20110121

秘密の果実


く耳元で囁いたのは、天使だったのか、それとも悪魔だったのか。僕らの御先祖様は、この果実によって王冠を失ったけれど、代わりに翼を手に入れたんだ。心と未来にね。
今、また僕の耳元で囁く者がいる。それは妖精なのかも知れないけれど、僕の答えは決まっているよ。
王でもなく、女王でもなく、僕たちは恋人として、甘い果実にキスをした。

ポメ(Pommé)


西宮市
pâtisserie au temple du goût オ・タンプル・デュ・グゥ
http://www.du-gout.com/



ポム(Pomme)ではなくポメ(Pommé)と名付けた理由を考えてみた。名詞と形容詞の違いでは無く、なぜポメと命名したのだろうかと。ただ単純に、小さく可愛い林檎のような形だからかも知れないけれど、もっと詩的で浪漫を感じられそうな理由が欲しくなるほどに、このお菓子は美味しく味わい深かったんだ。
…林檎のような…林檎に似た………そうか、林檎そのもので無く、林檎が意味するものだ。それは恋人たちの果実。どんなに禁じられても、手を出してしまうもの。甘美なる真実と幻想と黄金と約束。
僕たちは愛へ辿り着きたいが為に、恋へと手を伸ばす。その味が甘くても酸っぱくても苦くても、そんなの大した問題じゃないんだ。ただ僕たちは、愛を知りたいだけなんだ。

イメージの世界では、西洋の林檎は東洋の桃に当たるのかも知れないと閃いたけれど、そのまま僕は、深く甘い海へと溺れていった。