20101104

静かな遠雷の閃きに


É

crire au gré de l'imagination.
厚い絨毯や、手触りの良いヴェルベルットのような暖かさ…いや、書斎の窓の、すきま風に揺れたカーテンに似ていたのかも知れない。安心出来る、優しいショコラだった。
溶けていく甘い時間の中で、僕は筆を走らせた。ショコラの夜を駆け上り、煌めく星に辿り着きたかったから。

Éclair Chocolat(エクレール・ショコラ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



マダム・クリスティーヌが来日された時、シュー生地の話しを少しだけした。彼女が言うには、パリッとサクッとしているだけではダメなのだそうだ。
『でもねマダム、最近のエクレアは、焼き込まれてサックリとしてますよ。』
『流行ではあるのだけれど…。イオリ、シュー生地に空気が含まれている意味を、考えたことがあるかしら?』
その時は、言葉の意味が分からなかったけど、このエクレアを口にして、理解出来た。空気は空気感であり、そこには風景がある。何処で作られたのか、誰が作った物なのか。それが人の温もりや優しさを伝えるものでないと、お菓子では無いのですよねマダム?
クレームショコラに使われているクーベルチュールは、知っている物だったけれど、シュー生地の雰囲気は、初めて出会った優しさだった。