真
紅の口づけを、愛しき女神の微笑みに。季節は輝きを増し、風に咲いた花は青空を埋めていった。もうすぐ、美しき太陽がやって来る。喜び溢れる女王の季節が。
華やかな足音は、すぐそこまで近付いているのだけれど、春の魔法からまだ醒めない者達には聞こえない。
もっと花を咲かさせるの。だからまだ秘密だよ。
彼女は唇に人差し指を当て、悪戯っぽく囁いた。その指先から、小さな天使が飛立った。
日本のショートケーキと、フランスのフレジェ。その違いは幾つもあるのだけれど、このケーキを見ていてふと気が付いた。日本は春を想い、フランスは初夏を想っているのだと。
そう考えた瞬間に、いままで苺に見えていたドット柄が、夏へ飛立つテントウムシに見えたんだ。
フレジェ
東京
LA VIEILLE FRANCE ラ・ヴィエイユ・フランス