20101112

Sweet Memories


À

la page mille.
前のページをちょっと読んでみたり、たまには最初から想い返すように眺めることもあるけれど、今日も純白の新しいページにペンを走らせる。時のインクと、気まぐれな羽根ペンで、ことのはを、今日の物語を書き綴るの。
時には涙で滲んだり、どんなに眺めても読めない文字が並ぶことはあるけれど、全ては想い出に変わっていくわ。昨日がそうであるように。

Millefeuille(ミルフイユ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



火曜日までノンビリする予定が、ストで列車が止まる前にパリへ向かうこととなり、皆さんの仕事を眺められるのも、今日(日曜日)が最後。クリスティーヌが、思い残すことは無い?と尋ねるから、僕はとても真剣な顔で、
『マダム、…ミルフイユを、もう一度食べたかったです。』
そう答えたの(苦笑)
『あら、今から焼くから、食べれば良いじゃない(笑)』
なんだ、日曜限定だから、平日には並んでいなかったのか。
『他には?アルザスには美しい風景や建物がたくさんあるけど、観光しなくて良かったの?』
朝から晩まで1日中、作業を眺めて(つまみ食いして)いるだけの僕を不思議に思い、遠慮しているのでは無いかと心配してくださるのだけれど、日々の作業を眺めることが、何より僕には楽しかったのです。
お菓子、パン、総菜、パーティーやデリバリー用の料理の数々、そしてコンフィチュール。こんなにも楽しいものを見放題なのに、観光している暇なんてありませんよマダム!
…あぁ、葡萄の収穫を手伝えなかったのは、ちょっと残念だったかな。
『観光は次回にします。その時はまた、案内してくださいね。』
『そうね、また来たら良いわよね。……いつ来るの?』
『ら、来年には! とりあえずその前に、次は日本でお会いしましょう。伊勢丹の、サロン・デュ・ショコラ(SDC)で。』
その後、来年日本のSDCにて披露予定のコンフィチュールの話しや、これから本番を迎えるクリスマスシーズンのお菓子の話しなどを聞かせてもらったけれど、僕が最も気になるのは…先ほどオーブンに入れられたパイ生地から、良い匂いが溢れ始めたことなんだ。
甘いもの好きにとって、こんなに楽しいことはないよね♪


食べ物の話しばかりですが、メゾンフェルベール編はもう少し続きます。
お菓子以外のフランス日記や、リアルタイムの情報は、Twitterにてご覧ください。

20101111

coeur de femme


L

e vent fait bruire les feuilles.
女心と秋の空なんて言うけれど、解せないとするならそれは、君にロマンスが足りないからだよ。あと、青空のように寛大な心もね。
秋空の下、公園のベンチで僕は、時を流れる微風に耳を澄ませ、木の葉の奏でる音楽を聴いていた。旋風のワルツの中に現れた女性に見とれていたのは、秋の幻だけが理由じゃないと思うんだ。

Religieuse(Café & Chocolat)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



カフェ&ショコラのルリジューズ。メゾン・フェルベールでは、エクレール・ショコラと同じく週末限定。
日本では稀にしか見ないので、数年前、名古屋のアズュールにお願いして作ってもらったんだよね。でもフランスでは定番みたいで、街角のカフェでも普通に並んでいたから、ごくありふれた定番(古典)菓子なんだと思うんだ。
ルリジューズは修道女をイメージしたお菓子なんだけど、僕にはもっと華やかな…例えばほら、公爵夫人のような、そんな印象を感じたんだ。ノスタルジィや素朴さや慎み深さよりも、凛とした何か。それから仄かな可憐。可愛さと美味しさ以外のものが、確かに溢れていた。
僕は独り、公園で、古い石畳に降り積もる落葉の絨毯をぼんやりと眺めながら、木漏れ日の中でホッと、甘い溜息をついてみた。
見上げた青空は、とても高く美しく、その先に天国があるんじゃないかと思えたよ。

20101110

雪は白い翼を広げて


T

ombe la neige poudreuse.
優しい調べが、音も無く降り積もる。白い兎は瞳を閉じて、長い長い夢を見る。花咲く春に、愛しい君と巡り会うまで、甘い夢を見続けるんだ。

Tarte framboise(タルトフランボワーズ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



アリスが、タルトに山のようにフランボワーズを飾り付けている横で、僕は箱にそっと手を伸ばし、新鮮なフランボワーズをつまみ食いしていた。やはり、採れたてフレッシュなフランボワーズは、堪らなく美味しい。
僕のつまみ食いの回数が、あまりにも多かったからか、クリスティーヌは笑いながら1パック丸ごと手渡してくれて、こう言った。
『美味しいでしょう?好きなだけ食べていいのよ。』
Merci Madame !
そして今日も僕は、爪と唇を赤く染めるほどにフランボワーズを食べるんだ♪

