光
の中、モレ・シュル・ロワンの河辺を散歩した。風は煌めいて、瑞々しい青空に、淡く透明な波紋を咲かせていった。見上げると、詩人が描いた羊と花々が駆け抜けて行く。ふと、足元に、誰かが忘れていった帽子が落ちていた。春風の女神か、太陽の乙女なのか、そんな帽子だった。
レモンと木苺のシャルロット(Charlotte au citron et aux framboises)
京都
LOTUS洋菓子店 ロトス
この店を、このお菓子を、僕は何に例えようかと迷い、棚の画集を眺めていた。印象派には間違い無いのだけれど、何かぼんやりとしていて、それでいて確かな光りのような物を感じていた。日常にある、気付かれざる風景のような美しさだ。
幾つかの絵画を眺めているうちに、1人の画家に辿り着いた。アルフレッド・シスレー(Alfred Sisley)だ。彼は、風景の抒情詩人と呼ばれていた。
甘く輝くシャルロットを窓辺に置くと、ゆっくりと景色が滲んでいく。日常は、淡く微睡みへと解けていった。
新しい一皿にまた、詩と夢が浮かぶ。波紋と空想を重ねながら、一輪のロータスが花開いた。