まっているかも知れないし、僕はすでに、雲の上に居るのかも知れない。なんてコトを考えながら、午後のお茶を楽しんだ。

Éclair Vanille(エクレール・ヴァニーユ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



エクレアを持って階段を駆け上がると、マダム・エリザベスがリビングルームから声をかけてくれた。
『もう昼食は終わったけれど、こっちで食べる?』
スヌーピー(フェルベール家の愛犬)も、ヨタヨタと近付いて来た。
でも僕は、白いエクレアを白い中庭で楽しみたかったので、
『テラスで食べたいので、お皿だけ貸してください。』
遠慮してるの?なんて顔をされたけど、違うのですマダム。白日夢が見れそうなほどに甘いエクレアを、夢のすぐ近くで楽しみたかったのです。

静かな遠雷の閃きに


É

crire au gré de l'imagination.
厚い絨毯や、手触りの良いヴェルベルットのような暖かさ…いや、書斎の窓の、すきま風に揺れたカーテンに似ていたのかも知れない。安心出来る、優しいショコラだった。
溶けていく甘い時間の中で、僕は筆を走らせた。ショコラの夜を駆け上り、煌めく星に辿り着きたかったから。

Éclair Chocolat(エクレール・ショコラ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



マダム・クリスティーヌが来日された時、シュー生地の話しを少しだけした。彼女が言うには、パリッとサクッとしているだけではダメなのだそうだ。
『でもねマダム、最近のエクレアは、焼き込まれてサックリとしてますよ。』
『流行ではあるのだけれど…。イオリ、シュー生地に空気が含まれている意味を、考えたことがあるかしら?』
その時は、言葉の意味が分からなかったけど、このエクレアを口にして、理解出来た。空気は空気感であり、そこには風景がある。何処で作られたのか、誰が作った物なのか。それが人の温もりや優しさを伝えるものでないと、お菓子では無いのですよねマダム?
クレームショコラに使われているクーベルチュールは、知っている物だったけれど、シュー生地の雰囲気は、初めて出会った優しさだった。

20101103

愛しい人よ


L

a chocolat s'éveiller des souvenirs.
香りを辿ると、そこには想い出が咲いていた。その花の名前は、初恋だったかも知れないし、初めて愛した人の記憶であったのかも知れない。何故ならそれは、とても心地良かったから。深い眠りの中で微睡むような、幸福な感覚が、溶けていくチョコレートの中に咲いていたんだ。

Chocolat frambois(ショコラ・フランボワーズ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



キッチンで、待ち切れない僕は思わず一口食べてしまったんだけど、ブルノーは笑いながら、
『沈む夕日が綺麗だから、庭で楽しもう!』
そう言って彼は、椅子とテーブルを運んでいった。僕はコーヒーカップ片手に追いかけて、並べられたデッキチェアに深く腰を下ろし、二口目を忘れるほどに美しい夕日を眺めながら、しばし茫然としていた。
『食べる?』
差し出された(山盛りの!)フランボワーズの香りで我に返り、その柔らかな甘味と酸味を楽しんでいる時に、ふと気が付いた。ショコラとフランボワーズの関係を。
太陽は、西の空と葡萄畑を赤く染め、黄金の光条を放ちながら、明日へと沈んでいく。振り返るように見上げた紺色の空には、もう星が瞬いていた。

20101102

豊穣


J

'ai promener dans la forêt profonde.
恵み豊かな森の、贈り物。生い茂る木々から零れたプレゼントは、秋風薫る手紙。大地の喜びと、森の慈しみを感じながら、ゆるやかに時は溶けてゆき、秋の物語が始まる。
やがて降る雪すらも、暖かく感じるほどの愛を、僕は木漏れ日の下で見つけた。秋色の、君の瞳の中に。

Torche aux Maron(トルシュ・オ・マロン)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



窓から庭を眺めると、マダム・クリスティーヌが育てた、美しい木々と花々が輝いていた。
スプーンでひとくち。そしてやわらかな光りの中で目を閉じると、甘味の中に赤い薔薇が咲いたような気がしたんだ。もっともそれは幻なんだけど、夢を見させてくれる優しさが、このモンブラン(フランスでは、トルシュ・オ・マロン)には溢れていた。青空を感じたのは、水色のお皿のせいなのかな?
マダム・クリスティーヌと、ダヴィ、ジョフレの3人は、新しい花壇を楽しそうに作っていたけれど、森を散歩して疲れた僕は、この一皿の上に広がる白日夢を、ゆっくりと楽しむことにしたんだ。

20101101

薔薇の乙女

E

lle m'a souri temdrement.
全ての女性の中にある、花のような笑顔。それを僕は、薔薇に例えよう。君が笑うだけで世界は、こんなにも美しく、こんなにも愛しく思えるんだ。
恋よりも、愛よりも大切な、永遠の約束をしよう。このキスと供に。

Religieuse (Rose et Framboise)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



愛らしいピンクのルリジューズは、花の溢れる街(Ville Fleurie)に相応しいお菓子でした。ただ、写真を撮り忘れており、残念でなりません。いくつかのケーキだけで無く、人々の笑顔も、風景も、全ては私の心の中にしか記憶されておらず、だからこそそれは、まるで夢のように感じるのでしょう。
いや、写真を撮っていたとしても、撮っていなかったとしても、感動を記録出来るメディアなんて、心の記憶以外にありません。…そうだな、だったら少しだけ、今まで書かなかった心の軌跡や記憶なんてものを、蛇足ながら付け足してみようか。夢を忘れ無いためにも。

妖精の村


L

e village de la fée.
夜が終り、永遠は未来へと変わる。そして遠く遥か、黒の森を望む妖精の村に、朝がやって来た。淡く滲む水色の空を、うっすらとピンクに染めながら、太陽は静かに昇る。なだらかな丘を駆け上る、黄金の朝。窓から眺める風景は、僕の知らない世界だった。
眠りから覚めても続く、夢の世界。ニーダーモルシュヴィルの1日が始まる。

縁あって、妖精の村にお世話になりました。日本語しか話せぬ私を、暖かく迎え入れてくれた方々に、メゾン・フェルベールの皆様に、感謝とお礼を。ありがとう。愛情溢れる、すばらしい日々でした。
普段通りに、写真と文章を並べていきますが、皆様の笑顔を思い出しながら、皆様の声を思い出しながら、あの時に伝えられなかった感動を、(お菓子だけなんだけど)ここに記していきます。また会う日を夢見て、想い出をなぞりながら。

※当blog中に書かれているフランス語は、プチ・ロワイヤル仏和辞典の用例であったり、それをツギハギしたものです。iPhone/iPad用のAppですが、旅行先ではお世話になりました。
もっとも、私が使うより、フランス人が日本語訳を知るために使うことの方が多かったけれど(苦笑)


Le Magician
Iori Shinagawa