紅の一閃


R

ouge, Elle est farder les rouge à lèvres du la nuit.
闇に艶を与える彼女の真紅。香るのは、恋心以上の炎であり、溢れるのは、純粋なるイノセンス。無邪気なほどに、甘い誘いを。

Chocolat frambois(ショコラ・フランボワーズ)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



とあるパーティーにて、女性に、君の唇の色は綺麗だと話していたら、近くにいた男性が、
『なんだ?君は彼女に気があるのかい?』
なんて冷やかすので、微笑みながら、
『ムッシュー、貴方の唇の色も、美しいと思いますよ。』
そう答えた。
『よしてくれ!オレにその気は無いぜ!(笑)』
実際のところ、皆さん唇の発色が良いように見えたのは、お酒のせいかもしれないけどさ。
…えっと、何の話だったっけ?
そうそう、フランボワーズだ。フランスに来て最も驚いたのが、フランボワーズの美味しさ。皿盛りで出されると、指先と、口の周りが真っ赤になるほど食べてたんだ。
そんな美味しいフランボワーズがあるから、フランス人の唇は美しいのかと考えたけれど、これはやっぱり幻想だろうか?

20101109

黄昏の散歩道


B

onne odeur qui vient on ne sait d'où.
それは太陽の残り香。残照に香る想い出だった。降り積もる枯れ葉の散歩道。忍び寄る夜の静けさの中、僕は家路を急いだ。暖かい暖炉の火と、君の笑顔を求めて。

Crépuscule(クレピュスキュル)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール


ふと見ると、名前の書かれていないケーキが並んでいて、ジュリとカレンに名前を尋ねても、肩をすくめられるだけ。そこでクリスティーヌに尋ねると、
『古くからあるケーキだけど、特に名前は無いのよ。…そうだ、あなたが名前を付けてみて。』
そう言われたので、ゆっくりと味わいながら考えてみた。
アーモンドスライスの食感や、ショコラとプラリネの風味から、イヴ・モンタンの“Les feuilles mortes”が思い浮かんだけど、ちょっとしっくり来ない。次に、砕いたキャラメルから、太陽の欠片を想像したけれど、これも違う。…うーん、ネーミングってものは、意外と難しい。
考えているうちに全て食べてしまい、それでも甘い余韻の中で悩んでいると、ふと懐かしい香りがした。気付けばもう夕方で、太陽は西の空を赤く染めていた。
『…あぁ、そうか!』
良い名前を思いついたので、クリスティーヌに伝える前に、僕は2つめのケーキに手を伸ばした。

20101108

さよならのキスを


S

es cheveux se balançait dans le vent.
長い夏は終り、秋は足早に通り過ぎようとしていた。彼女と会える時間は日ごとに短くなり、強くなっていく風の寒さに、僕は少し哀愁を感じていた。
彼女は、長く伸びた黄金の髪を夕日のリボンで結び、西の地平線へと駆けてゆく。静かに舞う秋風に、そっと僕はキスをした。

Tarte poire(タルト・ポワール)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



樹々の葉は、色を変えて染まりゆき、大地の香りは芳醇で深く、風はゆっくりとワルツを踊っていた。光りには夏の残り香を感じるけれど、季節はもうすっかりと秋に変わっており、遠く冬の気配すら感じる。
梨を太陽に、太陽を女神に例えたけれど、ヨーロッパでは男神なんだよなと思いつつ、このタルトを作る時に、どうマロンクリームを乗せようかしらと苦心していた、クロティルドの横顔を思い出した。
その瞬間に、マロンクリームは亜麻色の髪に見えたので、こんな詩が生まれたって訳さ。

20101107

真夜中のアリス


A

lice in Wonderland.
闇に浮かぶ花、夜に木霊する笑い声、星の瞬くような囁きと、ゴースト達の噂話。仮面の下、深夜のパーティーは華やかで、夜遊びの太陽も、お忍びの満月も踊り明かしていた。
そっと喧噪から離れ、秘密の小部屋に潜り込んだつもりが、ここも新たなパーティーの準備中。…迷宮だなこれは。パーティーの迷宮。
ねぇ、アリス、僕たちはどこでお茶会をしようか?

Macaron(Rose & Framboise)


アルザス
MAISON FERBER メゾン・フェルベール



メゾンフェルベールの店頭に並ぶのは、素朴で優しいお菓子ばかりなんだけど、パーティー(それも深夜)ともなれば、こんな艶やかなものも。他にも2つのマカロンタワーがあって、踊り疲れた紳士淑女の皆様が、マカロン片手に、話しに花を咲かせておりました。
でも退屈な僕は外に出て、新鮮な空気を吸おうと夜空を見上げると、零れ落ちそうなほど沢山の星に溢れた空が広がっていた。知っているはずの星座が、探せないほどの星々の輝き!
あぁ、大聖堂の中のパーティーも、真夜中の星空も、僕にとっては迷宮だよ。