20110307

甘いものはお好きですか? #02


から花弁がこぼれた。僕には君が、春の女神に思えた。
生まれた夢は、白い砂漠で見上げた幻想的な昼間の月のように儚げで、異国の都で見つけた、紅く輝く曰く付きの宝石のように魅力的だった。
そして僕はもう一度、君にキスをした。

Ispahan( Gâteau au Framboise et Litchee à la Rose)


東京
PIERRE HERMÉ PARIS ピエール・エルメ
http://www.pierreherme.co.jp/



サダハルアオキにて、ピエールエルメのイスパハンを教えていただいた。幸い、宿泊予定のホテルは赤坂だったので、ニューオータニは歩いても行ける距離だった。友人のライブは夜だったから、銀座から地下鉄に乗って赤坂見附まで行き、SATSUKIを目指した。
なんだか不思議な気分だったけれど、運ばれてきたイスパハンを目にした瞬間、恋に落ちたと思う。そしてヒトクチで、僕はまた別世界に羽ばたいていた。
ライチは食べたことあったけれど、実はフランボワーズは初めてで、何よりも薔薇の花びらを食べられることが驚きだった。僕はマカロンの不思議な食感と、魅惑的な香りと味の陶酔感に暫し放心し、何か夢か幻を見ていたような感覚に包まれた。
後で調べると、イスパハンとは都市の名前で、アダムがエデンの園を追放された後に住んだ都と言う伝説も残っているそうだ。
だからだろうか、甘美なる喜びの陰に、胸を締め付けられるような淡い切なさと儚さと、少しばかりの罪悪感のようなものを感じていた。薔薇の花弁が落とす影には、見えない茨があるのだろう。それが僕の恋心に絡みついてくる。なんとも美しくも罪深い美味しさだった。