20110323

À la fleur exquise


の綻ぶ春の日に、瞼に浮かぶ夢の雲。静かな瞬きに咲く花が、君の唇から零れた吐息に揺れていた。目を開けて、その余韻の中に佇み僕は、束の間の夢の中でそっと、指先に花の咲く君の手をとった。
春よ、愛しい春よ。

本日のケーキ(Rouleau à la crème et fraise)


京都
Pâtisserie Exquise エクスキーズ


振り返ってみて、京都で好きな3店と、そこの大好きなお菓子について書こうかと考えた。でも、僕が京都へ引越す理由になった3品は、今はもう無いんだ。オ・グルニエ・ドールのクレーム・オ・リは姿を消したし、シトロンのシュー・ア・ラ・クレーム・シトロンは姿を変えてしまった。それらを食べる…いや、会いたいがために京都へと通った品々は、今はもう無いんだ。もちろん、姿が変わっても愛しているけれど、あの時、僕の人生を変えてくれた京都のお菓子は、もう無くなってしまった。
『いや、縁遠くなってしまったけれど、あの店なら…』
そう思って訪ねた店のショウケースにも、やはりあのお菓子は並んでいなかった。でも、それで良いと思うんだよね。京都らしくもあるしさ。

時は流れ、形は変容し、記憶は淡く滲んでいく。でも、その姿を失った時に、ふと匂うものを僕たちは、想い出と呼んで慈しむのだろう。
僕が愛したものは、姿でも味覚でも無く、そのほんのりと香る匂いだった。だから今でも僕は、この街に住んでいるんだ。
愛しているよ。今でも変わらずに僕は。