紡
いだ季節の彩りを、光に揺れる夢に織る。風に棚引く詩編が香り、艶やかな原風景を匂わせてくれる。この藤色の衣を纏い、僕は旅に出る。溶けていく白日夢の先にある、幻想の国を目指して。
今月の小田巻き金団(きんとん)の銘は、“ふじ”でした。苧環(=糸巻き)から送られる糸で織られるのは、色彩溢れる春の風景なのです。
風に咲く藤の花。空に匂う浪はたおやかに揺れ、僕たちは見過ごしていた季節に立ち止まる。その一瞬に永遠を感じさせるものこそが、和菓子の魅力ではないでしょうか。季節と銘により、存在しうる和菓子。ちなみに、“銘”を英語に訳すと、Poetic nameと呼ぶそうです。
ふじ
京都
聚洸 じゅこう