冬
の終りと、春の始まりの束の間に、夢見るように淡く、眠る萌黄の幻が、粉雪の下で歌っていた。あとすこし。もうすこし。
下萌えに、芽吹く春を、待ちわびて。
さわらび(Au début de fougère)
京都
嘯月 しょうげつ
氷餅が煌めく道明寺の中には、薄萌えの漉し餡。つい先日までは、薄紅色の餡の寒梅が並んでいたっけ。いまだに雪の舞う日もあるけれど、もう真冬のような厳しさは無く、風さえ無ければ春を想う陽気が感じられるこの時期。そんな儚い一瞬を表した和菓子だった。
あとすこしだけ。
夢と期待に萌える春を、待ちわびるようにして。