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émoires de la roseどうして薔薇は美しいのだろうか?なんて考えてみた。
もっとも、その答えはすでに、そう、ずっと前から分かっていたことなんだけどね。
溶けていく吐息の中で、僕は薔薇が生まれる瞬間を知った。
Tarte Chocolat-Framboise
最後の日はやっぱり感傷深くなり、朝霧の中、葡萄畑を散歩して、1人で教会へ行き、祈りの後もただ、ステンドグラスから差し込む七色の光りを眺めていた。
光について小一時間ほど考えた後、休日のメゾンフェルベールへ向かうと、既にお菓子教室が始まっていて、皆さん楽しそうに喋りながら、いくつものお菓子を作っていた。
僕は軽く挨拶をして二階へ上がり、クリスティーヌのパパとママに、お世話になったお礼を述べた。僕のフランス語は辞書が喋ってくれるだけだから、伝え切れないことはたくさんある。だから想いを込めて、パパの黄金のノート_前のページを捲ってみると、この店を訪れた様々な人が、メッセージを残されていた。それがパパの黄金(宝物)なのだ_に、水色のペンで書き込んだ。せめて気持ちだけは残そうと思って。
しばらくすると、下から良い匂いがゆっくりと登って来て、クリスティーヌが僕を呼ぶ声がした。降りると、ショコラとフランボワーズを使った(出来立ての!)お菓子が数種類並んでおり、試食の真っ最中だった。
『みんなで作ったの。食べてみて。それから、あなたが描いたスケッチを、皆に見せてあげて。』
僕はいつものノート(Moleskineのスケッチブックに、水色のペンでお菓子のスケッチを描き綴ったもの)を手渡して、代わりに沢山のお菓子を受け取った。タルトレット、ケーク、クレープetc.ショコラとフランボワーズを使った、お菓子の数々。
Merci!
C'est très bon!
それは、お店に並んでいるものとも違って、もっと…そうだな、もっと優しく家庭的な味だった。笑顔になるお菓子だ。そして、とても安心するお菓子。
見えないんだよね。簡単には。ただ、忘れているだけなんだけどさ。