20110403

夢の雫


れた涙の一雫が、心に静かな波紋を描いては消えた。悲しみとか、切なさとか、それらとは違う想い。例えるならば、桜咲く風景を眺めた時の、歌人の心境に近いのかも知れない。
風に揺れては微笑んで、青空に、夜闇に、はらはらと花弁を散らしていく。落ちた花びらに僕たちは、想いを重ねていく。その想いにまた、桜は花びらを贈るのだろう。

フレジェ(Fraisier)





3月22日、また1つ、僕は居場所を失った。好きな店が無くなるのは寂しいもので、残念に思う。いつまでも在ると思い込んでいた幻想が、突然終りを告げる。正直に言えば、やはり悲しみを感じてはいるんだ。
でも、この店のオーナーであった小林君は、見ていて飽きない。何か不思議と期待してしまうし、興味が尽きない。彼が作るお菓子と同じく、僕の想像なんてものを、軽く飛び越えていくんだ。だからきっと、また何処かで会うことになるのだろう。その場所にお菓子があって、僕が其処へ通えることを、最後の一皿に願った。
ちなみにこのフレジェの形、僕にとっては、涙よりも花びらのように見えていたんだ。桜が咲くよりも早くに散ってしまったけれど、その皿の上に、余韻の中に、僕は桜の花を夢見ていたよ。

それではまた。ごきげんよう。