B
onne odeur qui vient on ne sait d'où.それは太陽の残り香。残照に香る想い出だった。降り積もる枯れ葉の散歩道。忍び寄る夜の静けさの中、僕は家路を急いだ。暖かい暖炉の火と、君の笑顔を求めて。
Crépuscule(クレピュスキュル)
ふと見ると、名前の書かれていないケーキが並んでいて、ジュリとカレンに名前を尋ねても、肩をすくめられるだけ。そこでクリスティーヌに尋ねると、
『古くからあるケーキだけど、特に名前は無いのよ。…そうだ、あなたが名前を付けてみて。』
そう言われたので、ゆっくりと味わいながら考えてみた。
アーモンドスライスの食感や、ショコラとプラリネの風味から、イヴ・モンタンの“Les feuilles mortes”が思い浮かんだけど、ちょっとしっくり来ない。次に、砕いたキャラメルから、太陽の欠片を想像したけれど、これも違う。…うーん、ネーミングってものは、意外と難しい。
考えているうちに全て食べてしまい、それでも甘い余韻の中で悩んでいると、ふと懐かしい香りがした。気付けばもう夕方で、太陽は西の空を赤く染めていた。
『…あぁ、そうか!』
良い名前を思いついたので、クリスティーヌに伝える前に、僕は2つめのケーキに手を伸ばした。